京セラは、固体酸化物形燃料電池(SOFC)に関する技術に対し、科学技術と経済の会が主催する第9回「技術経営・イノベーション大賞」において、「選考委員特別賞」を受賞した。また、製品に対しても、エネファームミニとエネファームTypeSが、さまざまな団体が主催する賞において、合計7つの賞を受賞した。これに合わせ、2021年1月28日に、同社の取り組みに関するプレス向けのレクチャーがオンラインで行われた。
燃料電池は、水素(H2)と酸素(O2)を化学反応させて電気を作る発電装置で、排出物は水(H2O)だけという、クリーンな発電装置だ。現状では、エネファームなど定置型のほとんどが、天然ガスなどを改質して水素を取り出して使用しているため、CO2が排出されているが、それでも電気と熱の両方が利用できるため、エネルギー効率の高い装置となっている。
燃料電池にはさまざまなタイプがあるが、京セラでは1985年から、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の開発に取り組んできている。これは、発電効率が50%近い効率の高さが特長だ。
このSOFCの技術、および製品に対し、2020年度は7つの賞を受賞したという。下の表はその一覧だ。
京セラ資料より
レクチャーに登壇したのは、スマートエナジー事業本部SOFC事業企画部責任者の鬼丸長吾郎氏。京セラのSOFC事業におけるこれまでの取り組みと今後について、解説した。
鬼丸氏によると、京セラのスマートエナジー事業の強みは、太陽電池、蓄電池とあわせて燃料電池の3つの電池を取り扱っていることだという。
このうち燃料電池については、京セラはセラミクス製のセルスタックを供給している。
また、SOFCは、コージェネレーションとして熱利用が可能で、需要端では火力発電以上の効率を持つという。電気自動車や従来型のエネファーム(家庭用燃料電池)に使われる、固体高分子形燃料電池(PEFC)よりも高効率だ。また、政府の2030年導入目標530万台を達成できれば、530万トンのCO2、家庭分野の約3.2%が削減できる。さらに、都市ガスが供給されれば、自立運転が可能なので、災害対策にもなるということだ。
SOFCによる家庭用エネファームは2012年に、業務用のSOFCは2017年に販売を開始している。こうした中、戸建て住宅で広い設置スペースを必要とする発電容量700Wのエネファームについては、販売台数が年間4万台程度で横ばいになってきたことから、2019年に発電容量400Wのエネファームミニを開発し、東京ガスを通じて販売を開始した。これにより、設置スペースの小さい戸建て住宅と集合住宅という新たな市場ができたという。今後は、新しい市場での販売拡大をめざしていくということだ。
エネファームミニ
質疑応答では、鬼丸氏は記者の質問に対し、以下のように答えた。
エネファームミニを、東京ガス以外の販売チャネルでも提供するのかどうか、という質問に対しては、段階的に進めていくということだ。
また、海外展開については、欧州でもCO2を減らす技術として、家庭用燃料電池が注目されているとした。ただし、国によって天然ガスの成分が異なるため、海外でそのまま使うことはできず、何等かの対応が必要になってくるということだ。こうしたことから、まだ海外展開について、具体的な検討はしていないという。
技術的な点では、さらなる発電効率の向上が必須だとした。
また、販売目標などについては、公表を控えるということだ。
現在の定置型燃料電池の多くは、都市ガスを改質して水素をつくり、燃料としているため、発電効率が高くてもCO2の排出を避けられない。しかし、再生可能エネルギー由来のグリーン水素の供給が増えてくれば、高効率の発電装置として、期待が持てるのではないだろうか。
参照
京セラ:固体酸化物形燃料電池(SOFC)の研究開発技術・製品が本年度7賞を受賞
(Text:本橋恵一)
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