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石炭火力支援停止に 深刻な電力不足 どうした中国

2021年10月01日

中国が経済成長を一時的に失ってでも取りたいものとは

先ほどの分析に照らせば、この状況下で、環境対策を優先し、経済影響を被るようなことをするとは、正直思えない。

その点では、ロイターやBBCの見立てどおり、石炭火力に電力セクターが依存し過ぎており、石炭の供給が不足し、電力不足に陥った、というのが一番ロジックとしてはしっくりくる。

日本もこの前の冬にLNG不足から電力の危機に陥りかけた。資源に頼るモデルであり続けると、資源の供給が足りなくなれば厳しくなる、というところは教訓として見えてくる。

ただ、ここで一度立ち止まりたい。そもそも中国が2060年カーボンニュートラルを掲げたこと自体の違和感、これが、実は個人的にはあったのだが、そこにつながるヒントが今回あったとも見ている。

実は中国は石炭の純輸入国だ。その一番手はインドネシアだが、次がオーストラリア。ただ、オーストラリアとの関係は、先ほどのクアッドをはじめ、コロナをめぐるやりとりで悪化をしており、オーストラリアに依存することが中国にとってはマイナス要素となっていた。

一方で、中国国内の電力需要はどんどん高まる格好になっており、今後も伸びることが予想されている。仮に、安いからという理由で石炭火力に頼る体制を続けたらどうなるだろう? そう、石炭の輸入量を増やすしかなくなる。つまり、中国の経済をささえる電力セクターの外部依存性が高くなる。これは中国にとっては、不安定要素でしかない。

そして、すでに中国では今年に入り何度か電力危機が指摘されていた。5月にも広東省で電力不足による一時停止が起きている。増えすぎる需要に供給が追いついていないというのが実態だ。

ここから見えてくるものは、火力発電を増やすことは長期的に見て、中国の自立性を損なうものであるということであり、そこに中国政府が気づいた、ということに他ならないと分析をしている。

今回に関しては一時の措置として経済を優先して凌ぐだろう。事実、8月の段階で中国政府の関連部門は石炭不足による発電機停止を防ぐため、各主要電力企業に対し、短期的に発電所の石炭在庫レベルを引き上げる旨の通達を出している。この通達からも、CO2を出す気は満々なのが分かる。さらには、中国国有の送電会社、国家電網が27日、電力不足を解消する総合的な対策を導入すると表明した。つまり、稼働する電力は全部稼働する、ということだ。

あくまで凌ぎであって、長期的な処方箋にはならない・・・次ページへ

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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