2050年に市場規模40兆円の鉄鋼業界の脱炭素 日本製鉄、神戸製鋼が挑む奥の手とは 水素まとめその4 | EnergyShift

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2050年に市場規模40兆円の鉄鋼業界の脱炭素 日本製鉄、神戸製鋼が挑む奥の手とは 水素まとめその4

2021年12月06日

鉄鋼業界の脱炭素化に立ちはだかる壁

なぜ、鉄鋼業界の脱炭素化が難しいのか。その理由は製鉄技術の「高炉法」にある。

鉄は酸化した鉄鉱石として存在している。この鉄鉱石から鉄を取り出すには、酸素(酸化)を除去する「還元」が必要だ。「還元」をするために使うのが石炭(炭素)であり、炭素が鉄鉱石の酸素を奪い取ることで鉄をつくる「高炉法」は不変の製鉄法とされ300年以上の歴史を持つ。日本の粗鋼生産の70%が高炉法から生産されており、製鉄技術の根幹でもある。

しかし、この高炉法、炭素と酸素が結びつくことでCO2を発生してしまうという大きな課題を抱える。その排出量は、1トンの鉄をつくるのに約2トンのCO2を出すため、高炉法からの転換を図らなければ、日本は脱炭素を実現できないとさえいわれている。

脱炭素のカギを握るのが水素だ。

石炭に代わって、水素が鉄鉱石に含まれる酸素を除去できれば、発生するのは水だけになる。「水素還元製鉄法」と呼ばれる技術が世界中で注目を集めている。IEA(国際エネルギー機関)は、製造工程で排出されるCO2が実質ゼロである「ゼロカーボンスチール」市場が2050年に約5億トンになると予測。2070年にはほぼすべてがゼロカーボンスチールにとって代わるという。

日本政府も2050年までに40兆円規模のゼロカーボンスチール市場が立ち上がると予想する。さらに水素還元製鉄によって、国内水素需要は約700万トンに拡大すると見込む。現在の水素需要が200トンしかないだけに、その3.5万倍もの増加だ。

今、水素還元製鉄の技術を確立させようと世界中の鉄鋼メーカーが競い競う中、世界をリードするのが日本の3社である。

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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