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厄介者の二酸化炭素からメタンを製造 都市ガスの脱炭素に向け進むメタネーション でも盛り上がるのは日本だけ?!

2022年02月01日

海外サプライチェーンの構築に向けた日本の取り組みとは

メタネーションをめぐっては、欧州などで一部実用化されている。

ドイツの大手自動車メーカー、アウディは現時点で世界最大級となる315Nm3/hのメタネーションプラントを建設。隣接するバイオガス工場が排出するCO2と風力発電からつくった水素から合成メタンを製造し、都市ガスに使うほか、天然ガス自動車の燃料として使用している。

この世界最大級のプラントを建設したETOGAS社は、2016年に日立造船によって買収されており、日本企業による海外展開が進みつつある。安価で大量の合成メタンを供給するためには、再エネコストが安い海外でメタネーションをおこない、日本への輸入が欠かせない。特に大量輸送については、日本が世界に築いたLNG(液化天然ガス)の大量供給網が活用できると期待感が大きい

その日立造船は、副生水素やCO2調達が容易な中国陝西省化学工業団地におけるメタネーション事業を検討中だ。500Nm3/h級の実証を予定する。

海外サプライチェーンの構築を目指す東京ガスは三菱商事と連携し、北米、豪州などで製造した合成メタンの日本導入に向け、事業可能性調査に取り組む。また東京ガスはマレーシアにおいても、住友商事および国営石油会社であるペトロナスと共同でグリーン水素とCO2のメタネーションによるカーボンニュートラルメタンの製造、輸送に向けた事業可能性調査を実施することで合意済みだ。

大阪ガスも豪州におけるメタネーション事業に向けて、実験設備の建設やCO2、水素の調達、経済性評価などを2022年中に実施する。

JERAは北米で再エネ由来水素と火力発電所などから回収したCO2から合成メタンを製造・供給する事業可能性調査を実施している。関西電力はLNG基地がある堺エリアをハブとしたサプライチェーンの構築を目指している。

メタネーションをめぐる取り組み事例

INPEX大阪ガスと組み、長岡鉱場(新潟県)内で回収したCO2から合成メタンを製造する計画。2020年代後半に1万Nm3/h、2030年代には6万Nm3/hに大規模化する。
日立造船中国楡林経済技術開発区にて副生ガス(H2、CO2)から合成メタンを製造し導管注入するFS調査を実施。500Nm3/h級の実証を経て、2030年代には数万Nm3/hまで拡大。
IHIそうまIHIグリーンエネルギーセンター(福島県)にて、再エネからのメタネーション全プロセスを実証中。数万Nm3/h級へのスケールアップ目指す。
デンソー安城工場(愛知県)でメタネーションを活用した工場内CO2循環の実証中。2030年の事業化を目指す。
東京ガス横浜市の研究開発拠点においてサバティエの実証や革新技術の研究開発を実施中。12.5Nm3/hのプラント規模を数百〜数万Nm3/hまで拡大予定。
大阪ガス大阪市のカーボンニュートラルリサーチハブにて、次世代技術である「SOECメタネーション」の研究開発を実施中。豪州産合成メタンの日本輸入にも取り組む。
東京ガス・
住友商事
ペトロナス/東京ガス/住友商事がマレーシアで製造した合成メタンを日本に導入するFS調査の開始を合意。
東京ガス・
三菱商事
東京ガス/三菱商事が北米、豪州等で製造した合成メタンを日本に導入するFS調査の開始を合意。
JERA米国で再エネ由来水素と火力発電所等から回収したCO2より合成メタンを製造し供給を行うFS調査を実施(2021年度までNEDO事業)。

世界のLNG需要は2040年までに倍増する見込みだ。特に中国、インドなどのアジア需要は爆発的に伸びる。仮に東南アジアの1割の天然ガス需要をメタネーションに転換できれば、約5,000億円規模の投資が見込まれるという。経済産業省などは400Nm3/hスケールでの技術開発に取り組む日本企業が世界のメタネーションを主導し、アジアの脱炭素需要を取り込む、といった絵を描いている。

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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