前出のグラフを見てもわかるように、LCA(ライフサイクルアセスメント)でみると圧倒的にスコープ3が多い。これはどこの企業でも同じだ。上流側をみると、資本財による排出量が若干多い。これは、自社の資本財(設備、機器、建物、施設、車両など)の建設・製造、輸送から発生するものだ。だが、手放せばそれで終わりではなく、なかなか削減が難しい。これからの課題だという。
もっとも大きいのがスコープ3の下流、使用に関する部分。これもどの企業でも同じだ。日立の場合、84%を占める。ここで効いてくるのが、取り組みの2、3、4だ。
2の製品の省エネルギー化、これは研究開発の指針が変わってきた。つまり、従来の製品の改良はより便利、より速く、といった機能面が多かったが、そこにより脱炭素に、ということが加わったのだ。
「例えば高効率インバータを開発してエネルギー効率を2倍以上に上げる、モータもそうです。IE5という規格の産業用モータを、アモルファス磁性合金箔によってさらに高効率にすることに成功しました」(久保氏)
モータは電気エネルギーを運動エネルギーに変換する基本的な製品だ。実は国内電力使用量の半分以上が、産業用では実に74%がモータの電力使用になる。この新開発のモータは従来の5%以上の電力使用量削減になるという。
このモータというプロダクトはわかりやすい「製品の省エネルギー化」だ。ほかにももちろん、一般電化製品、パワーデバイスもそうなる。さらに、「4の脱炭素社会への転換を実現するテクノロジーの開発」にもなっている。
3の「社会全体のカーボンニュートラル化に貢献する事業の推進」にもかかっているが、これは事業としてのエネルギーセクションが大きくそれにあたっている。たとえばHVDC(高圧直流送電)や需要家に向けたエネルギーマネジメントだ。こうした事業そのものが脱炭素社会に貢献している。
また、日立が提供するDXソリューション・IoTプラットフォームであるLumadaも、特に産業ユーザーのカーボンフリーに貢献している。Lumadaでは企業の全社的なデータをビッグデータとして扱い、AIで解決することができる一連のサービスだ。ここでも炭素排出の削減を全社のどこで、どのようにできるかがわかるようになっている。
どの企業にも言えることだが、スコープ3は一企業の取り組みだけではなく、社会全体、ユーザーを含めたものだ。そうした箇所では、自社で社会貢献できるプロダクト、サービスを持っている日立ならではの取り組みが求められている。
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ここまで取り組みの1から4を見てきた。最終回の次回では、バリューチェーン全体での脱炭素の取り組みの難しさについて紹介する。
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