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2050年に市場規模40兆円の鉄鋼業界の脱炭素 日本製鉄、神戸製鋼が挑む奥の手とは 水素まとめその4

2021年12月06日

神戸製鋼は違ったアプローチで世界を狙う

天然ガスに含まれる炭素と水素を使う「直接還元法」で世界をリードするのが、神戸製鋼だ。

直接還元法は、天然ガスを使用して鉄鉱石を固体のまま還元し、そのあとで電炉に移して溶解する方法である。石炭を使わないため、高炉よりもCO2の発生が低いうえ、還元に水素を使うことで20〜40%のCO2削減が可能だという。近年は高炉や転炉でも採用されつつある。


出典:神戸製鋼所

神戸製鋼の米子会社ミドレックス(Midrex Technologies)は、天然ガスを0〜100%まで置換できるなど、直接還元法の製造プロセスで高い技術を持っており、90基を超える直接還元プラントの供給実績を持つトップメーカーだ。2020年度にはミドレックスプラントにより、約2,932万トンのCO2排出を削減できたとする。この削減量は日本の総排出量の約2%に相当する。

2021年に入っても、プラント受注は好調で、ロシアの鉄鋼大手メタロインベスト社から世界最大となる年産208万トンのプラントを受注。ロシア向けは2021年3月に続く2基目だ。

2019年には世界最大手の1社、アルセロール・ミッタル社と提携し、年産10万トンの100%水素還元の大規模実証に取り組む予定だ。ただし、現状は天然ガス価格が安い中近東や北米、ロシア、北アフリカなどが売り込み先の中心で、天然ガス価格が高い日本での導入はハードルが高いのが実情だ。

一方、世界中で注目を集める水素還元製鉄は、水素が熱を吸収するため高炉内が冷えて、鉄鉱石が思うように溶けないといった課題がある。だが、ミドレックスプラントであれば、すでに水素濃度75%の還元ガスでの商業実績もあり、「100%水素還元は技術的ハードルが高くない」(神戸製鋼)という。神戸製鋼は電炉向け需要に加え、今後は高炉や転炉での利用拡大を狙う。「直接還元鉄生産量は右肩上がりに増加し、2050年には4~6億トン/年へ増加見込み」といった独自試算を公表するなど、脱炭素の潮流に乗り、ミドレックスの事業拡大を目指す方針だ。

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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