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5Gがもたらす自動運転の未来

5Gがもたらす自動運転の未来

2019年12月05日

自動車は、自動運転を含む、さまざまな通信技術とそれによる機能を搭載したものへと進化していくと見られている。ACES(Automated、Connected、Electrified、Shared)のうち、Connected=接続の分野において、通信の新規格である5Gが大きな進化をもたらしそうだ。5Gによる進化を自動車業界がどうとらえているのか、米国在住のジャーナリスト土方細秩子氏が解説する。

目前にきている、自動運転の商用化

これからの自動車産業においては、自動運転(AV:Autonomous Vehicle)は必ず実現しなければならないものとなっている。誰が一番にレベル5の完全AVを市販するのかが、将来のシェアにもかかわる問題になりつつある。

自動車関連のマーケットリサーチ会社、TUオートモーティブ社が業界関係者などを対象に行った2019年のアンケート調査によると、AVの商業的利用が本格的に始まるのは2020年から22年の間、と答えたのが25%、2023年から25年の間、と答えたのが42%だったという。2017年にも同様の調査が行われているが、こちらの調査結果では、AVの商業利用本格化について2020年、という回答が46%だったので、やや実際的な問題に阻まれて導入時期が遅れている感はあるが、数年内になんらかの形で実現することは疑いようがない。

2017年と19年のアンケート調査を比較すると、もう一つ興味深い結果がみられる。「何が今後の自動車スタンダードを生み出すか」という質問に対する回答の変化だ。

2017年の時点ではインテルなどのシリコンプロバイダー(チップ製造業者)、IBMクラウドサービスやMicrosoft Azureなどのクラウドサービスプロバイダー、AT&TやVerizonなどのワイヤレスオペレーターなどがそれぞれ10-13%を占めていたが、19年の結果ではAppleやGoogleなどのテクノロジーサプライヤーが全体の45%と圧倒的な1位となっている。

GoogleのAutonomous Vehicleプロジェクト WAYMO

これはAVの導入、そしてV2X(Vehicle to Everything:ここでは、EVからの給電ではなく、車と何かを通信で繋ぐという考え方)がより普及し、オペレーティングシステムを提供するテクノロジーサプライヤーこそが今後の自動車スタンダードの中心になる、というコンセンサスが生まれつつあることを意味する。ちなみに19年の調査で「自動車メーカー」と答えたのは19%に止まっている。これからの車、特にEVはハードではなくソフトの時代なのだ。

自動運転、コネクテッドにおける電気自動車の優位性

AVを考えるとき、その車はEVであることが大前提となる。理由は様々だが、最大の理由は、ガソリン車と比較してEVが非常にシンプルである、という点だ。一般的なガソリン車両のパーツ数は3万点近いが、EVは大幅に削減できる。

特に、制動、発進などに関与するパーツが少ない。これはすなわちレスポンス時間が短く、ミスが防げる可能性が高いということにつながる。さらに多くの通信機能が電力を必要とする点からも、大容量バッテリーを備えたEVの方が便利でもある。

通信機能に関して、業界では従来のDSRC(Dedicated Short Range Communications:ETCのような車載器と路側の通信技術)か、C-V2X(Cellular-V2X:携帯電話のように基地局を活用したV2X)のどちらがよいか、という議論がある。DSRCは自動車業界が過去15年にわたり使用してきた通信機能で、現在の衝突防止などに使われている。しかし4Gあるいは5GスタンダードのV2Xにシフトする動きが今、急速に進んでいる。

ただし、AVにはセンサーなどの周囲を感知する機能に加え、IoTの一部に車を組み込むなどのより広範なコミュニケーション機能が期待される。そのため通信手段もスタンドアローンよりも複数のものを組み合わせたものが主流になる、と考えられる。

TUオートモーティブ社の調査では、「5G C-V2X NR(New Radio:5Gの移動通信規格)、4G C-V2X、 DSRCの組み合わせ」がスタンダードになる、という回答が最も多かった。次がDSRCを含まない2つの組み合わせ、3番目は1位の3つに加えてLi-Fi(LEDを利用した通信技術)を加えたもの、という回答だった。5G単独、という回答は現時点では全体の6位に止まっている。こうした回答から見ても、全体として5G C-V2X NRがこれからのAVデータ通信の中心になる、と考えられていることは明らかだ。

では4Gから5Gに移行することで何が可能になるのか。4G通信でもV2V(自動車間の通信)、V2P(自動車と通信機器を持った歩行者との通信)は可能だ。実際に現在行われているAVの走行実験でこうした機能が4Gで問題ないことは証明されている。しかしこれらを含む多様な通信となるV2Xになると、通信のキャパシティの飛躍的な拡大が必要となる。

例えばV2I(Vehicle to Infrastructure:交通インフラと車との通信)がある。信号機と連動し、前方の信号が赤であればそれに合わせて速度を落とし、交通の流れ全体をスムーズにする。駐車場の空き具合をデータで確認し、待つことも場所を探すこともなく車を的確に駐車する。IoTと連係して、自宅までの所要時間を割り出し、到着と同時にガレージドアが開く、家の照明が灯る、サーモスタットにより室内温度が調整される、などなど、多様な機能が考えられる。マップ機能もこれまで以上にリアルタイムな交通状況、事故情報、道路のコンディションなどが表示出来るようになる。また車に自己分析機能を持たせ、不具合が生じる可能性がある場合、メーカーやディーラーなどに自動的にデータを送信し、点検スケジュールを組む、といった機能も考えられる。

5Gをドライブするのは自動車?

3Gが10億人の利用者到達までに要した時間は10年、4Gは6年以下だった、という調査結果もある。5Gは一度普及すれば、より速く、5年以内に同様の利用者到達になる、と予想されている。現在4Gのモバイルオペレーターは世界225カ国に769事業者が存在し、5Gをテスト、デモンストレート、あるいは利用開始するオペレーターは100カ国、296事業者となっている。

もちろん、最初に5Gを利用するのは携帯電話などになるだろうが、同じチップセットを車に組み込み、車そのものが通信デバイスになる日は確実に訪れる。AVの実現、それに続くデータ通信を利用した車の様々な新しい楽しみ方は5Gの普及速度に大きく依存することになるだろう。

土方細秩子
土方細秩子

京都出身、同志社大卒、その後ロータリー奨学生としてボストン大学大学院留学、同大学コミュニケーション学科で修士号取得。パリに3年間居住後ロサンゼルスに本拠地を置き、自動車、IT、政治、社会などについての動向について複数のメディアに寄稿。

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