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適地が減少している太陽光発電に救世主?! 導入ポテンシャルは原発330基分 道路舗装大手で開発進む太陽光“路面”発電の普及のカギとは

2022年03月07日

路面型太陽光発電をめぐる5つの課題とは

だが、普及に向けては課題が多い。

技術開発は進展しているものの、そもそも日本の道路法では路面型太陽光発電の公道設置は認められていない。そのため各社は舗装材としての耐久性に問題がないことを確認したうえで、私有地での実証実験を重ねている。だが、本格的な社会実証に向けては公道での実証検証、そして道路法の改正が欠かせない。法整備を求める機運が高まる中、国土交通省などは公道設置に向けた制度見直しを本格化させた。

国交省が指摘する路面型太陽光発電の課題は5つある。

国交省が指摘する路面型太陽光発電の課題
車両や歩行者が安全に通行できる道路本来の機能を阻害しないか
発電効率が悪く費用対効果が低い可能性
上下水道管やガス管などが道路に埋設されている場合、メンテナンス工事などの対応がきちんとできるか
発電と需要の時間的なミスマッチ
定期的な点検、破損時の早急な修繕など維持管理体制を構築できるのか

車両や歩行者が安全に通行できる道路本来の機能を阻害せず、導入できるかがまずひとつ。車両の荷重、気温や降雨などの自然環境などへの耐久性や安全性など、設置に際しては、道路法の技術基準に適合していることが大前提となる。

次に発電効率が悪く費用対効果が低い可能性を指摘する。

路面に設置するため、車両や建物に日光が遮られてしまう。さらに設置コストも課題だ。太陽光パネルを路面に設置するにはアスファルトの表面を削るといった工事が必要になる。大林道路が2020年、東京都の実証事業の一環で東京ビッグサイトに設置した際のコストは1枚あたり約230万円にのぼった。一方、住宅用太陽光発電のシステム費用は平均で1kWあたり28万円である。大林道路は、すべてのパネルに意匠性を凝らしたため通常よりも割高になったとするが、それらを差し引いたとしてもまだまだ高い。メンテナンスに関しても、一般的な太陽光発電よりもコストや手間がかかる可能性がある

3つ目が上下水道管やガス管、通信ケーブルなどが道路に埋設されている場合、メンテナンス工事などの対応がきちんとできるのか。4つ目が発電と需要の時間的なミスマッチである。日中に発電した電気を夜間の道路照明に使用するにはバッテリーの導入が欠かせない。道路管理における電力消費量約3,060GWh/年のうち、約1,900GWhが夜間の消費電力だ。1,900GWhの電力を供給しようとすれば、大規模なバッテリー導入が必要となるが、国交省は非現実的だと否定的だ。

5つ目が道路交通への支障が生じないよう、路面型太陽光発電の定期的な点検、破損時の早急な修繕など、道路舗装各社は維持管理体制を構築できるのか。

国交省では、まずは道路本来の役割、機能を阻害せず、設置する条件とはどういったものなのか。車道における試験導入などを通じて、把握していく方針だ。さまざまな検証をおこなったうえで、法改正や技術基準の検討、さらに道路への再エネ導入目標などの策定を進めていく。早ければ今年6月ごろに何らかの方針を示す考えだ。

乗り越えなければならない課題は多い。しかし、路面型太陽光発電は脱炭素を実現しうる技術のひとつであり、研究開発も加速しつつある。本格的な社会実装に向けては政府によるさらなる後押しが欠かせない。

 

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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