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イベントレポート:The Climate Reality Project 気候危機に関する知識を身につけ、アクションを起こせ!

イベントレポート:The Climate Reality Project 気候危機に関する知識を身につけ、アクションを起こせ!

EnergyShift編集部
2019/10/18

The Climate Reality Project
気候危機に関する知識を身につけ、アクションを起こせ!

アル・ゴア元米副大統領が主催する米国の環境NPOであるThe Climate Reality Projectは、10月2〜3日、気候危機(Climate Changeではなく、Climate Crisis)が経済、社会、環境にどのような難題を引き起こしているのか、また一般の人々に何ができるのかをテーマとした教育プログラム「クライメート・リアリティ・リーダーシップ・コミュニティ・トレーニング東京」を開催した。

アル・ゴア氏は副大統領退任後、ドキュメンタリー映画「不都合な真実」に代表される、気候危機を世界中に訴える活動を展開し、2007年にはノーベル平和賞を受賞している。そのアル・ゴア氏が、世界が直面する気候危機にどう立ち向かうべきかを考え、科学的検証と解決策を学び、一人ひとりが行動を起こすことを目指して設立した団体がThe Climate Reality Projectである。トレーニングのプログラムは、すでに世界13ヶ国で合計42回開催され、約2万人が受講している。日本で開催されるのは、今回が初めてとなる。今回の受講者は約800名だ。

プログラムは、アル・ゴア氏のプレゼンテーションをはじめ、国内外の専門家たちによるパネルディスカッションが行われ、日本経済や暮らし、健康、将来の幸福を脅かす気候危機に対し、どのような解決策があるのかをテーマに、議論が交わされた。

日本は大きな転換を求められている:アル・ゴア氏プレゼンテーション

今回のプログラムで最も注目されたのは、主催者であるアル・ゴア氏によるプレゼンテーションだ。100枚を超えるスライドを使い、2時間半に及ぶものだった。

アル・ゴア氏は最初に、「気候危機は食糧危機などを引き起こし、世界各地で気候難民を生み、政治不安をもたらす。炭素は世界経済に対する一番の脅威です」という。

続けて「石炭火力に大きな公的資金を投入しているのは日本と中国だけです。日本より多いのは中国だけです。世界中の金融機関が石炭火力からの投資撤退に進んでいるにもかかわらず、日本の納税者は石炭火力に投資をしなければいけない状況なのです」と述べ、日本の課題を指摘した。

さらに「日本は何ができるのでしょうか。パリ協定を掘り下げ、より強いコミットメントをすることが求められています。新しい石炭火力に投資をするのではなく、太陽光発電や風力発電、地熱発電に投資をしてはいかがでしょうか。またFIT制度を改正し、競争を促すことで再エネのコストを下げることも必要です。なぜ、こういったことをしないのでしょうか」と問いかける。

そして最後に、「私たちには気候危機を止める権利と力があります。みなさんの将来を救うことに力を貸してください」、という日本へのメッセージで、プレゼンテーションをしめくくった。

セッションテーマ・石炭と気候危機

2015年、世界は2つの決断をした。SDGs(持続可能な開発目標)とパリ協定だ。
同時に、増加する異常気象などにより、世界中の人々が、地球温暖化による影響の深刻さに気づき始めた。昨年、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表した特別報告書では、世界は気温の上昇を1.5℃以内に抑えることが望ましく、そのためには2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにしなければいけないという結論を導き、世界はこの方向に動き始めているといっていいだろう。

とはいえ、温室効果ガス排出削減は容易ではなく、排出量は今でも増え続けているのが現実だ。こうした中、日本政府に問題はないのかが問われる議論となった。

大野輝之(自然エネルギー財団常務理事): なぜ、世界の多くの国々が脱石炭を推し進めているのに、「日本では多くの新設計画があるんだ」という疑問を持つ人が多いと思います。なぜ、日本は石炭火力を続けるのでしょうか。

平田仁子(NPO法人気候ネットワーク国際ディレクター): コストの安さ、燃料の安定調達を理由に、50基の新設計画が進められています。そのうち13基は計画中止となりましたが、15基が目下、建設中です。15基すべてが稼働すると、年間約7,400万tのCO2が追加されてしまう。石炭火力は、日本が気候危機に取り組む上で、最も重要な問題の一つなのに、新設計画が着々と進んでいるというのが現状です。

