元々、東芝が採用してきたペロブスカイト層の成膜法は、2ステッププロセスと呼ばれる手法で、基板上にPbI2を塗って膜を形成、その上に、MAIインクというものを塗布することでMAPbI3膜というのを成膜するという工法を取っていた。
ただ、この手法では、①PbI2とMAIの反応を制御することが難しく未反応物が残る、②工程数が多い、③塗布速度が低速である、などの欠点があり、より量産に適した手法が求められていた。
そこで、東芝は予めMAIとPbI2を混合したMAPbI3インクを塗布して成膜し、1ステップにすればいいのではないか、と試してみるものの、このプロセスだと、MAPbI3結晶の成長を制御することが難しく、特に大面積に均一に塗布するのが困難という欠点があり、新たな塗布法の開発が必要となっていた。
今回、どんなブレークスルーが起きたのか。塗布法、つまり塗り方のイノベーションが起きた。
その手法が1ステップメニスカス塗布法。
この手法の下、新たにMAPbI3インク、乾燥プロセス、装置の開発を行うことで、大面積を均一に塗布することに東芝は成功した。
その結果、成膜プロセスの工程が従来の半分となり、さらに、塗布速度の高速化が可能になる。塗布速度においては、5cm角で量産時に必要と想定するスペックを満たす速度6m/分を達成。また、均一に塗布することが可能となり、これによってフィルム型ペロブスカイト太陽電池として、世界最大面積である703cm2のモジュールで世界最高エネルギー変換効率15.1%を達成するに至った。
このメニスカス塗布法によって、エネルギー変換効率の向上だけでなく、生産プロセスの高速化の両立が可能となり、日本が、いや世界が待ちわびている高効率かつ低コストなフィルム型ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて大きく前進した。
ちなみに、耐用年数は10年とされているのだが、東芝は15年に伸ばすことを目指しており、また変換効率も18%まで引き上げることをにらんでおり、それらを達成しながら、2025年にはこのペロブスカイト太陽電池を量産していく考えとのこと。
元々、低コストな太陽電池という特性もあり、本当に日本の脱炭素の救世主になるかもしれない。
それでは次に、これが社会実装されると何が凄いのかを解説したい。
ペロブスカイト太陽電池が社会実装されると何が凄いのか・・・次ページへ
エネルギーの最新記事