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環境価値とRE100その2 グリーン電力証書の課題と将来

環境価値とRE100その2 グリーン電力証書の課題と将来

EnergyShift編集部
2020/04/30

エネルギーに関連する環境価値として取引されているもののひとつに「グリーン電力証書」がある。「J-クレジット」や「非化石証書」よりも先行して2000年にスタートしたしくみだ。
再生可能エネルギーによって発電された電気の環境価値を証書化したものだが、他と違ったどのような特長があるのか。また証書化するプロセスはどうなっているのか。今回はこの「グリーン電力証書」について解説する。

電気と環境価値を分けるという発想

グリーン電力証書を取り扱う国内初の会社である「日本自然エネルギー株式会社」が東京電力(当時)などによって設立されたのは、2000年11月だ。この会社が設立されるまでに、実はさまざまな紆余曲折があった。

発端となったのは、ソニーが東京電力に対し、風力発電の電気の供給を打診したことによる。1990年代当時から、地球環境問題、気候変動問題に積極的に取り組んできたソニーだが、使用する電気を再エネ化することは簡単ではなかった。当時、欧米にはすでに、再エネ由来のグリーン電力を直接供給するメニューが存在していた。というよりも、特に米国の電力小売り自由化でスイッチングのきっかけとなっていたのが、グリーンコンシューマーのニーズだった。

しかし日本では、電力の部分自由化が始まる前であると同時に、何よりも変動する再生可能エネルギーの電気と特定の需要を一致させることに限界があった。夜間は太陽光発電の電気が使えず、風が弱ければ風力発電の電気が使えない。

さまざまな検討を重ねた結果たどりついたのが、電気そのものと環境価値を分離して、環境価値を証書化し提供する、という方法だった。

例えば、風力発電所で1万kWhが発電されたとする。この発電した電気はそのまま電力会社を通じて電気を販売する一方、CO2を排出しないなどの1万kWh分の環境価値はそれとは別に、需要家に販売する。 このしくみにより、需要家は、1万kWhの電気を、風力発電の発電した時間帯に関係なく、風力発電の電気とみなして使用することができる。

こうした事業を行うために、日本自然エネルギーが設立されたが、ソニーはあくまで顧客という立場をとり、事業には参画しなかった。

証書として認証するにあたっては、第三者認証機関として2001年に「グリーン電力認証機構」が設立され、事務局は日本エネルギー経済研究所内に設置された。これは現在、日本品質保証機構(JQA)に移管されている。

また、その後日本自然エネルギー以外にもグリーン電力証書を発行する事業者が相次いで参入している。

グリーン電力証書のしくみ

グリーン電力証書の概要については、JQAがまとめた資料がわかりやすい。

ここでは、簡単にグリーン電力証書が提供されるまでの流れを示しておく。

図は、制度の概要を示したものだ。中心にあるのは、「グリーン電力証書発行事業者」だ。また、第三者機関は現在、JQAがその役割を担っている。

JQAの資料をもとに作成

グリーン電力を扱うのに最初に必要なことは、グリーン電力証書発行事業者としてJQAに届け出ることだ。次に、グリーン電力発電所の設備認定が行われる。グリーン電力として適格かどうか、そして電力量が正しく計量できるかがJQAにより審査される。

認定された設備からは、ほぼ毎月、グリーン電力量が計量され、これを証書事業者がJQAに申請し、認証を受ける。

証書発行事業者は認証されたグリーン電力量の範囲内で、グリーン電力証書を発行し、グリーン電力の需要家に提供する。一方、グリーン電力証書がどこに提供されたのかについても、JQAに報告する。

JQAの役割は、設備認定、グリーン電力量認定、そして環境価値の保有者の管理、ということになる。こうしたしくみを通じて、グリーン電力証書の環境価値が担保される。

発電された電気は、環境価値とは別にグリーン電力事業者が販売、ないしは自家消費する。グリーン電力証書を購入した需要家は電力会社から購入した通常の電気と組み合わせて、グリーン電力として使用する。

お酒に例えると、ホッピーのようなノンアルコールビールに焼酎をまぜて第三のビールにすることに似ている。

グリーン電力証書の課題、追加性と供給量

グリーン電力証書は、現在も続いているしくみだが、課題はある。

グリーン電力証書の事業モデルは、再エネ発電所を建設し、電気とは別に環境価値を提供するというものだった。そのため、グリーン電力証書向けの風力発電所が何ヶ所かつくられている。

