電力大手とLPガス大手の合弁に見る、エネルギー小売事業の変化とその将来像 | EnergyShift

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電力大手とLPガス大手の合弁に見る、エネルギー小売事業の変化とその将来像

注目される新たなサービスの展開

新会社による電気とLPガスの料金メニューについては、まだ明らかにはなっていないが、新規契約ではもれなく、すでに契約しているお客様には抽選で、それぞれ基本料金5ヶ月無料などのキャンペーンを先行して開始している。また、中部電力ミライズがLPガスを販売するのは、中部エリアといっても、3県に限られているのは、静岡県を中心とした都市ガス・LPガス事業を展開しているサーラエナジーとの間でメータの共同検針などの提携もあってのことだろうと見られる。

ところで、今回の合弁会社設立にあたってもっとも気になるのは、将来像として全国で「暮らしを豊かにする新たなサービスの展開」をしていくということだ。サイサンでもGas Oneグループとしてリフォーム事業などを展開している。一方、中部電力ミライズでは、会員向けのWebサイト「カテエネ」を通じて、使用電力量の見える化だけではなく、見守りサービスや保険、ポイントサービスなどを提供している。とはいえ、両方のサービスを足しただけでは、魅力的な生活サービスになるとは考えにくい。その点では、中部電力ミライズのグループ会社である中部電力ミライズコネクトによる、データを活用したサービスがどのように進化していくのかも注目される。

電力会社もLPガス会社も、エネルギーを通じて暮らしを支える事業を行なっていることには変わりはない。新会社は電気とLPガスのセット販売にはとどまらない、暮らしを豊かにするサービスを提案できなければ、合弁会社の設立は成功とはいえないだろう。


左から 中部電力ミライズ㈱ 大谷社長、㈱サイサン 川本社長
出典:サイサン

 

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もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798064949.html

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