東北電力 風力嫌い会社から風力が主力の会社へ、震災を超えて脱炭素 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(25) | EnergyShift

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東北電力 風力嫌い会社から風力が主力の会社へ、震災を超えて脱炭素 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(25)

東北電力 風力嫌い会社から風力が主力の会社へ、震災を超えて脱炭素 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(25)

「脱炭素企業分析」シリーズ、第25回は、地域との絆を大切にしながら、再エネによるカーボンニュートラルな電力会社を視野に入れる東北電力を紹介する。かつては、風力発電は見るのも嫌だ、と社員が語ることもあった東北電力だが、今では主力電源化を見据えている。

エナシフTV「脱炭素企業分析」シリーズ

ピーク時の半分になった株価と業績

直近5年の東北電力の株価は、2017年をピークに下降を続け、現在はピーク時の半分となり、東日本大震災後の10年前とほぼ同じ水準となっている。他の電力会社と同様に販売電力量の減少が株価に影響している。 

2020年度の売上高は2兆2,868億円で、経常利益が675億円の増収減益となっている。2019年度は売上高が2兆2,463億円で、経常利益が999億円だった。

販売電力量はコロナ禍の影響で減少しているのだが、間接オークションやFIT交付金によって、見かけの上では売上を押し上げている。その結果は、利益の減少に反映されていることになる。

2021年度の売上高は大幅な減少となる1兆7,700億円を見込んでいるのだが、この予想は約4,000億円のFIT交付金を計上しない売上高予想となっており、2020年度や2019年度の業績予想と単純に比較はできない。実質的には横ばいということになりそうだ。

販売電力量の推移は以下の図の通り。卸売が増加し、直接の販売電力量は減少している。特に電力の販売電力量の減少が顕著だが、これは新電力や他の電力会社に大口の顧客をとられたということだろう。

とはいえ、東北電力としては、電力販売では苦戦しながらも、企業として成長を目指していく姿勢をとっている。そこで描かれる成長への道筋は、売電収入の拡大ではなく、顧客の豊かさの最大化を目指す、といった方針による。電力供給事業を基盤事業としながらも、成長事業としてはスマート社会実現事業を中心にすえて、ビジネスモデルの転換をはかっていくということだ。

顧客の電気使用量が増加すれば増加するほど企業として成長する、という観点ではなく、顧客の豊かさのために東北電力がいかに貢献できるか、幅広いサービスを提供できるか、といったことに焦点を定めており、この点は中長期ビジョンでも示されている。

東北電力の中長期ビジョン

東北電力の供給区域は、東北6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)と新潟県だ。東北電力が持つ強みは供給区域との絆であり、供給区域への事細かな対応こそが東北電力の事業の柱となっている。

そもそも、地域に根付いた企業として、供給区域の発展無しに収入の増加は無い。そのように考えている東北電力としては、地域との絆をより一層深めて、地域とともに発展することが中長期ビジョンの基盤となってくる。その上で、自分たちが電力のプロフェッショナルとして協業することに東北電力の強さがあるということだ。実際に、東北地方における東北電力の信頼感は非常に強いものがある。

こうした中、東北電力が次に手掛けているものに、再エネ事業がある。再エネは自社で200万kWを開発することが目標となっている。とりわけ力を入れているのが風力発電だ。

下図の通り、東北電力の風力発電は日本海側が非常に多い。これは、日本海側は良質な風が吹くため、洋上風力に適していることによる。東北電力以外にも、多くの会社が洋上風力の建設を試みているエリアとなっている。むしろ、こうした地域に東北電力自身が参画しているともいえるくらいだ。

そうした中にあって、東北電力としては、自分たちが東北地方における洋上風力を牽引していきたいという考えもあるだろう。また、東北電力エリアは地熱発電の開発も進められており、非常に再エネに恵まれた地域であるともいえる。

東北電力の風力発電の歴史

東北電力では、1991年にNEDOとの実証で青森県に竜飛ウインドパークを建設している。設備内容は三菱重工業製で275kW×5基、300kW×5基。後に、500kWが1基追加され、合計11基となるのだが、これは当時としては国内最大の風力発電所だった。今では小さく感じる300kWの出力も、当時では標準サイズだった。三菱重工業は当時、米国でも300kWクラスの風車を大量に設置し、再エネ拡大を行っていた。

一方、1992年頃から電力各社は余剰電力購入メニューを導入した。これは、増加してきた住宅用太陽光発電に対し、余剰電力を売電料金メニューと同じ価格で買い取るというものだ。電力会社のボランタリーな取組みではあるが、住宅用太陽光発電の普及には一定の役割を果たしたといえる。

問題となったのは、この制度を活用した風力発電事業の登場だ。1997年に設立された風力発電事業者のエコパワーは、風力発電の電気を余剰電力として電力会社に買い取ってもらうことによる発電事業を展開した。その舞台となったのが、東北電力の供給区域である。

東北電力は実質的には余剰ではない電気を買わされることになり、事業者間のトラブルに発展した。結果として、東北電力は風力発電を対象とした余剰電力購入メニューを廃止し、新たに風力発電買電メニューを作成して風力発電の電気を購入するのだが、それでも東北電力の風力発電への嫌悪感は払拭できないままだった。

