中国の湖北省武漢で発生した新型コロナウイルスによる感染症は、その後、日本、韓国、イタリアなど世界各地に拡大している。経済的にも大きな影響を与えている。エネルギー業界で最初に懸念されたのが、太陽光発電設備の部材・機器の輸入だった。
太陽光発電の工事現場では、どのような状況になっているのだろうか。
"世界の工場"中国では、すでに回復基調に
中国で新型コロナウイルスが拡大しはじめたのは、春節、すなわち旧暦の正月の時期だ。今年は1月下旬ごろからということになる。この影響で、春節後も中国の多くの工場が操業停止となった。その中には、サンテックパワーなど太陽光発電関連のメーカーも含まれる。
では、日本国内の太陽光発電の施工には影響を与えたのだろうか。
結論を先に述べると、日本の太陽光発電事業者に取材したところ、3月中旬の現在、影響は軽微なものとなっているという。
最大の理由は、中国国内ではすでに、新型コロナウイルスの感染拡大はピークを越えており、生産現場が回復しつつあるからだ。
中国の場合、日本とは雇用の慣習が異なっており、工場の従業員は毎年契約を更新する雇用形態が一般的だ。つまり、一度工場が操業停止してしまうと、従業員が他の工場に移ってしまい、再開には時間がかかる。そのため、太陽光パネルなどの工場は、まだフル生産には達していないということだ。
とはいえ、施工現場への直接的な影響は、納期が遅れることだ。操業停止以前には、納期が1ヶ月程度先だったものが、現在は3ヶ月先納品となっている。それに対する対策として、既に発注する時点でそれを見越して発注をかけている業者が多いという。例えば、6月初旬に必要な部材について、以前であれば4月末ないし5月初旬に発注していたものが、現在は3月初旬に発注している、ということだ。今後は生産能力が回復していくにつれ、徐々に納期も短くなっていくと見られている。
懸念される日本での感染拡大と世界経済
中国の感染状況が収束に向かう一方で、日本はまだ拡大の方向にある。日本の太陽光発電の施工現場では、むしろ今後、作業員の不足が懸念されるかもしれない。何より、徹底した衛生管理を続けることが重要だろう。
さらに、世界経済に対する不安も拡大している。日本だけではなく海外でも株式が下落している。原油価格が下がったことから、再エネに対する投資が減速する可能性もある。
今回の感染拡大は、生産拠点が集中していることに対するリスクも明らかになったといえるだろう。感染対策も含めた自然災害の対策は、グローバル経済の中で何らかの対策を常に考えておく必要がある、そうした教訓を残したのではないだろうか。
(Text:本橋恵一)