さて、COP26で明らかになった中国の本音の根源は何なのか。②中国のエネルギー事情の概観に触れていきたいと思う。
まず見てほしいのは、各国の一次エネルギーの構成比率だが、中国においては圧倒的に石炭の比率が高い。ちなみに、グラスゴー合意文書に反対したインドも、同様に高くなっている。
このうち、一時エネルギーの半分以上を石炭で賄っているのが中国だ。石炭にエネルギー源を頼っているといえば、よく日本がやり玉に上げられるが、確かに発電では石炭火力発電の比率が高いものの、一次エネルギーにおける中国との比較では、まだまだかわいく見える。
主要国のエネルギー構成(2015年)
つまり、中国の生命線は目下、石炭なのだ。石炭に何かがあると中国はエネルギー供給に支障をきたしてしまう。そんな構造が出来上がっているのだ。
では、なぜ中国はこんなにも石炭を使ってきたのか。そこにはエネルギー自給が関係しているが、これが中国にとって、ものすごく大事な指標となる。
中国の直近のエネルギー自給についていえば、2020年の自然資源部の発表によると、エネルギー自給率は81.7%。非常に高いといえる状況だ。
実は中国は原油生産が第7位。そして天然ガスも生産をしているのだが、こちらについての自給率はどうかというと、実はどんどん輸入比率が上がっており、原油も天然ガスも世界最大の輸入国になっているのだ。
原油も天然ガスも世界最大の輸入国でありながら、なぜ中国はエネルギー自給率を高く保てているのか。それは、石炭を自国内生産できているからだ。石炭について、中国の自給率は約9割と非常に高い格好になっている。
1日あたりの原油の生産量の多い国
中国における天然ガス需給と対外依存度の推移
そこに加えて、中国政府は「エネルギー自給率は高く保ちたい」という考えを持っている。国家能源局によると、中国は第13次五カ年計画期間中に積極的にエネルギー供給改革を推進しており、その結果、エネルギー自給率は常に80%以上を維持するなど、中国のこだわりの強さが伺える。
さらに中国の石炭事情に関していえば、豪州からの輸入を停止して10%弱の石炭輸入量のところが絞られてしまったことや、国際的な石炭価格に連動して中国国内の石炭の価格が上がってしまったこと。そこに中国の電力会社に課せられている電力価格抑制策が組み合わさって、電力危機になったという事情がある。
そして、こうした電力危機は中国にとって何よりも優先したい経済成長を阻害することになるので、中国はどんどん「石炭の在庫を増やせ!採掘しろ」という指示を出した。
具体的には、8月の段階で中国政府の関連部門は石炭不足による発電機停止を防ぐため、各主要電力企業に対し、短期的に発電所の石炭在庫レベルを引き上げる旨の通達を発出。石炭不足の深刻化を受け、それまで禁止してきた豪州産石炭の荷下ろしを始めたとの報道もあったくらいだ。
これらの取り組みの結果、国内石炭の増加については8月からの累積が年間換算で1.2億トンの生産能力を増加し、12月までに合計5,000万トンを増産できる見通しとなった。また、輸入石炭の増加についても9月に輸入量が再び3,000万トンを超過している。石炭について積極姿勢を出しているのだ。
たまに、中国は脱炭素を優先という報道が出ることもあるが、これを見れば、実態が分かるだろう。
つまり、中国のエネルギーの生命線は、とにもかくにも現在は石炭。石炭に影響が出れば国家として一番危ぶんでいる電力危機にもつながる。実はこのことは、彼らの脱炭素政策にも関係してくるのだ。
石炭が必要な中国が、なぜ再エネに取り組むことにしたのか…次ページへ
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