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「最先端のEV充電技術」が集結した国際シンポジウム“東京炭素会議2019”

「最先端のEV充電技術」が集結した国際シンポジウム“東京炭素会議2019”

2019/12/16

2019年11月12日、東京大学駒場キャンパス内ホールで「東京炭素会議2019 -最先端のEV充電技術」が開催された。低炭素社会の実現、特にEVの充電技術に関してナレッジの共有が目的だ。東京大学の学生たちが主体となり、イタリア駐日大使、各国外交官や企業を招聘して行われた本会議は各国の技術動向をとらえるのに最適な機会を提供した。日本サスティナブル・エナジー株式会社の大野嘉久氏によるレポートをお届けする。

急速に高まるEVシェア。最新の技術動向をとらえる会議が開催。

欧米では新車販売台数における電気自動車(EV)のシェアは急速に高まっており、ノルウェーでは2019年3月に新車販売でEVのシェアが5割を超えた。しかし一方で「燃料費はガソリンより高いのか?」「リチウムイオン電池は従来の電池とどう違うのか?」など、充電や電池にまつわる疑問を持っている人も少なくないのが現状である。

そこで、EVオーナー向けの電力販売や太陽光発電関連事業を手掛ける新電力Looop社の協賛により、最新の充電技術を世界各国の駐日大使などが解説する国際シンポジウム「東京炭素会議2019」が開催された。

国内外を代表する企業が自社の技術を紹介するとともに、積極的な討論が展開された。なお、このシンポジウムは外交官も参加しているため、講演や質疑応答は全て英語で行われた。

EVはエネルギー資産

まずは駐日イタリア大使館科学技術担当官のエンリコ・トラヴェルサ教授による基調講演「イタリアの再生可能エネルギー政策」から始まった。

エンリコ・トラヴェルサ 駐日イタリア大使館科学技術担当官

エンリコ・トラヴェルサ氏
「このところ温室効果ガスの排出量が顕著に増加しているのは国際航空と国際貨物輸送であり、世界の飛行機から排出されるCO2はイタリアやフランスの2倍以上にのぼる。

一方でイタリアは国家を上げて低炭素経済を推進しており、水力発電や太陽光発電、そして風力発電の開発を進めた結果、国民一人あたりのCO2排出量は米国やロシア、さらには日本よりも大幅に低いレベルにまで抑えることに成功した。EUの28カ国の平均排出量よりも低く抑えられており、イタリア政府は今後も低炭素技術の開発に対して重点的に予算を確保してゆく方針である」。

続いて登壇したのはイタリア電力大手エネル(Enel S.p.A.)の日本法人であり、デマンド・レスポンス(DR)、バーチャルパワープラント(VPP)事業を拡大させているエネルエックス・ジャパンの小林将大渉外部シニアマネージャー。氏による講演タイトルは「Enel Xが実現した電気自動車と電力系統の融合」。

小林将大 エネルエックス・ジャパン 渉外部シニアマネージャー

小林将大氏
「従来のガソリン車と違ってEVを所有していれば、自宅がエネルギー資産となる。具体的には電力の価格が安い時に買ってEVの電池に貯めておき、そして高いタイミングで売電すれば「クルマで稼ぐ」事も可能である。

加えて自宅に太陽光発電設備があれば、最も価格が高い時に売電することで採算を大幅に改善できるうえ、系統の安定化にも役立てられ、再生可能エネルギーの利用増にも貢献できる。

Enel X社の米国法人「eMotorWerks」が手掛けているEV充電システム「JuiceNet」は米国のアマゾンで最も売れているEV充電設備であり、6,000基のEV充電設備が合計30MW相当のVPPとして機能しているが、今後はその知見を活かして日本での事業を拡げてゆく」。

より安全なリチウムイオンを世界に

講演の後半は、東芝電池事業部の石塚芳樹技師長の「マイルドハイブリッド車への適用が進む東芝のリチウムイオン二次電池“SCiBTM”」からスタートした。

石塚芳樹 東芝電池事業部

石塚芳樹氏
「リチウムイオン電池を開発した実績に対して、2019年のノーベル化学賞を受賞した吉野彰旭化成名誉フェローら日米の科学者3人の役割を紹介。
吉野博士がマイナス極に用いたカーボン材料に対して、東芝は酸化物系材料(チタン酸リチウム)を使うことで安全性を飛躍的に高めた。それと同時に、20,000回以上を超える長いサイクル寿命や急速充電性能などを実現させた。この電池技術は日産自動車や三菱自動車などに採用されている。

