次は、こうしたLNGの追加調達が難しい状況にあって、最も気になるであろう②LNGの在庫とこの冬の見通しについて解説していく。
さて、ここまでずっとLNGの制約について述べてきたが、実はその在庫量自体は別に少なくない。経産省はLNGの在庫量について、11月15日時点でおよそ220万トンと、昨年同時期と比べ約60万トン多く、過去5年でもっとも高い水準だと公表しているほどだ。
では、なぜ燃料制約が叫ばれているのか。
実はこの冬の電力需給の見通しは、全国7つのエリアでの、ピーク時の需要に対する電力供給の余力を示す数値が3%台しかないとされており、これは過去10年間でもっとも厳しくなる見込みだ。厳しい冬を想定した場合、2022年2月の供給余力(予備率)は、東京電力管内で3.1%と3%ギリギリになっているほか、中部や関西、九州など7つのエリアで3.9%と、極めて厳しい状況になるという。
こうした事情から、政府では電力4社に対し、この冬に備えLNGの確保を求めるとともに、燃料在庫のモニタリング強化などを急いだというわけだ。
しかし、政府が確保を求めようとも、LNGはすぐに調達ができないという特徴があることは述べたばかりだ。LNGは今、追加調達をかけても届くのが最速で2ヶ月先となり、さらには石油のような備蓄も難しい、という難点もある。
現在の日本では、震災以降多くの老朽火力を稼働させている。それら多くの老朽火力を抱える中で今回のような発電所トラブルが重なれば、突発的にLNG消費量が増える。そして、在庫切れ回避から、その出力を落とさざるをえない事態に陥ってしまう、という構造が見えてくるのだ。
そうしたこともあり、市場からは「今冬の電力需給は本当に大丈夫なのか」と危惧する声があがっている。
実際、中国電力は今後について「大型石炭火力の脱落は長いもので1ヶ月近くかかる。その間、LNGの燃料消費が進むので、当然、次の配船まで燃料がもたないということは基本的にありえる」と述べるにとどめ、今後の不安を払拭できていない。さらに、九州電力に至っては「2020年12月から2021年1月にかけて2基のLNG火力で燃料制約をかけた。また2017年12月末、そして2012年2月にも燃料制約をかけた」と過去にも発生していたことを明らかにした。
北陸電力に関しても九州電力と同様に「消費の変動分を調整する中であった」と述べ、四国電力からは具体的な言及はなかったが、少なくとも今回、大手10電力のうち4社で燃料制約があり、過去にも数件発生していた状況が明らかとなった。
つまり、燃料制約は恒常的に発生しており、今後もその可能性があるということになるのだ。
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