政府は2月4日、所有者がわからず放置された土地を有効活用するため、再生可能エネルギーの発電施設を利用対象とし、さらに土地の使用期限を従来の10年から20年に延長する「所有者不明の土地利用特別措置法」の改正案を閣議決定した。太陽光発電の適地が減る中、導入拡大に向けた取り組みのひとつだが、主導する国土交通省は多発する地域トラブルを鑑み、地産地消など要件を厳格化する方針だ。法改正によって再エネの導入機運は高まるのか。
2030年の温室効果ガス46%削減に向け、政府は太陽光発電を倍増させる方針だ。
しかし、日本の国土のおよそ7割は森林で日照条件の良い平地は限られており、太陽光発電の適地は減少。その一方で、太陽光発電施設が景観の悪化や環境破壊につながったり、台風などの災害によるパネル破損や土砂崩れなどの事故が増加傾向にある。地元住民からの反対の声を受け、太陽光発電施設の建設を規制する条例を制定する自治体は150を超えた。
一方、所有者不明の土地をめぐっては、所有者不明土地問題研究会が2017年にまとめた報告書によると、2016年時点ですでに九州の面積(368万ヘクタール)を上回る約410万ヘクタールが存在し、人口減少や高齢化の進展による土地活用の低下、相続放棄などが相次げば、2040年には北海道に迫る約720万ヘクタールまで増加すると予測する。公共事業や民間の用地取得の妨げなどによる機会損失や税の滞納などで経済損失は2016年時点で年間約1,800億円とされ、2040年には約3,100億円まで膨らむと警鐘を鳴らしていた。
こうした事態を打開しようと、政府は2019年、所有者不明の土地を自治体や民間事業者が公共目的で使う場合であれば、都道府県知事が土地の使用権を与える「所有者不明土地特別措置法」を施行。公園や学校、病院などのほか、出力1,000kW以上の発電施設が利用できる仕組みを導入していた。
だが、土地の利用期限が10年間しかなく、太陽光発電などの発電施設などを建設しようにも融資が受けられないなど課題が多い。実際、392の市町村のうち、所有者不明の土地を公共事業などの活用に検討したことがあると回答したのはわずか11%しかなく、「適当な事業がない」「使用権10年の費用対効果が低い」と評判はすこぶる悪かった。
2月4日に閣議決定された改正案では、土地を利用できる対象枠を拡大し、1,000kW未満の再エネの発電施設なども認めた。さらに土地の使用期限を10年から20年に延長することで、再エネの普及拡大につなげたい考えだ。
政府は、改正案を今の通常国会に提出し、成立させることを目指している。
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