まず、大手10電力中4社で燃料制約が発生している、という事態の解説から始めよう。
先ほども述べたように、電力事情が悪化している大手4社とは、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力の4社だ。各社ともその原因は、相次ぐ石炭火力発電設備の故障と気温上昇による需要増といわれているが、石炭火力の故障と聞いて思い浮かぶものはないだろうか。そう、冒頭でも述べた中国の電力危機だ。
中国と同様に、発電資源における石炭の比率が高い日本において、石炭に有事が起こると、このようなリスクが生じる。この流れも、非常に中国と似た状況になっている。とはいえ、中国が石炭の価格高騰など、外部要因による部分が大きかったのに対して、今回の日本のケースは内部要因によるものというのが、大きな違いだ。
では、その内部要因とはどういったものだったのか。北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力の4電力においては、いずれも複数の石炭火力発電所で故障が発生したうえ、10月の気温が高くて冷房使用の増加が重なっていた。その結果、LNGの消費量が増加し、在庫切れに陥る可能性が生じたため、11月4日から10日にかけてLNG火力や石油火力の出力を大幅に落としたという流れになっている。
燃料制約は、中国電力で11月30日までにLNG235.5万kW、石油125万kW、九州電力は11月26日までにLNG262.5万kW、北陸電力は11月22日までにLNG42.4万kW、四国電力は12月20日までにLNG64.6万kW、石油68万kW(11月30日まで)となる見通し。四国電力の燃料制約は12月以降も続く見通しだ。
出典:meti
これらの状況に対して、各社とも、手をこまねいているわけではない。LNGの調達について、中国電力は売主と供給数量の積み増しや配船日の前倒しなどについて協議を行い、九州電力は12月上旬に追加の船1隻を手配済みだという。
しかし、北陸電力と四国電力は調達が難航している。北陸電力はLNGタンクが1基しかないうえに、発電所のある港には橋がかかっているため、入港可能な船が限定されて追加調達が困難だという。同様にタンクを1基しか持たない四国電力も、追加調達は難しい状況だ。
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