所有者不明の土地利用に対して、再エネの業界団体からは、「導入ポテンシャルの高い土地は過疎地の山林や農地などが多く含まれており、全所有者をまとめないとFITの申請もできない」、「土地所有者の数・保有状態・相続状況などで合意取得に1〜5年程度かかる。速やかに利用手続きができるようになれば、導入の前倒しが可能」といった要望があがっており、改正法に寄せる期待は大きい。
民間事業者が所有者不明の土地で再エネ施設を建設したい場合、都道府県知事に申請するなどの確認手続きを経たうえで、これまでは6ヶ月間の公告・縦覧の期間が必要だった。今回の法改正によって、公告・縦覧期間を2ヶ月に短縮する。審査を簡素化することで土地活用のハードルを下げ、太陽光発電の適地を増やす方針だ。
民間事業者は2ヶ月の間に所有者が見つからず、事業に反対する関係者が現れなければ、都道府県知事が定めた不明土地の賃貸料相当の補償金を供託することで、使用権を取得できる。
ただし、利用目的はあくまで公益だ。
所有者不明の土地利用特措法(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法)の改正で何が変わるのか
改正前 | 改正後 | |
主な対象施設 | 公園、道路、駐車場、学校、図書館、社会福祉施設、病院などのほか、出力1,000kW以上の再エネ発電施設 | 出力1,000kW未満の再エネ発電施設や備蓄倉庫などの災害関連施設を新たに追加 |
土地の使用権の上限期間 | 10年 | 20年 |
公告・縦覧期間 | 6ヶ月 | 2ヶ月 |
出典:国交省の資料をもとに作成
改正案を議論してきた国土審議会の土地政策分科会では、不明土地の利用対象を再エネ施設に拡大することに賛成する意見があった一方で、地域トラブルの増加を鑑み、道の駅などに太陽光発電を設置し、災害時にはその電力を近隣住民に供給するなど、地産地消であるべきとの意見が出ている。
また「法人が再エネ事業をやったはいいが、経営が立ち行かなくなり、所有者不明の土地に太陽光パネルが残されたまま、という事態も想定される。そうした事態が起こったときにどういう対応が取れるのか、しっかり議論すべきだ」といった意見や、「そもそも何が地産地消なのか、定義すべきだ」といった意見が出されている。
経済産業省は「FIT制度においては、発電量のうち3割を自家消費する、あるいは災害時にはバックアップ電源として活用するといった要件を定めているが、不明土地における地産地消の概念は国交省が設定するもの」と述べている。
その国交省は、「再エネ施設を追加するにあたっては、要件の厳格化と適切な運用の徹底が必要」としており、民間企業で導入機運が高まるオフサイトPPAを駆使した再エネ調達に不明土地を活用できるかは微妙な状況だ。
特措法は、2019年の施行から3年近く経つが、実際に活用された事例はわずか1件、新潟県の離島(栗島浦村)における防災避難所整備しかない。利用目的を限定しすぎれば、法改正をしても不明土地の活用が広がらないという結果になりかねない。
エネルギーの最新記事