日本企業の気候変動対策に「格差」　CDP、Aランク数世界トップでも拭えきれない課題とは

「新しい資本主義」にふさわしい仕組み　日本企業の「強み」生かせ

これらの結果を受け、高崎経済大学の水口剛学長は「2021年は、気候変動に関する枠組みが固まった年」と位置づけたうえで、「いったん基準や枠組みができると高いパフォーマンスを示すという意味で、日本には強さがある。今こそ、枠組みやフレームワークの中で、日本企業が強さを発揮するとき。Aリスト入りはゴールではなく通過点。日本のCO₂排出量削減の46％という目標に向けて、さらに頑張って欲しい」とコメントした。

また、CDPで評価されるという成功は、「新しい資本主義」をつくろうという考え方が広がるなかで、貨幣資本だけを考えるのではなく、人的資本、知的資本、社会関係資本、自然資本など広い範囲の資本をすべて枠組みの中に組み込み、守り、増やしていくことが価値につながる仕組みの必要性を解き、「CDPの仕組みが企業に広がることは、それを評価し市場に反映するもの」と意義を語り、期待を寄せた。

トリプルA（３分野でA評価）となった企業のトップは何を語ったか

＜花王　長谷部佳宏社長＞

花王は、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」（キレイライフスタイルプラン）を策定し、事業と一体化した活動を進めています。2003年以来、CDPに参加することで、社会や投資家の期待を的確に把握することができ、活動を進化させることができていると感じています。

2021年は気候変動において、2040年までにカーボンゼロ、2050年までにカーボンネガティブをめざす新たな脱炭素の長期目標を設定・開示した年です。バリューチェーン全体で、CO₂排出をいかに低減していくかに取り組みますし、CO₂をリサイクルし、燃料にし、それによって商品にするという技術開発を進めていきます。

水については、水使用をおさえられながら良い価値を提供できる商品を開発してきました。サステナブルな水の活用を社会全体に広めてまいります。

最後に、森林ですが、花王の事業の主原料となるパーム油、紙パルプを生み出す森林への取り組みは、環境・社会面の両面でしっかり実行しなくてはいけません。小規模パーム農園経営支援プログラムをインドネシアで本格的に開始しました。このプログラムも、花王１社では解決できません。サプライチェーン全体でサステナブルな社会を推進するため、誰もが同じ目線で活動することが重要です。

「Kirei Lifestyle Plan」は、だれ一人取り残すことなく、環境を守りながら、よりよい社会を作っていくことを目指しているものです。多くの仲間とその実現に向かって突き進むことを、お約束させてください。すべてのステークホルダーとともに、心豊かな共生社会の実現を目指してまいりたいと思います。

＜不二製油グループ本社　酒井幹夫社長＞

私たちは、パーム油、カカオ、大豆などを原料に、業務用チョコレートなどをグローバルに展開するBtoBメーカーですが、創業当時より地球と人の健康、食の喜びを追求してきました。

一方、これらの主原料は森林破壊や生物多様性の損失、人権破壊が指摘されており、特にコロナによって気候危機への対応、サプライチェーンの強靭化が喫緊の課題となっているのはご承知の通りです。

不二製油は、これらの問題に真摯に向き合い2016年から持続可能な原材料調達に取り組み始めました。パーム油は、農園までのトレーサビリティ100％、カカオは児童労働の撤廃、大豆はコミュニティレベルまでのトレーサビリティまでを目標とし、サプライヤーやNPOと共同で環境保全や労働環境の改善に取り組んでいます。

自社グループの生産においても、2030年、目標達成に向け、CO₂の排出、水の使用量、廃棄物の削減を推進しており、またTCFDフレームワークにもとづき、気候変動フレームワークの対応、ガバナンスの強化、より充実した情報開示を進めています。

いま、私たちは食料システムの変革という大きな課題に直面しています。食で命を守るエッセンシャル企業として、サステナブルな植物原料のもつ力を、これまで培った油脂とたんぱくの技術で最大限に引き出し、未来につながるおいしさと健康をつくるプラントベースドフードソリューションをイノベーティブなパートナーシップで広げ、持続可能な社会の実現につとめてまいります。

リスト入りし、アワードで受賞スピーチをした企業・発表者

【トリプルAリスト】（気候変動・水セキュリティ・フォレスト）＝スピーチ企業２社

【ダブルAリスト】（気候変動・水セキュリティ）＝スピーチ企業15社（リスト入りは17社）

【気候変動Aリスト】＝スピーチ企業34社（リスト入りは56社）

【水セキュリティAリスト】＝スピーチ企業13社（リスト入りは37社）

（CDPジャパンホームページより）

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