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日本も電力危機の恐れあり この冬を果たして乗り切れるのか?

2021年12月03日

LNGの在庫とこの冬の見通しは

次は、こうしたLNGの追加調達が難しい状況にあって、最も気になるであろう②LNGの在庫とこの冬の見通しについて解説していく。

さて、ここまでずっとLNGの制約について述べてきたが、実はその在庫量自体は別に少なくない。経産省はLNGの在庫量について、11月15日時点でおよそ220万トンと、昨年同時期と比べ約60万トン多く、過去5年でもっとも高い水準だと公表しているほどだ。

では、なぜ燃料制約が叫ばれているのか。

実はこの冬の電力需給の見通しは、全国7つのエリアでの、ピーク時の需要に対する電力供給の余力を示す数値が3%台しかないとされており、これは過去10年間でもっとも厳しくなる見込みだ。厳しい冬を想定した場合、2022年2月の供給余力(予備率)は、東京電力管内で3.1%と3%ギリギリになっているほか、中部や関西、九州など7つのエリアで3.9%と、極めて厳しい状況になるという。

こうした事情から、政府では電力4社に対し、この冬に備えLNGの確保を求めるとともに、燃料在庫のモニタリング強化などを急いだというわけだ。

しかし、政府が確保を求めようとも、LNGはすぐに調達ができないという特徴があることは述べたばかりだ。LNGは今、追加調達をかけても届くのが最速で2ヶ月先となり、さらには石油のような備蓄も難しい、という難点もある。

現在の日本では、震災以降多くの老朽火力を稼働させている。それら多くの老朽火力を抱える中で今回のような発電所トラブルが重なれば、突発的にLNG消費量が増える。そして、在庫切れ回避から、その出力を落とさざるをえない事態に陥ってしまう、という構造が見えてくるのだ。

そうしたこともあり、市場からは「今冬の電力需給は本当に大丈夫なのか」と危惧する声があがっている。

実際、中国電力は今後について「大型石炭火力の脱落は長いもので1ヶ月近くかかる。その間、LNGの燃料消費が進むので、当然、次の配船まで燃料がもたないということは基本的にありえる」と述べるにとどめ、今後の不安を払拭できていない。さらに、九州電力に至っては「2020年12月から2021年1月にかけて2基のLNG火力で燃料制約をかけた。また2017年12月末、そして2012年2月にも燃料制約をかけた」と過去にも発生していたことを明らかにした。

北陸電力に関しても九州電力と同様に「消費の変動分を調整する中であった」と述べ、四国電力からは具体的な言及はなかったが、少なくとも今回、大手10電力のうち4社で燃料制約があり、過去にも数件発生していた状況が明らかとなった。

つまり、燃料制約は恒常的に発生しており、今後もその可能性があるということになるのだ。

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前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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