太陽光発電の適地が年々減少する中、道路舗装大手などは道路でも発電しようと「路面型太陽光発電」の技術開発を加速させている。日本全国に張り巡らされた道路に設置できれば、原発330基分に相当する発電量を稼ぐことができるという。脱炭素が一気に進む可能性を秘める一方、普及に向けては道路法の改正など課題も多い。車両や歩行者が通行する道路本来の機能を阻害せずに、太陽光発電を導入することは可能なのか。
太陽光路面発電パネルなどを開発するMIRAI-LABO(ミライラボ)は2月16日、駐車場への太陽光パネルの実装に向け、東京建物グループの日本パーキングと資本業務提携を締結した。日本パーキングはMIRAI-LABOに4,800万円出資し、同社が運営する時間貸し駐車場の通路に太陽光パネルを導入、発電した電気をリユースEVバッテリーに貯めて、精算機や照明などに使うことで、駐車場の脱炭素を目指す。
2022年春から八王子市内の駐車場2ヶ所に導入し、安全性や発電効率などの実証実験をおこなったうえで、2030年までに日本パーキングが所有する全国1,861ヶ所の駐車場に実装する計画だ。
MIRAI-LABOは道路舗装最大手のNIPPOと共同で太陽光パネルを特殊なプラスチックで覆った太陽光路面発電パネルの開発に取り組んできた。2018年11月よりNIPPO総合技術センター敷地内に縦・横1メートルの太陽光パネル20枚をアスファルト舗装の上に敷き詰め、耐久性や発電性能などの検証を開始。2022年にも実用化する方針を掲げている。
太陽光路面発電のシステム概要
出典:MIRAI -LABO
2020年10月には、NIPPOの親会社であるENEOSホールディングスと資本提携を結び、5億円を調達した。ENEOSが建設を目指すEV(電気自動車)や電動バイク向けバッテリー交換ステーション内に太陽光路面発電パネルを貼り付け、地下にリユースEVバッテリーを備えることで、バッテリー充電や照明などステーションで使う電力をまかなう考えだ。2022年からの5年間で自律型バッテリー交換ステーションを全国1万5,000ヶ所への展開を目指している。
自律型バッテリーステーションのイメージ
出典:ENEOSホールディングス&MIRAI-LABO
MIRAI-LABOは2022年に入ってからも矢継ぎ早に資本提携を締結している。
東京センチュリーや物流会社のセンコーグループホールディングス、農林業機械大手のやまびこから合計14億円の出資を受けた。各社が路面型太陽光発電に触手を伸ばすのは高い導入ポテンシャルにある。MIRAI-LABOによると、日本の道路面積は約77万ヘクタールあり、そのすべてに太陽光路面発電パネルを設置すると、発電量は約335.8GW。柏崎刈羽原発7基すべての発電量である8.2GWの40倍以上に相当するという。
国土の約7割が森林である日本では太陽光発電の適地は減少する一方だ。だが、新たな導入場所として道路に設置すれば膨大な再エネが利用可能となる。さらに道路の下に送電設備を設置すれば、充電することなくEVを走行させることが可能になるかもしれない。太陽光路面発電はワイヤレス給電の電源として活用できる、と期待が膨らむ。
路面型太陽光発電をめぐっては、道路舗装大手の東亜道路工業が2021年、太陽光発電舗装システムを開発するフランスのコラス社と提携し、日本での普及に向け技術開発に共同で取り組む。
コラス社は2019年、縦0.69メートル、横1.25メートル、厚さ6ミリのパネルを商用化。フランスの車道や歩道など約30ヶ所に設置し、街灯や防犯カメラ、EV充電スタンド、スーパーなどに電力を供給するほか、オランダやアメリカなど約10の国や地域で展開中だ。2021年7月には、東亜道路工業の本社ビルに太陽光発電舗装システムを設置、高温多湿な日本の環境に適応した材料開発を共同で進めており、2023年からの本格普及を目指している。
大成建設グループの大成ロテックも路面型太陽光発電の研究・開発を進めており、2022年1月福岡市の商業施設内に試験設置し、発電性能や耐久性などの確認をおこなった。
大成ロテックが福岡市内に試験設置した路面型太陽光発電
出典:長州産業
大林組グループの大林道路も路面に設置できる太陽光パネルの開発を進めている。パネル表面を覆う強化ガラスには文字やQRコードを表示でき、足元灯のほかイルミネーションとしても利用可能だ。もちろん、電気を貯めれば、街灯や散水設備の電源としても使える。
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