筆者は普段、IT技術やそれに関わる製造技術、経営などのジャンルを中心に執筆している。その中では他のジャンルと同様、エネルギー消費とCO2の削減がテーマになることが増えている。今回より定期的に、IT/製造からみたエネルギーについてコラムを書いていく。初回の題材は「クラウド」だ。
アマゾンの世界に対する影響力は言うまでもない。一方、アマゾンのビジネスは通販だけではなく多岐にわたる。中でも収益源として大きいのがクラウドインフラ事業のAmazon Web Service(AWS)だ。アマゾンの事業領域の中でも、AWSはCO2削減への具体策を明確にしている部門の一つだ。その取り組みをインタビューと共に紹介する。
CO2削減のために消費エネルギーをどう削減するのか? そのために企業ができることとして、ITプラットフォーマーが推進しているのが「パブリッククラウドへの移行」だ。
アマゾン傘下でクラウドインフラ事業最大手のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、第三者機関の調査による、「クラウド移行によるCO2排出削減効果」について試算を公開した。
今回の調査はアジア太平洋地域(APAC)を対象としたものだが、クラウド移行によってCO2排出量は「最大78%の削減が可能」だとしており、その効果は大きいように見える。では、AWSとしてはどうやって「クラウドで消費電力を下げている」のだろうか? AWSのアジア太平洋地域兼日本担当エネルギー政策責任者、ケン・ハイグ氏に聞いた。
AWSのアジア太平洋地域兼日本担当エネルギー政策責任者、ケン・ハイグ氏。取材はオンラインインタビューで、8月末に行われた。
まず前提として、前述のレポートについて解説しておこう。このレポートはAWSの依頼により、第三者機関であるアメリカのテクノロジー関連調査会社「451 Research」がまとめたものだ。
調査対象は、オーストラリア・インド・日本・シンガポール・韓国の5ヶ国で売上高1,000万〜10億ドルの企業515社への聞き取りの形で行われている。
主にターゲットとなったのは、企業側が独自に物理的サーバー群を用意するITシステム(企業側が自分で設備を用意して運用する形態を、俗にオンプレミスという)を、AWSのようなクラウドインフラ提供事業者が運営する「パブリッククラウド」に置き換えた場合のCO2排出量の変化だ。
ポイントになっているのは「集約によるサーバーのエネルギー利用効率の向上」だ。同調査では、パブリッククラウド利用時にはオンプレミスに比べエネルギー利用効率が5倍以上になるのでその分電力消費が下がり、結果としてCO2削減になる・・・・・・というロジックになっている。
451 Researchによる調査結果。APACの場合、サーバーをオンプレミスからパブリッククラウドに移行することで、最大78%のCO2削減効果が見込めるという。
その根拠となっているのは、「新しい技術ほど同じ処理における電力使用効率は上がる」という点だ。
AWSは積極的に新しい技術を導入している。顧客がより高い処理を求める、ということもあるが、AWS自身の経営効率向上にも、新しい技術の導入が有利である、という事情がある。
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