シンガポールのスタートアップ企業「エレクトリファイ」ブロックチェーン技術で63億円の太陽光発電市場を狙った試験運用を開始 | EnergyShift編集部

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シンガポールのスタートアップ企業「エレクトリファイ」ブロックチェーン技術で63億円の太陽光発電市場を狙った試験運用を開始

シンガポールのスタートアップ企業「エレクトリファイ」ブロックチェーン技術で63億円の太陽光発電市場を狙った試験運用を開始

EnergyShift編集部
2020/09/14
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先端エネルギー技術を開発しているシンガポールのスタートアップ企業「エレクトリファイ」は2020年7月22日、同国で最初となるブロックチェーン(分散型台帳)を利用したピア・ツー・ピア(P2P)電力直接取引プラットフォーム「ソーラーシェア」の商業ベースでの試験運用を開始すると発表した。参加者は2020年7月から2021年6月の一年間にわたり、オンラインの電力市場を介してシンガポール内の家庭用太陽光発電設備で発電されたソーラー電力を調達することができる。この新たな取り組みを、日本サスティナブル・エナジー株式会社の大野嘉久氏が解説する。

電力会社を介さないシステムを目指す

この事業はシステムの開発を担当するエレクトリファイと同国の電力大手「セノコ・エナジー」との共同プロジェクトであり、そして資金は電気事業者・ガス事業者仏エンジーのベンチャー企業を支援する部門「エンジー・ファクトリー」が出資している。このスキームにおいては家庭用太陽光発電設備の保有者である“プロシューマー”が仲介者を通さず、太陽光エネルギーを買いたい消費者(家庭または企業)へダイレクトに販売することができるが、販売者と消費者はいずれもセノコ・エナジーの顧客であり、そして双方が直接取引することで除外される仲介者もセノコ・エナジー自身となる。

つまり、このモデルでは従来の電力の取引から電力会社であるセノコ・エナジーを外してしまうため、セノコは売上高を敢えて自ら下げることになる。この点について、同社商業部門トップのJames Chong氏は「P2P電力取引スキームは非常に革新的かつスマートであり、志を同じくした個人や企業がコミュニティを変えてゆく姿はエネルギーの将来像であると信じている。だから、いまだ世界的にも初期段階にあるこの新しい取引スタイルにエレクトリファイやエンジーと一緒に参加することは非常に嬉しい機会である」と、むしろ前向きに捉えている。一方、ソーラーシェアに投資した背景については「シンガポール人から再生可能エネルギー利用に対する需要が高まっており、それに応える必要がある。また、我々は消費者に電力の選択肢をもっと提供したい」という二つの理由を挙げた。

「ソーラーシェア」概略図 (出典:エレクトリファイ)

次世代の電力会社は自分で発電しなくても稼ぐ

消費者である家庭が自宅の太陽光発電設備から電力を他者に販売するプロシューマーという存在については、「シンガポールのエネルギー安全保障を高めることになる。加えて消費者は自分が買っている電力の価格を自分で決められ、どこで作られているかも知ることができる」と、自社のマーケットを奪う新しい競争相手ながらも、歓迎する姿勢を見せている。

今回のパイロット・プロジェクトで使われている「ソーラーシェア」は2019年2月にエレクトリファイが試験運用を成功裏に終了したP2P電力取引プラットフォーム「シナジー」をベースに構築されており、同社はこれまで得た知見と経験をセノコ・エナジーとの新規事業に活用してゆくという。そして2020年7月から始まったパイロット・プロジェクトではプロシューマーと消費者を合計で100組えらび、プロシューマーが決めた希望小売価格などの条件によってソーラーシェアが自動的に購入希望者とマッチングさせる。

プロシューマーと消費者の間の金銭支払いについては、エレクトリファイがソーラーシェアのプラットフォーム上で精算する。他国のP2P取引事例では独自に発行したトークンをシステム上でつくってそれを授受するケースも見られるが、セノコは既に全ての参加者と金銭をやりとりしているため、このシステムにおけるクリアリングハウスの役目を果たすのに適していると言えよう。

巨大市場を見据えて

エレクトリファイは、アジア主要電力マーケットにおけるソーラー電気の事業規模が2021年の260万米ドル(約2億7,500万円)から2023年には6,000万米ドル(約63億5,000万円)へと23倍に増加すると予測しており、政府当局や主要事業者と手を組むことで市場における30%のシェア獲得を目指している。そして有望市場としてはマレーシア・日本・タイそしてオーストラリアを挙げているが、中でも日本は今回の件と縁が深い。

というのもエレクトリファイは東京電力が2018年6月に提携を発表しており、またセノコ・エナジーも丸紅、関西電力、九州電力、国際協力銀行そして仏エンジーのコンソーシアムが所有している(*東京ガスが2020年2月に出資を発表した米国カリフォルニア州のEV充電企業エレクトリファイElectriphi Inc.は別会社)。しかし、日本でこうしたP2Pの電力売買を展開するためには電気事業法や託送料金負担、系統安定化など様々な課題があるため当面は困難とされており、諸外国での経験を積んだ上で将来の日本において導入してもらいたいものである。

プロフィール

大野嘉久(おおの よしひさ)

経済産業省、NEDO、総合電機メーカー、石油化学品メーカーなどを経て国連・世界銀行のエネルギー組織GVEPの日本代表となったのち、日本サスティナブル・エナジー株式会社 代表取締役、認定NPO法人 ファーストアクセス(http://www.hydro-net.org/)理事長、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所元客員研究員。東大院卒。


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