最も、東北電力はその後も風力発電事業には取り組んでおり、2001年には、600kW×24基の能代風力発電所を建設している。この発電所は、東京電力を中心とした日本自然エネルギー(株)の設立を受け、グリーン電力証書用の風力発電として建設されたものとなる。ソニーなど、グリーン電力の使用を希望する会社の要望に応えるための発電所だった。

その後、2003年にRPS制度が導入され、東北地域でも風力発電の建設は進むことになる。そして、2021年4月に東北電力リニューアブルエナジー・サービスを設立する。この会社は再エネを開発するだけではなく、自社以外の設備のメンテナンスも行う。

こうした東北電力の取組みからわかるのは、かつて風力発電に対する嫌悪感を持っていたとしても、現在は再エネの重要性を理解しており、再エネを増加、拡大させて脱炭素を推進しない限り、成長はないと認識しているということだ。

カーボンニュートラルへの取組みは

カーボンニュートラルに向けた東北電力のロードマップにおいては、東北電力としては保有する原子力は最大限活用するが、再エネや火力発電の脱炭素化を推進させつつ、電化とスマート社会の実現とによってカーボンニュートラルを実現していくことになっている。

では、足元の温室効果ガス削減はどうなっているのか。

上のグラフを見ていくと、CO2排出は順調に減っていることがわかる。原発が未稼働の状態であっても、再エネの拡大や、LNG火力の適切な運用を通じた石炭火力の抑制によって、CO2を削減してきたということだ。 

東北電力の将来を考える上で、原子力はどのように位置づけられるのだろうか。

まず、宮城県にある女川原子力発電所の2号機だが、これは原子力規制委員会の検査も終了し、再稼働にむけては地元住民の同意を得ることと、防潮堤の工事の完了を待つだけとなっている。2022年度にも再稼働できるといわれている。とはいえ、出力80万kWしかない女川原発の2号機が、東北電力の収支に与える影響は、限られたものになるのではないだろうか。

一方、女川原子力3号機や、青森県にある東通原子力1号機の再稼働はまだ見通せていない。

注目される供給区域外への展開

東北電力の供給区域には、新電力だけではなく東京電力エナジーパートナーなど旧一般電気事業者(旧一電)も進出している。特に大口契約においては、新電力よりも旧一電他社の方が強力なライバルといっていいくらいだ。

とはいえ、東北電力も手をこまねいて見ているわけではなく、域外への展開を進めている。ここではそのうち2つの例を紹介したい。

1つはSYNERGIA POWERだ。この会社は東北電力と東京ガスの出資によって設立された会社だ。電力販売量も順調に増加している。設立の背景にあるものは、東京ガスが日立に建設したLNG基地からパイプラインを通じて北関東、栃木県などの工業団地への都市ガスの供給を開始したことだ。ガスの供給だけではなく電気も同時に供給した方が事業性は高い。

では、どこから電気を供給するかというときに北関東のすぐ上が供給区域である東北電力からの調達がわかりやすい。もちろん、地域間連系ということはある。それを理解した上で、東北電力と東京ガスはSYNERGIA POWERを設立し、北関東の顧客にガスと電気をセットで供給しているということだ。

もう1つの事例が東急パワーサプライだ。

東急パワーサプライは東急電鉄グループの電力会社だが、後に東北電力が増資に応じ、現在は33.3%の株式を所有している。この会社も販売電力量が順調に増加しており、東急沿線の住民などはこうした形で東急電鉄グループのサービスを受けながら、東北電力の電気を使用していることになる。

この他、東北電力の電気は他の区域でも直接購入することも可能で、「よりそう電気」というブランドで販売しているが、こちらの方はさほど拡大していない。

仙台市ガス局は買収できるか?

東北電力をめぐるトピックで注目されるのは、仙台市ガス局の買収だ。

一般的に、都市ガスは都市ガス会社が販売している。しかし、水道のように自治体がガス販売を担うこともある。仙台市をはじめいくつかの自治体では水道局のようにガス局もあるのだ。こうした公営事業者のうちでも、最大の事業者であるのが仙台市ガス局だ。

仙台市としては、10年前から民営化を進めてきたが、リーマンショックを受けて計画がとん挫したこともある。2021年にも仕切り直して入札を行ったが、これに対して東北電力は東京ガス、石油資源開発、LPガス会社のカメイなど、計4社の共同により応札したのだが、条件が折り合わず落札できていない。

また改めて入札がおこなわれることが予想されるが、東北電力がどのように対応していくのか、仮に落札できたとして、その上で仙台市内に限っていえば、ガス&パワーの会社としてどのような展開を見せるのか、こうした点は注目される。

東北電力の強みの1つが地域との強い絆 再エネ増大に活かせるか

東北電力の今後の注目点の1つである女川原子力2号機の再稼働は、今のところ2022年が予定されている。再稼働による効果は限定的なものだと思われるが、地元の同意が必要となる問題であるので注目したい。

再エネに関しては、まず東北電力のみで200万kWを目指して開発を進めていくという。とりわけ、将来の電源の主力の1つは洋上風力と考えており、案件に参画していかないといけないという認識は持っている。

東北電力の強みの一つが地域との強い絆だ。地域が持つ高い再エネのポテンシャルを活かすためには、地域の理解を得ることが必須となる。地域との絆があってこそ、持続可能な再エネが活きてくる。

東北電力の持つ絆を、今後どのように脱炭素の時代の中で活かしていくことができるかが、注目ポイントになるだろう。

(Text=MASA)

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798059020.html

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