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エネルギービジネスはまだまだ伸びる。 僕が考える、そのために必要なこと。

エナーバンク:エネルギービジネスはまだまだ伸びる。 僕が考える、そのために必要なこと。

2019/06/19

エナーバンク 村中健一CEOインタビュー (2)

開始1ヶ月足らずで取扱額が3億円を超えた電力のリバースオークション・サービスサイト「エネオク」。大学時代からソフトバンクを経て、独立した村中健一社長のエネルギーに対する思いとはなにか。そして、村中氏が考える、自由化後のエネルギービジネスに必要だと思うこととは。

前編はこちら

僕がエネルギーに興味を持ったきっかけ

僕は「電力」という言葉よりも、敢えて「エネルギー」という言葉を多く使うようにしています。その理由は、電力という言葉には業界、会社が付いて東電・関電のイメージが想起されるのに対して、エネルギーはガスや石油系、自動車なども含む広がりのある言葉だと感じるからなんです。

僕がエネルギーに興味をもつようになったのは、高校生の頃にアメリカの元副大統領のアル・ゴア氏を取り上げたドキュメンタリー映画「不都合な真実」を見たのがきっかけでした。環境活動家として知られる同氏がいろいろなデータを使いながら、CO2排出を削減しないと、地球がおかしなことになると訴えていたんです。

不都合な真実 公開時のポスター(2006)

電気の使い方を見直すこと、省エネの意識をもつこと、自分でエネルギーを選択していくことが大切であり、それをほかの人と共有し、文化を形成してはじめて、エネルギー問題・環境問題は動くのだということを学びました。そこで必要になってくるのが、技術、お金、政治的な文脈で、これらすべてが組み合わさってはじめて、エネルギーがどういう方向に流れていくのかが決まる。

その後、大学でエネルギーに関することを学びたいと思って理系に進学しました。最適化工学でエネルギーシステムの最適化を学び、スマートグリッド、スマートシティがエネルギー問題を解決する一つの方法であり、未来なのではないかというところにたどり着きました。大学を卒業したら電力会社に入社し、日本が誇る最先端技術であった原子力発電に関わっていくつもりだったんです。

ところが、大学院への進学を目前にした2011年3月に東日本大震災が起こりました。原発の惨状を目の当たりにして、これまで「5重の壁」と言われていた原子力の安全性とはいったい何だったんだという思いに駆られました。「技術」というものを信じていいものなのかどうか分からなくなり、みんなが正しいと思っているものが正しいとは限らない、と気づかされました。

熱量があれば、世の中に対して価値を生み出すことができる

そうした思いを持ったまま大学院に進み、とにかく未来のためになにか新しいことを見つけなくては、という思いから、起業家セミナーに多く参加しました。それまでの僕は起業なんて考えたことがなかったんですが、ある学生向けビジネスコンテストに出たところ、優勝したんです。

その副賞で提供いただいた渋谷にある12畳ほどのオフィスに5~6人で寝泊まりしながら、さまざまな議論をしたり、いろいろプロダクトをつくったりしたのがとても楽しかった。その時、世の中のことをあまり分かっていない、若い僕らでも、構わずガンガン自分の思うことをやっていけば、世の中に対して価値を生み出すことはできるんだ、と気付かされました。

とはいえ、僕はやっぱりインフラ事業が好きでした。ゆくゆくはエネルギー関連の業種に携わりたかったので、自動車業界か通信業界に就職するのがいいと思ったんです。最終的には業界の成長スピードの速さを理由に、ソフトバンクにエンジニアとして入りました。そこでまず、よりひろい技術を学んで使えるようになり、次にサービスの立ち上げができるようになりました。その頃には将来的に起業を考えるようになり、経営側の視点を学ぶために一つのサービスを引っ張っていくような経験も積みました。

ソフトバンクの孫(正義)さんは、エネルギーに対して非常に熱い人で、SBエナジーを設立し、ロシアやモンゴルから海底ケーブルで電気をひっぱり日本の電気を安くするという「アジアスーパーグリッド構想」を打ち出すなど、スケールの大きいアイデアを持っていました。

エネルギーのことを常に考え、人一倍エネルギー愛が強く、どうすれば「エネルギーを自分のものにできるか」をずっと頭に置きながら生きてきました。さまざまな実務に携わることで、エネルギーに対する感度が培われてきたんだと思っています。

電力が電力でなくなる世界とは

今、僕が目指しているのは、電力が電力でなくなるイメージです。そのためには逆に一度、電力を強く意識しなくてはならない。インフラ化されてしまうと、安定供給された電気がそこにあることが当たり前になり、誰も意識しなくなってしまいます。

2018年9月の北海道胆振東部地震による北海道全域のブラックアウトで、電力は実は危ういインフラなんだということが顕在化しました。
インフラを立て直すためには膨大なコストがかかると及び腰になる人もいますが、僕はインフラの上にコンテンツがのれば、全体としてビジネスが回るイメージをもっています。

つまり、エネルギーにも十分ビジネスチャンスはあるので、足元の電力・エネルギーのインフラに投資をしても問題ない。

こうしたインフラの上にコンテンツが乗る、という考え方は通信に似ています。通信はもともと電話線でしたが、自由化が起こりやがて光通信になりました。そこにインターネットが乗り、コンテンツや表現の幅が広がり、さらにその上でスマホやPCといったデバイスが動いて、さまざまなサービスが誕生しています。

