東京都は9月17日の定例記者会見で岩谷産業、ENEOS、東京ガスなど5社と連携し、自然災害等による停電発生時に非常用電源として都交通局の燃料電池バス(FCV)を使う体制を整えたと発表した。それに伴い、水素ステーションの増設に対する助成制度を拡充した。FCVの普及により2050年にCO2の排出量を実質ゼロにする目標の達成を加速させようとしている。
水素と酸素の化学反応を利用して発電した電気で走る燃料電池バスは、外部給電器を使えば、静音で家電製品等へ給電することも可能だ。
外部給電器とは、EVやFCVまたは燃料電池バス等に接続することで、停電時にもクリーンで静かに家電製品等への給電が可能な装置のことである。外部給電器は、岩谷産業が運営するイワタニ水素ステーション東京葛西、ENEOSの東京大井水素ステーション、東京ガスの豊洲水素ステーションなど、都バスの営業所から近い水素ステーション計6ヶ所に設置。合計15器を配置し、避難所で停電した場合、燃料電池バスに給電器を積んで避難所に派遣して電力を供給する。
燃料電池バスは、満タンであれば1台で235kWhの給電能力を備え、避難所の消費電力の約4、5日分に相当する。避難者の携帯電話の充電や避難所内の扇風機や照明の電源に使うことができ、自治体からの要請で出動する。多様な使い道を示すことで民間事業者の燃料電池バス導入につなげる狙いだという。
小池百合子知事は17日の定例記者会見で「CO2を出さない、大量かつ長期間エネルギーを貯蔵できる水素を脱炭素の柱に据えている」と発言。また、「水素のメリットを活用しながら、災害時のレジリエンスを高めていく」と強調した。
都は現在都内に22ヶ所ある水素ステーションを、2030年までに150ヶ所に増やす目標を掲げており、今年度からは水素ステーション設置を促すため助成制度を拡充している。令和3年度東京都予算案では、水素ステーション整備に向けた支援策の拡充内容として既存ガソリンスタンドの水素ステーション併設・転換する場合の工事期間中の営業損失への支援を新たに設置。補助額は上限500万円規模となっている。
また、スペースが限られているバス営業所やガソリンススタンドが、屋根の上などに水素設備を置く「次世代キャノピー」と呼ばれる設備を整備する場合、費用の5分の4(上限1億円)を補助する。そのほかにも盛土、切土など造成工事に要する経費に対し、費用の2分の1(上限1億円)を補助する 。
都は、「ゼロエミッション東京」の実現に向け、水素エネルギーの需要を高めていく方針だ。コスト面などで課題はあるが、避難所向けの電源供給の取り組みや水素ステーション設置費用の補助などでFCVの普及を進めていきたいとしている。
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