夫馬賢治(ニューラル代表取締役CEO): 日本は石炭火力や原子力は産業政策であり、雇用政策だと考え、どうしても再生可能エネルギーに踏み切れずにいます。太陽光発電は2010年近くまで日本メーカーが世界的なシェアを持ち、風力発電用タービンも世界シェアを持つ日本企業がありました。しかし、エネルギーシフトの時代が来るということを見誤り、太陽光パネルや風力タービンの生産から多くの日本企業が撤退しました。 では、日本の産業政策で何が残ったのか。石炭火力や原子力の技術です。世界に冠たる技術を誇ってしまったため、簡単に捨てられない。さらにこれらの産業は数千人規模の従業員を抱えています。産業政策と雇用政策が一つの抵抗力となり、国の政策に影響をもたらしているのです。

金井司(三井住友信託銀行経営企画部フェロー役員): 化石燃料には、物理的なリスクと経済的リスクの2つがあります。これまで、物理的リスクは10年、20年という長期スパンで考えることが一般的でしたが、もはや次の台風が上陸したらどんな被害を受けるのか。超短期間で起こりうるリスクを予測する必要が出ています。座礁資産リスクに代表されるのが、経済的リスクです。気候リスクを考慮せず、投融資することが大きな金融リスクを招いてしまう。その可能性が現実味を帯びたということです。

大野氏: 「原発をやめ、石炭火力も減らしていく」という発言に対し、「原発も石炭火力もやめて本当に電力の安定供給ができるのか」という意見が必ず出ます。

平田氏: 再エネを速やかに導入し、そして私たちが省エネをし、原発と石炭からフェーズアウトしていく方向性を描く必要があります。私たちにとって何が現実的な転換なのか。その方向さえ定めれば、「原発に依存せず、2030年に既存含めて石炭火力をゼロにしていく」ことは実現可能だと思っています。

夫馬氏: 今後、再エネのコストが低下することと、バッテリーコストが下がることを、マーケットは期待しています。では、いかにコストを低減していくのか。企業が市場を見出せば、お金が流れ、コスト削減は加速します。また、カーボンプライシングが導入されれば、他の化石燃料よりも、石炭火力は割高な価格設定になるので、再エネの競争力が高まります。日本は世界から5年遅れています。では、世界は今どこに向かっているのか。1.5℃目標の実現です。さらに2050年までにCO2排出をゼロにする。それも自社だけではなく、サプライチェーン全体でどうゼロにするのか、というところまで進んでいるのです。

セッションテーマ・クリーンエネルギーの未来を実現する

再生可能エネルギー100%を達成したグローバル企業がすでに登場している。国際競争力を強化するためにも、日本企業は再エネを調達する必要がある。では、一体どうすれば再エネの導入を加速することがきるのか。

松尾雄介(JCLPエグゼクティブ・ディレクター): 海外の方々から、「日本はこれだけ長い海岸線を持っている。その海岸には需要地が集まっている。こんなに再エネに適したところはない」と言われることがあります。しかし、日本にはさまざまな課題が存在しています。

三宅香(イオン執行役): RE100に関して、「できるかどうかもわからない、達成方法さえわからないのに宣言していいのか」と言われます。しかし、イオングループ全体で日本の全電力消費量のうち1%を使っています。その1%の規模をもって、「これだけの需要があるんだ」ということを顕在化させるのが、RE100宣言の意味だと思っています。

ロバート・アラン・フェルドマン(モルガン・スタンレーMUFG証券シニア・アドバイザー): 日本で再エネが大量に普及したらどうなるか。日本では、原油の輸入に年間約8兆円を投じています。8兆円の支出がなくなれば、消費税3%の押し下げ効果を生みます。もう一つは地方再生です。地方は東京より賃金が安い。しかし、米国と日本の賃金と物価を比較すると、米国では地方は賃金が安いが、物価はもっと安いんです。だから、大都会は小さくなり、地方都市が大きくなっています。ところが、日本の地方は物価が安くない。だから、東京一極集中が続くわけです。これに対し、再エネが導入されれば、地方のエネルギーコストが安くなり、地方再生につながります。

松尾氏: 日本は化石燃料を輸入し、電気を作るため、ベースとなる電気代が必ずしも低くありません。さらに今後、気候変動への危機感が強まれば、炭素への制約、カーボンプライシングが現実味を帯びてきます。そうすると、エネルギーを大量に消費する企業が、「本当に日本国内で工場を建てていいのか」という議論が出てきます。

