日本ではあまり紹介されない海外のエネルギー業界最新ニュース。EnergyShift編集部が厳選してお送りする。
北米で原油日量175万バレルの減産
米国のデータ情報分析会社IHS Markitは、米国の原油生産者が、原油暴落、需要と貯蔵容量の不足などにより、6月上旬まで175万バレル/日の減産を行う見通しであるという分析を発表した。
今後、夏から秋にかけて、WTI原油の価格が30ドル/バレルを超えれば、需要が回復すると見ているが、50ドル/バレルを超えない状況では、なお55万バレル/日の減産が続くという見通しだ。減産のほとんどはシェールオイルとなる。
一方、カナダでも50万バレル/日の減産となるが、そのほとんどはオイルサンドからの生産となる。
ロシアで浮体式原子力発電が運開
ロシアの国営原子力会社ロスアトムは、2020年5月22日に、浮体式原子力発電所(FNPP)「Akademik Lomonosov(アカデミック・ロモノソフ)」を、ロシア極東チュクチカ地域のペベックで運転開始したことを発表した。
ロシアの原子力発電所として11番目、最北に位置することになる。出力は70MWで、プラントの大きさは長さ140m、幅30mとなっている。40年間稼働するとされ、チュクチカ地域の主力電源となる。
EU、コロナウイルスからの景気回復で2年間15GW再エネオークションを開催
PV Techによると、EUは新型コロナウイルス感染拡大からの回復にあたって、2年間で15GWの再生可能エネルギーのオークションの開催を検討しているという。
1年間あたりでは、7.5GWとなり、これは2019年にEUで建設された太陽光発電および風力発電の設備容量の4分の1に相当する。
また、この入札に対し、各国は100億ユーロの資金を準備している。一方、落札したプロジェクトについての融資の面では、欧州委員会が欧州投資銀行を通じて積極的な支援を行うという。ただし、再エネの競争力は高まっており、実際に必要な資金は100億ユーロを下回る可能性が高い。
欧州委員会は、この他にも、クリーンな水素製造に50億~300億ユーロ、スタートアップ支援に2年間で20億~40億ユーロなどの支出計画があるという。
Two-year 15GW renewable auction push to fuel EU pandemic recovery – leak(PV Tech 2020/05/26)
CO2回収貯留技術による石炭火力発電はゾンビか
米国ニューメキシコ州のサンファン石炭火力発電所では、CO2回収貯留(CCS)を計画しているが、現状でも太陽光発電のコストを上回っており、2022年には発電所が廃止される可能性が高まっている。
サンファン発電所は、付近の油田で原油回収のため、排出されたCO2を注入することを計画している。しかし、2018年および2019年の発電コストは平均44.9ドル/MWhとなっている。これに対し、近年、ニューメキシコ州やテキサス州に建設された太陽光発電では、発電のみで15ドル/MWh、蓄電池を併設した場合でも約30ドル/MWhとなっている。一方、電力取引市場での価格は、平均26.58ドル/MWhとなっている。
さらに、CCSの計画も、当初の600万m3から200万m3に制限される可能性があるという。
サンファン発電所は2022年に廃止されるか売却されることとなっているが、現状では廃止の可能性が高い。CCSの見通しもなく、ゾンビとなっている。
Another nail in the San Juan zombie carbon-capture coffin(IEEFA:2020/05/27)
ドイツのエネルギー小売会社がE.ONとRWEの合併阻止の法的措置を開始
ドイツのエネルギー小売会社Naturstromは、他10社とともに、欧州委員会の承認に対する訴訟を欧州裁判所に開始した。この提訴された承認とはドイツRWEが同じくドイツE.ONの再生可能エネルギーを含む発電事業の買収に対するものだ。
Naturstromは、RWEとE.ONの市場がそれぞれ分割されないまま(統合する)ことは、ドイツや欧州全体のエネルギー市場における公正な競争という目標を放棄することだと主張している。
Naturstromは1998年に設立され、「環境に有害な発電所を持つ古い独占体制と戦ってきた」会社だと自ら述べている。
オーストラリア損害保険会社が脱炭素を推進 一般炭関連資産の売却を完了
オーストラリアの損害保険会社QBEは、新型コロナウイルス感染拡大による経済危機の後、環境などへの投資が増加していることを受け、火力発電用の石炭(一般炭)に関連した債券などの資産を売却し、その他の化石燃料関連についても投資を削減していくという。
QBEは350億オーストラリアドルの資産を運用しているが、最高投資責任者のGary Brader氏は「一般炭のように今後価値を失う試算には興味がない」と語っている。
オーストラリア責任投資協会は、2020年6月1日に、環境など社会的インパクトのある投資が過去2年間で60億オーストラリアドル以下だったものが、200億オーストラリアドル程度にまで増加しており、QBEの判断はこれに裏付けられたものとなっている。
Australian insurer QBE completes divestment from thermal coal sector(IEEFA:2020/06/02)
セントヘレナ島でマイクログリッドPPA
多国籍貿易会社Trafigura Group傘下の再生可能エネルギー投資会社Pash Globalは、南大西洋にある英国領セントヘレナ島における25年間のPPA(電力販売契約)に署名した。
事業は、2.7MWの風力発電、0.5MW太陽光発電、3.5MWh電力貯蔵を組み合わせたマイクログリッドPPAとなる。
Pash Globalによると、再エネの導入によって、セントヘレナ島は英国領で最も環境にやさしい島になるという。また、CO2削減量は15万トン以上となり、再エネによる安定した電力供給というユニークな事業でもあるという。
PPA signed for solar-wind-storage microgrid on Saint Helena (PV Magazine:2020/06/02)
地熱発電所適地のグローバルマップを公表
Institute of Information Science and Technologies(Cnr-Isti)とInstitute of Geosciences and Georesources(Cnr-Igg)が共同で、高効率の地熱発電所の設置に適した地域を示す世界地図を作製した。
地熱は再生可能エネルギーとして世界各地で利用されているが、実際に発電所建設の適地かどうかは、掘削などを含む調査が必要とされ、世界規模での調査は行われてこなかった。
今回は、Cnr-IstiとCnr-Iggのそれぞれの研究者により、50kmのメッシュで、地熱発電所の適地かどうかを示したものとなっている。評価にあたっては、地震の可能性、高度、堆積物の厚さ、および気温などを組み合わせた上で、人工知能(AI)によるモデルが使われており、その評価が地図に落とし込まれたものとなっている。
公表された地図と作成プロセスは、Cnr-Isti D4Scienceプラットフォームで無料で利用できる。
Global map to identify areas suitable for geothermal power plants(Think Geoenergy:2020/06/03)
(Text:本橋恵一)