このようなレイヤー構造をもつ通信を紐解くと、各レイヤー内でサービスのビジネスをする人たちもいれば、回線をメンテナンスするインフラ屋さんもいます。

通信から見ると、電力はまだこうしたレイヤー構造までは至っていない。「もしもし」「はいはい」のレベルで会話しているようなものです。レイヤーを意識して、より深い構造のビジネスをつくり、より広いビジネスがなりたつ世界にもっていくかが現在の課題だと思います。

そのためには、電力でビジネスをやろうという人がもっともっといなければならない。だから僕の役目は、電力でビジネスができるんだという事例を世の中にどんどん発信していくことだとも思います。電力以外の人たちにも興味を持ってもらい協力パートナーを増やしていきたいんです。

インフラとは、世の中すべて。俯瞰した世界を知りたい

エネルギーに興味を持つ前のことを考えると、中学生の時の理科が一番好きでした。この頃までは、地学だと星や地層の概念を学び、生物では朝顔の観察、物理では電気をつけたりモーターでモノを走らせたりしますよね。学びとしてはフワッとしているんですが、全体を学べる感覚が好きだったんです。

学年が上がるにつれて学問が細分化されていくと、僕が知りたいのはもっと俯瞰した世界なんだと思ようになっていきました。

今携わっているエネルギーも同じように、発電・送電といった個々の要素よりも、俯瞰してみて“世の中すべて”だなと感じられるのが好きなんです。それがインフラというものなんだと思います。

今は、社会全体、ビジネスにとってもインフラが何層にも張られて、面白い見方ができる時代になってきました。エネルギー業界だけでなく、さらに俯瞰してみると、エネルギーがあって、ソフトウエアの世界がインターネットという形で存在し、その上でサービスが運用され、GAFAのようなメガプラットフォーマーが出現し、データが蓄積されています。

しかし、こうした壮大な世界も、その根本にあるのはデジタルで、データセンターとネットワークが支え、電気がなくなったら、その瞬間に終わってしまいます。やはり、エネルギーは持続的な発展のために最重要なレイヤーなんです。

エネルギービジネスはまだまだ伸びる

エネルギーはこれほど重要なのに主張が足りないと、僕はかねがね思ってきました。通信の場合、「つながりやすさナンバーワン」などと宣伝し、それに対してお客さんはお金を払うという関係性が築かれていますよね。これまで電力は、総括原価方式で買い上げられていたこともあってそうした主張をする必要がなかったのかもしれないですが、自由化後は電力もビジネスのレイヤーに近づいているので、「いいサービスを提供するから、もっと使ってください」と主張していいはずなんです。

電力をビジネスに落とし込む時、僕は、インターネットの上にサービスがあるように、電力の上にいろいろなサービスを受けられるレイヤーをのせ、電力の価値を高めたらいいのではと考えています。例えば、電力に電気自動車がついてくるプランがあってもいい。前述のレイヤー構造というのは、例えばそういうことです。

通信でできていることが、電力ではできていないのは、電力の旧態然としたところで、自分たちのサービスはここまで、と自分たちで枠をはめているからではないでしょうか。

大きな目線でいうと、まずは電力ビジネスとしての伸びしろをもっと見つけなくてはならないと思っています。経産省などは「エネルギー市場は伸びが弱い」と言いますが、それは全体を見ているからであって、個別のセグメントに分けたらちゃんと伸びているところはあるんです。それを見定めて伸ばしていく方針を立てなくてはならない。

例えば、IT関連事業はまだまだ増えていくので、情報通信系のネットワークセンターやモバイルの基地局向けの電力需要は増えていきます。ほかにもガソリン車から電気自動車へのシフトによって電力市場は拡大します。

電力需要の増加が見込まれているところで、自分なりのポジションをどう取っていけるかが勝負を分けると思っています。

消費者側から電力を変える

このような電力・エネルギー構造の変化は、発電サイトである上流からはじまって、消費者である下流へと浸透していくという流れもあります。しかし、今や600社もある小売電気事業者を消費者側が選べる時代です。消費者側で起こせるアクションの数は、発電サイトが20年という長期的な計画の中で打てる対策の数に比べたら圧倒的に多く、スピード感が全く違います。

僕たちベンチャーとしては消費者サイドに立って高速にアクションを重ね、どんどんサービスを打ち、お客様を獲得し、そこで蓄積したデータを基に、上流の発電サイトの変化を促していくことが有利で重要だと考えています。
そして、この状況は今後、ますます加速していくと思っています。

(終わり)

取材・記事執筆:池田亜希子(サイテック ・コミュニケーションズ) 撮影:寺川真嗣
村中健一
村中健一

株式会社エナーバンク 代表取締役社長。 慶應義塾大学理工学部及び大学院理工学研究科で最適化理論・機械学習を学ぶ。ソフトバンクで経済産業省HEMSプロジェクト主任。2016年電力自由化で電力事業の立ち上げ、電力見える化プロダクト開発のリーダを務める。IoT関連の新プロダクト企画・開発実績。2018年エナーバンクを創業。 https://www.enerbank.co.jp

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