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2050年に市場規模40兆円の鉄鋼業界の脱炭素 日本製鉄、神戸製鋼が挑む奥の手とは 水素まとめその4

2021年12月06日

国内最大手、日本製鉄の奥の手とは

2008年から日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼などが共同で研究開発を進めており、COURSE50(CO2 Ultimate Reduction System for Cool Earth 50)と呼ばれるプロジェクトでは、コークスと水素の両方を使う方法で、世界で初めてCO2排出量の10%削減に成功した。

3社は、COURSE50の先に「Super COURSE50」と呼ばれる革新的な技術も開発中だ。

COURSE50は製鉄所内で発生する水素を利用して、高炉に直接水素を吹き込む還元法だが、Super COURSE50は、外部から水素を調達し水素投入量を増やし、より大規模な水素還元をおこなおうというもの。

COURSEプロジェクトに参画する日本製鉄では、Super COURSE50の実機化および、シャフト炉の開発などにより100%水素直接還元プロセスを完成させることで、極限までのCO2削減を目指している。さらに高炉の排ガスから分離・回収したCO2と水素を反応させてメタンを生成し、それを高炉に吹き込んで還元剤として活用する「カーボンリサイクル」などもおこなう計画だ。

同社は鉄スクラップを再び溶かし、高級鋼を製造する大型電炉の開発も進めている。電炉法は、還元プロセスを終えた鉄スクラップを電気で溶かして鉄鋼製品をつくるため、高炉法に比べてCO2排出量が4分の1になるとされている。ただし、不純物の少ない高品質のスクラップの量には限りがあり、品質の低いスクラップからでも高級鋼をつくれる製法の確立が欠かせない。日本製鉄はこうした技術開発にも取り組む。

日本製鉄にはもうひとつ奥の手がある。

欧州子会社のオバコ(OVAKO)社が、2020年4月にスウェーデンのホーフォーシュ(Hofors)工場において、LPガスに代わって、水素による圧延前鋼材加熱の実証を世界ではじめて成功させた。この技術が実用化されれば、鋼片の加熱工程におけるCO2排出をゼロにできる可能性があるという。2021年6月には安価で大量のグリーン水素の調達に向け、工場内に再エネ電力による水の電気分解から毎時3,500m3のグリーン水素を製造する水素プラントの建設に着手しはじめた。


Ovako Hofors工場
出典:日本製鉄グループ、山陽特殊製鋼

日本製鉄は、水素還元製鉄や電炉、鉄鉱石の一部を直接還元鉄で代替するなど、あらゆる技術を最大限活用したうえで、なお排出されるCO2は回収し、貯蔵したり、利用するCCUS技術によって、脱炭素を目指す方針だ。

世界を狙う神戸製鋼のアプローチとは・・・

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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