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価格上昇し続け、家庭を苦しめる原油高騰 その裏側を分析!

2021年11月04日

原油生産を取り巻く「脱炭素」の潮流とは

ここまでは比較的短期の視点で原油価格を捉えてきたが、中長期で見た場合、やはり「脱炭素」の視点、これは欠かせない。

そもそも、原油は化石燃料の一つであり、脱炭素の文脈で見れば、将来的にエネルギー源としての依存度を下げていく必要がある燃料の一つだ。中東をはじめ各国の命運がかかっている。だが、そんな国も腹をくくったのか、最近ではサウジアラビアやUAE、バーレーンも将来的なカーボンニュートラルを宣言した。

脱炭素がどれだけ本物になったかが分かる事例であり、これらの国が転換するなら早いうちだと思い、次の投資に踏み出したということも顕著に見えてくる。

そのような中、まずは「シェールオイル」に対して既に影響が出始めている。先述の通り、通常、原油価格が上昇すれば、ここぞとばかりにシェールオイルの生産が増加するのが通例だった。しかし実はいま、その増産が遅れている。

米国のシェールオイルのリグ稼働数は、コロナを経て多くが停止に追い込まれ、その後、回復傾向にあるものの、ここにきてもコロナ前の水準まではまったく戻っていない。

なぜか。

その背景には大きく二つの要因が考えられる。

第一に、バイデン政権によって加速しているグリーン・エネルギー政策への転換だ。実際、バイデン大統領は温室効果ガス排出削減を目指す大統領令への署名を通じ、政府保有地における新規のシェールオイル開発を規制した。

これは政府が予見性を持たせてシグナルを送ったという話である。

国のリーダーシップというのはまさにこういうことだろう。これにより、投資はシェ―ルには向かわずに、再生可能エネルギーの方にいく格好に、アメリカはなる。

ESG投資が入ってこないことも考えれば、ある種、当然の選択ともいえる。

そして第二に、シェールオイル生産企業が抱える問題がる。元々、開発コストの高いシェールオイルを扱う石油会社は、その多くが、キャッシュフローがマイナスに陥っており、コロナショックでさらにその財務状況は悪化が進んでいるものとされる。


出典:石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)

加えて、昨今のESG投資の高まりにより、将来の石油関連の資金調達は先細っており、すぐさま増産に踏み切ることが難しい状態にある。ESG投資の側から見れば、将来的に需要が減るのが見えている物に対してお金を突っ込むインセンティブはないので、お金が入って来ない。シェールオイル各社も投資が入ってこないのであれば、自社でリスクをとってまでやる、という選択は当然減る。

さらには、ESG投資の文脈では、近年、物言う株主の発言力が増しており、脱炭素に沿わない企業活動を行うハードルは益々高まっている。実際、米石油メジャーのエクソンモービルは、今年5月の株主総会で、アクティビストの提案によって脱炭素派の取締役3人の選任を余儀なくされた。

こうした形で、価格だけを見れば、「ここが儲け所!」というチャンスなのだが、アメリカのシェールの戻りが遅くなっており、ここは、OPECの意思決定にも影響を及ぼしてくるだろう。

しかし、実はこの大きな脱炭素の流れをプラスに捉えている向きも産油国側にはある。そこで、産油国が脱炭素をどうやってチャンスにしようとしているか、解説したい。

脱炭素をチャンスにする産油国の思惑と、日本への長期的な影響・・・次ページ

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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