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全労連に訊く、脱炭素でうまれる深刻な雇用問題 解決する術はあるか シリーズ:雇用とカーボンニュートラル(1)後編

2021年12月17日

全労連のSDGsへの取り組み

―「労働者が誇りをもつ」という話がありました。SDGsやESG投資が加速し、「E(環境)」が注目されるようになってきましたが、労働の安全が含まれる「S(社会)」への注目はいかがでしょうか。

黒澤氏:正直、まだまだ足りないですね。日本の長時間労働一つ取ってみても、日本では夜中でも煌々と事業所の電気が付いていますし、非正規労働者の方はダブルワークやトリプルワークしないと生活できないというのが現状です。こういった働き方の転換を労働組合としては社会、とりわけ企業に訴えていかなければならないと思っています。現実は長時間労働などが実態となり、労働者の健康は脇においやられている状況です。欧州のように日本は明るいうちに帰りたいですよね。

一方で、労働組合の声が社会や企業の経営者に届いていない、という点に関しては自分たちも改善すべきことがあると思いますので、これから声を大にしていきたいと思います。その上で日本も賃金の引上げを実現することが必要です。


黒澤氏

―しかしこの20年間、OECD諸国の中で日本だけが平均賃金が1割も減少し、現在では最下位グループにあります。

黒澤氏:その通りです。日本の平均賃金はアメリカの55%ほどしかありません。我々は、労働組合の根本的な役割として、賃金の引上げと長時間労働をなくしていくことについて優先して取り組むべきなのではないかと自覚しています。こうしたことは、直接的に環境問題には関連していないように見えますが、実際には気候変動対策につながっていくと考えています。

―確かに、長時間労働をなくすことでエネルギーの消費が減少し、CO2を減らすことができます。最後にこれだけは伝えておきたい、ということはありますか。

竹下氏:エネルギーが転換され、雇用も転換される際に、雇用の「質」も転換していくということが重要ということです。ILOは「全ての人にディーセント・ワーク - Decent Work for All- 」の実現を目指して活動を展開しています。

ディーセント・ワークとは、「働きがいのある人間らしい仕事」という意味ですが、我々は、新しい産業、つまりエネルギー転換がディーセント・ワークに貢献すると考えています。低賃金、長時間労働に依存した産業労働から、エネルギー政策という新しい産業でディーセント・ワークが実現することを労働組合として推進していくべきだと考えています。

そして、全労連としては持続可能な地域づくりを進めるため、地域住民との合意を図り、地域内経済循環と雇用の創出を再エネの活用で実現していきたいと思います。

 

(Interview:本橋恵一、Text & Photo:東條英里)

竹下武 黒澤幸一
竹下武 黒澤幸一

竹下 武(左) 1966年生まれ。生協労連出身。2018年から全労連常任幹事。 黒澤幸一(右) 1966年生まれ。日本医労連出身。2020年から全労連事務局長。

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