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GMやフォードがかつて撤退したインド市場を、テスラは掌握できるか 

GMやフォードがかつて撤退したインド市場を、テスラは掌握できるか 

2021/03/16

2020年のテスラは、生産台数を50万台に近づける躍進を見せたが、その要因の1つは中国市場での展開だった。上海工場が大きな役割を果たしたといえる。では、人口では中国に匹敵するインド市場ではどうなのか。テスラの動向について、日本サスティナブル・エナジー株式会社の代表取締役である大野嘉久が解説する。

インド・カルナタカ州大臣がテスラ進出をツイート

少し前まで会社の姿勢を公表する手段と言えばプレスリリースや記者会見などに限られていたが、近年では米国のトランプ前大統領で代表されるように、ツイッターやインスタグラムなどのSNSを通じた個人的な発信も半ば公式見解のごとく扱う風潮が世界的に広がっている。

そして先日、世界から大きな注目を浴びたのはインド・カルナタカ州のB.S. Yediyurappa州主席大臣(chief Minister)による「テスラは(カルナタカ州の州都である)ベンガルール*でインド事業を開始し、その手始めは研究センターの開設になる」というツイートであった。

このツイートは程なくして削除されたが、Yediyurappa大臣は続けてテスラがカルナタカ州にEVの工場を建設する、とのコメントも発表したことが報じられている。一方、テスラは2016年から何度もインド市場に参入する意向を示していたが、インド政府が進出する外国の自動車企業に対し「内製化率30%」を課していたことが大きな障壁となって実現が遅れていた。

*ベンガルール(Bengaluru)は2014年11月1日にバンガロール(Bangalore)から改称した。

カルナタカ州ベンガルールの街並み
カルナタカ州ベンガルールの街並み

インド政府の内製化規制という壁

このインド政府による内製化規制は今に始まったものではない。というのも1930年代まではインド国内を走る車は全て輸入車であったが、1940年代に入るとクライスラーやフィアットそしてジープなど外国企業の製品をインド国内で組み立てて販売するインド企業(ヒンドゥスタン・モーターズ、プレミア・オートモービルズ、マヒンドラ&マヒンドラなど)が勃興した。

1947年に独立を果たしてからは自国産業の育成を目指すようになり、1953年には組み立て工場しか持っていないか、あるいはインド資本とのパートナーシップを締結していない外国資本には撤退することを命令した。

この結果、米国のゼネラルモーターズ(GM)とフォード、そして英国のルーツ・グループが1954年にインドから撤退したが、他方で多くのインド資本の自動車メーカーが大きな成長を遂げた。

国産化を徹底したインド政府の戦略は成功し、今ではインドが世界最大のトラクター製造国に、世界第2位のバス製造国に、世界第3位の大型トラック製造国に、そして世界第4位の乗用車製造国となっている(それぞれ台数ベース)。今後も市場として大きな成長が見込まれており、2026年には台数ベースで世界第3位の自動車市場となることが予想されているが、加えてEVでも2027年には634万台の販売が期待されている。

このようにインドは世界でも有数の規模と成長性を持つ自動車市場であるが、果たしてテスラの参入は吉と出るだろうか。というのも、GMの事例を見るとインド市場の難しさが浮き彫りとなるからである。

インド進出に2度も失敗したGMと成功したスズキの相違、そしてテスラは?

上述のとおりGMは1954年にインドから退出したが、そののちインド国内に2つの工場を設立して1994年に再参入を果たした。ところが1950年代から数パーセント程度と低迷していたGMの販売台数は上向くことがなく、2016年にはわずか1%にまで落ち込んでしまう。

2009年には中国で合弁企業を運営するパートナーであった上海オートモーティブ・インダストリー(SAIC)と組んでインドほか新興市場に展開することで合意しているが、ついにGMは2017年に2度目の撤退を発表し、マハラシュトラ州にある工場は長城汽車に、グジャラート州の工場はSAICに売却した。

現地法人General Motors Indiaは2020年に廃業となる。しかしフォードは1995年10月にインド資本のマヒンドラ&マヒンドラと合弁会社を設立してインド市場へと戻り、近年では30%台のシェアを獲得しているという。

GMの販売がインドでふるわなかった要因として指摘されているのが成功したスズキとの相違点であり、(スズキのインド子会社マルチ・スズキ・インディアは)「低所得者向けの製品開発に注力した」「燃費の良さが高く評価された」「ディーラーのネットワークを構築し、低所得者層に対してもサービスを提供できる体制をつくった」などが挙げられている。

つまり、米国型の製品を米国式の売り方で勝負したらインドは難しい市場だということだが、高級車が並ぶ今の製品ラインアップだとそれはテスラにも多くが当てはまると言えないだろうか。もちろんイーロン・マスクがそんな事を知らないはずはなく、参入するからにはインドで好まれる製品を多くのインド人が買える価格で売る可能性は高いだろう。

マルチ・スズキ・インディアの工場
マルチ・スズキ・インディアの工場

2021年1月、テスラ、インド現地法人設立

2021年1月8日、テスラはインド現地法人「Tesla India Motors and Energy Private Limited」をベンガルールに設置した。自動車以外でも多くの米国企業が退出を余儀なくされたインドで、どのようにテスラが勝負をかけるのか、世界の関係者が注目していることだろう。カルナタカ州の州主席大臣がツイートしたとおり、州都ベンガルールにテスラの工場と研究所が本当に建設され、そこでインド市場に最適のEVが研究され、そして製造されるのか、まずは注視したいところである。

大野嘉久
大野嘉久

経済産業省、NEDO、総合電機メーカー、石油化学品メーカーなどを経て国連・世界銀行のエネルギー組織GVEPの日本代表となったのち、日本サスティナブル・エナジー株式会社 代表取締役、認定NPO法人 ファーストアクセス( http://www.hydro-net.org/ )理事長、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所元客員研究員。東大院卒。

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