最後の登壇となったのは、革新的なビジネスモデルを次々と展開し、日本の電力業界に新風を吹き込んでいるLooopの小嶋祐輔取締役 電力事業本部本部長による「データ分析とEVなどのデバイスを活用した住宅のエネルギーマネジメント」だ」。

小嶋祐輔 Looop取締役 電力事業本部本部長

小嶋祐輔氏
「社名「Looop」の3つの“o”はそれぞれ太陽光発電、水力発電そして風力発電を表している。Looop社が再生可能エネルギーに強くコミットしていることの表れである。社のミッションとして「エネルギーがフリーな世界へ」を掲げている。

EVについては自宅で充電するユーザー向けの割引プランの実現に向けた実証試験を2019年3月に日産自動車との協業で開始。専用の電力量計を設置したうえで利用者の利用パターン変化を解析することで、EVの経済性を大きく高めることを目指している」。

会議をリードする若い力

今回の東京炭素会議では、若い世代の活躍もあった。

パネル・ディスカッションのモデレーターを務めた東京大学教養学部英語コースPEAK(Programs in English at Komaba)1年生のクリス・クレイトンは、なんと弱冠19歳! 2か月前に高校を卒業したばかりにもかかわらず、経験豊富なビジネスマンに劣らない活躍を見せて場を大きく盛り上げてくれた。

クリス・クレイトン氏

イタリア大使館のトラヴェルサ教授には「中国などの新興国がこれから大きな成長を遂げるが、高い再生可能エネルギー比率を実現したイタリアから見て、これらの国々も再生可能エネルギーの導入を経済成長につなげられるだろうか? それとも、エネルギー転換は経済成長と切り離して進められるだろうか?」という質問を投げかけた。それについてトラヴェルサ教授は「従来、国々は保有していたエネルギー源を使って経済活動してきた。だから中国も石炭を発電燃料に使用してきたが、環境面から石炭の利用は人体への悪影響が多いため、いま中国は新しいエネルギー技術の開発を進めている。これはパラダイムシフトであり、それらが新しい事業を生んで持続的な経済成長に結実するであろう」という示唆に富む回答を返した。

ここで“再生可能エネルギーの経済性”というテーマに対して、エネルエックス・ジャパンの小林氏が「再生可能エネルギーは不安定であるため、ただ規模を拡大すればよいということではなく、系統の安定化も伴わないと利用できないのが現状。その点、世界最大の再生可能エネルギー開発事業者であるエネル・グループは電力貯蔵設備やEVなどの技術開発や事業化も並行して進めており、自然エネルギーの経済性を高めている」として、実績を紹介した。

クレイトン氏は続けて、従来にない様々なエネルギー・ビジネスをもたらしているLooopの小嶋氏に「再生可能エネルギーの経済性に関して、日本政府と考え方が対立したことはないか?」と切り込む。これに対し小嶋氏は「太陽光発電や風力発電の導入増という基本的な方向性は、政府と我々では共通している。そこに意識の乖離はなく、事業化はあくまで我々の問題」と、電力業界のイノベーターらしく回答した。

開場からは「EVの増加は産油国にとってどのようなインパクトを与えるか?」という質問があったが、これに対してトラヴェルサ教授は「EVはエネルギー産業における道具の1つに過ぎないので、それほど大きな変化は起こらないだろう。むしろEVを電力貯蔵設備として利用することで石油の利用も増える可能性もあり、対立する存在と考えることはない」とコメントした。また、小嶋氏は「EVの登場は単なる電化製品にとどまらず、エネルギー資産が1つ増えたことになる」と、開発事業者の視点から解説を加えた。

リア・ハン氏

当イベントの総合プロデュースと司会は、認定NPO法人 ファーストアクセスのチーフ・デジタル・オフィサーを務めるリア・ハン。彼女も東京大学教養学部英語コースPEAK4年生である。こうした活躍もあって、東京炭素会議は、世代を超えたイベントとして成功のうちに幕を閉じた。彼らを含め、スタッフには感謝したい。

大野嘉久
大野嘉久

経済産業省、NEDO、総合電機メーカー、石油化学品メーカーなどを経て国連・世界銀行のエネルギー組織GVEPの日本代表となったのち、日本サスティナブル・エナジー株式会社 代表取締役、認定NPO法人 ファーストアクセス( http://www.hydro-net.org/ )理事長、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所元客員研究員。東大院卒。

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