梶直弘(経済産業省・資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー課課長補佐): 再エネには、日本のエネルギーシステムに対し、破壊的イノベーションを起こす可能性があります。立地競争力の観点でも、再エネが貢献すると思い、政策を遂行しています。再エネに対する国民負担は今年度2.4兆円にのぼります。日本は世界と比べて再エネのコストがまだ高い。しかし、2012年度、FIT価格が40円/kWhだった太陽光発電は、10.50円/kWh(2019年度、最低落札価格)になりました。再エネ電気を作る事業者と需要家がうまく動ける環境を作れば、立地競争力の強化にも貢献できます。

三宅氏: 既存の電気より安い値段で再エネを買えない、というのが現実です。でも、どうやら作る値段は、化石燃料よりも安い値段でできつつあるらしい。しかし、私たちに届くまでの間に、なぜか高くなってしまう。ここに大きな課題があります。きちんと国際競争力を出せるような価格になるために、環境整備をするのが国の役割ではないでしょうか。

フェルドマン氏: レガシーコストをどうするかという課題もあります。歴史的に見て、化石エネルギーなどを手掛けてきた企業が「再エネを導入されては困る」という状況から、持続性のある形で、「より早く導入すべきだ」と転換させるためにも、政治・政策、設備廃棄処理に関する税制などの整備が必要です。もう一つはルール作りです。日本の省庁には審議会が設置されており、130種類あります。その大半は参加委員数が30人程度です。わずか30人が年に2〜3回集まっただけで、何を決められるというのでしょうか。決めるというよりも、決めないようにしている。審議会のあり方を変えなければ、再エネの導入スピードは加速しないでしょう。

セッションテーマ:変化をもたらす企業

気候変動問題に対して、もっともセンシティブな業界は、金融だ。異常気象によって損害保険の支払額は増加している。また、持続可能な投資という観点から、気候変動問題に対応しない事業はネガティブな評価がなされる。金融部門を中心に、社会に変化をもたらす企業について、議論が行われた。

末吉竹二郎(気候変動イニシアティブ代表): 私は日本に対し2つの危機感を抱いています。1つ目の危機感が、「Climate Crisisへの危機感のなさ」への危機感です。2つ目の危機感が、「日本が世界の潮流から遅れている」ということへの自覚のなさへの危機感です。
では、世界の潮流とはどういう流れなのか。「talkからmoveへ」。口だけから少し歩こうじゃないか。それから「moveからactionへ」。もっと目に見えた行動へと変わり、さらに今はactionだけでもダメだとされ、impactを作り、結果を出すことが要求されています。 つまり、温暖化の対応が新たな国際競争力の条件になったということを強く認識する必要があります。地球温暖化を引き起こしたビジネスが変わらない限り、根本的な解決はない。だから今、ビジネスに根本的な解決が迫られているわけです。
では、「その転換を誰がやるんだ」「どういうツールがあるんだ」というと、もちろん国が規制をしたり、商業ルールが生まれたり、消費者の選択というものがあります。しかし、大きな影響力を持つ金融こそが、変化の鍵を握っていると思います。
さらに銀行には、お金をどこに回すと社会全体のベネフィットにつながるのか。社会にとっての審査機能があると思います。金融の責任は非常に重い。だから、金融が本当に変わらないと社会は変わらない。

吉高まり(三菱UFJモルガン・スタンレー証券クリーン・エネルギー・ファイナンス部主任研究員): 金融機関が社会的スクリーニングだという話ですが、みなさん一人ひとりでもスクリーニングはできると思っています。預金者が銀行に預金をしていれば、顧客なので銀行にものが言える。1株でも企業の株を持っていれば、株主総会に参加し、企業にものが言える。お金は単に消費のために使うだけではなく、意思を持って使えるものです。
お金がコミュニケーションツールになった今、使う相手は何を考え、何に使うのかということに対し、意思表示する。そうすれば社会は変わるのではないでしょうか。

この2日間、このほかにも気候変動問題をめぐるさまざまな議論が交わされ、密度の濃いトレーニングのプログラムとなった。修了証書が渡された今回の参加者が、新たなリーダーとしてさまざまな分野で気候変動問題に積極的に取り組んでいくことが期待される。

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