こうした問題は一面で捉えないことが非常に大事だ。
中国をとりまく状況といえば、アメリカ関連の動きがかなりあったのが昨今である。アメリカは今も日・豪・印を交えてクアッドと呼ばれる4ヶ国での中国包囲網形成を進めてきており、まさにその会合が9月25日に開催されたばかりだ。また、直接的にも相当プレッシャーをかけていたが、同時に、中国との折り合いも模索していたとされている。
その象徴が国連総会でのバイデン大統領のスピーチだ。同大統領はこのように演説の中で言及をした。
「we are not seeking a new Cold War or a world divided into rigid blocs」
簡単にいえば新たな冷戦など望んでいない、という内容となる。
この言葉を聞いたときに、筆者は、中国とはそれなりに調整がついた部分もあるのだろうと推察をした。
もちろん、前段ではこのように言っている。
「oppose attempts by stronger countries to dominate weaker ones, whether through changes to territory by force, economic coercion, technological exploitation, or disinformation」
武力による領土変更、経済的な強制、技術的搾取、情報操作など、いかなる手段であっても、強国が弱い国を支配しようとする試みをアメリカは許さない、という内容で、明らかに中国を念頭においての発言だ。
中国との折り合いが一定程度進んでいなければ、通常はここから「したがって」のようにもう少し尾ひれはひれがつく。
しかし、今回は「But」、しかし、と述べて先ほどのように冷戦構図は望まないとした。
アメリカは国内で中国を脅威と見なす向きもかなりあるので、そこに対して、中国への対抗軸はあるというのを見せつつも、国際的協調の盟主となる方向性もアメリカが見せた、という格好になる。
それに合わせるように、中国が何を出してきたか。それが今回の石炭火力発電の支援停止のカードである。
もちろん、アメリカの気候変動担当のケリー大統領特使が中国を訪問して、この部分について中国に要請をしたというところは報じられていたが、そこだけを聞いたときには正直「中国がそんなに簡単に言うことを聞くわけがない」と、筆者は見ていた。そのため、このカードを中国が切らされたことに、正直驚いた。先述した、これまでの経緯からくる違和感もそうだが、今回の米中の調整で、中国が折れるような格好になった、というのが意外だったからだ。
ただ、外交交渉で折れるということは何を意味するか。他に何かを交換条件で得た、ないしは大事なものを守った、基本的にこの2つがある。
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