しかし2003年から施行されたRPS制度(電力会社に再エネ発電を義務付ける制度)は、グリーン電力証書の存在を危うくするものだった。

グリーン電力証書の環境価値は、1kWhあたり2円程度でスタートした。しかし、RPS制度に基づく環境価値、いわゆるRPSクレジットは、1kWhあたり7円程度という評価だ。したがって、グリーン電力証書の環境価値も同じ価格に値上げせざるをえなくなってくる。しかし、もとが2円の環境価値に7円も支払う需要家は限られる。それでも、RPSクレジットの一部をグリーン電力証書化したケースはある。

そこで証書発行事業者は方針を転換した。再エネによる自家用発電設備の環境価値の証書化に取り組んだのだ。
製材工場の木質バイオマス発電、製糖工場のサトウキビバガス発電*、下水処理場の汚泥バイオマス発電などだ。こうした自家発電設備は、そもそも環境価値を売らなくても稼働していたものなので、安価な環境価値として提供可能だ。実際に、現在のグリーン電力証書の環境価値の供給元は、主に自家消費の再エネ発電になっている。

しかし、自家発電設備の場合、グリーン電力の発電設備として認定するためには、厳しい要件がある。それが「追加性」だ。

例えば、製材工場の木質バイオマス発電が経費節減のために使われており、もともと事業性があったとする。このとき、環境価値を外部に販売したとしても、木質バイオマス発電が増えるわけではない。つまり、CO2排出削減量が増えるわけではない。逆に、環境価値を販売することで、木質バイオマス発電の稼働率を上げることができれば、CO2排出削減が進むので、追加性がある

筆者が知る限り、第三者認証機関が日本エネルギー経済研究所にあった時代は、こうした点が厳しく審査されていた(現状については不明だが)。しかし、こうした追加性は、需要家がCO2排出削減をアピールする場合にも、その説得性にかかわることなので、注意が必要だ。

グリーン電力証書は、追加性以外にも、もうひとつ、課題を抱えている。それは、供給量だ。

再エネの自家発電には限りがある。これがそのまま、グリーン電力証書の供給量としての限界となる。ただ近年では、PPAなどの方式で、太陽光発電などの自家消費が拡大している。こうした設備の環境価値をグリーン電力証書化する動きも進んでいる。

  • * サトウキビバガス発電 サトウキビの搾った残りの表皮・繊維「バガス」をボイラー燃料として使った発電のこと

グリーン電力証書は利便性が高く、使いやすい

グリーン電力証書は事業者にとって、比較的使いやすいしくみとなっている。

事業所の消費電力量に対応したグリーン電力証書を購入することで、事業所の電気をすべて再エネにしたものと見なすことができる。また、グリーン電力証書は発電設備に紐づいているので、どこの発電所のグリーン電力なのかということも、示すことができる。

事業所単位だけではなく、イベント単位、製品単位での利用も可能だ。例えば、イルミネーションで使う消費電力量に応じてグリーン電力証書を購入することで、再エネによるイルミネーションにできる。製品の製造過程で消費する電力量に対応させることもできる。グリーン電力で製造されたタオルやビール、Tシャツ、新聞などがある。乾電池型充電池の電気を再エネ化しているというケースもある。

グリーン電力証書のもうひとつの使いやすさは、証書発行事業者ごとに決めている、ブランドマークの利用だ。このマークを製品に付けることで、再エネ利用をアピールすることができる。

グリーン電力証書のブランドマーク例(日本自然エネルギー(株)ウェブサイトより)

また、グリーン電力証書と一般的な電気を組み合わせ、グリーン電力として販売している事業者もある。

一方、カーボンオフセットの手段としては、魅力に欠ける点もある。CO2排出削減のコストとしては、決して安くない。近年でも7円程度の価格となっている。これはCO2排出権にすると、1万円/トン程度となり、J-クレジット(1,850円/t-CO2**)などよりはるかに高い。

もっとも、そこには、CO2排出削減だけではなく、国産エネルギーという価値や、ブランド価値も含まれていると考えていい。

グリーン電力証書の今後だが、他の環境価値にあわせて、グリーン電力証書の価格は下がっていくのではないだろうか。同時に、PPAなどの普及で供給しやすくなる可能性もある。
その一方で、再エネに対するニーズは高まっており、再エネ自家発電の環境価値を手放さない事業者も多いのではないだろうか。将来的にもグリーン電力証書は、その使い勝手の良さからある程度残っていくかもしれない。

  • ** 2020年1月6日から1月10日までの期間に実施されたクレジット入札の中央値(税抜き)

(Text:本橋恵一)

参照

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