関西電力 原子力による脱炭素がどこまで通用するか? -シリーズ・脱炭素企業を分析する(23) | EnergyShift

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関西電力 原子力による脱炭素がどこまで通用するか? -シリーズ・脱炭素企業を分析する(23)

関西電力 原子力による脱炭素がどこまで通用するか? -シリーズ・脱炭素企業を分析する(23)

エナシフTVの人気コンテンツとなっている、もとさんとやこによる「脱炭素企業分析」シリーズ、特に好評だった企業事例を中心にEnergyShiftではテキストでお届する。第23回は、現在、関西地方では阿部サダヲが「進めゼロカーボン」をテーマとしたコマーシャルを放映中の、関西電力を紹介する。ゼロカーボンの達成は、原子力発電を中心とした電源構成だが、そこに死角はないのだろうか。

エナシフTV「脱炭素企業分析」シリーズ

株価と業績

株価は2016年から2018年にかけては上昇傾向だったが、その後は下落傾向が続き、2020年11月の株価はピーク時の半値となっていた。2016年から株価が上昇した理由の1つは、高浜原発の再稼働だ。東日本大震災後は、原発が全て稼働停止となり、関西電力では一時的に大飯原子力の再稼働が認められたものの、関西電力の経営は苦戦していた。その後、高浜原発の再稼働を機に電気料金の値下げが可能となり、結果として株価が上昇した。

しかし、2019年9月には金品受領問題が報道される。関西電力の経営幹部20人が福井県高浜町の助役から金品を受領していたという事件だ。事件への対応として関西電力は当事者の給与カットを発表したが、後に給与カット分が補填されており、関西電力のガバナンスには大きな問題がある、ということが露呈した。ただし、ESG経営のGがガバナンスなのだが、この事件が株価に与えた影響は少なく、現在の株価の値下がりは、減収減益によるものだ。

2020年度の売上高は3兆923億円、経常利益が1,538億円となっており、2019年度と比較すると減収減益となっている。

2016年度以降、経常利益は黒字に転換したが、これは原子力の再稼働が大きな役割を果たしている。高浜原子力3、4号機と、大飯原子力3、4号機の再稼働が大きく寄与しているということだ。

逆に、原子力が再稼働するまでの電力不足分は中国電力や北陸電力、四国電力などから電気を調達していたが、その費用がかさんでいたということだ。

2021年度予想は売上高が2兆5,000億円、経常利益は1,000億円を見込んでいる。総販売電力量の減少と再エネ会計処理の変更による売上減少、燃料価格上昇による利益減、LNGの増加による、石油や石炭による利益減少も織り込んだものとなっている。

なお、この再エネ会計処理の変更について、説明しておくと、FIT電源からの売電分について、賦課金・交付金については算入しないということだ。これにより、名目上は収支が変化するが、実態は変わらない。

関西電力のガス事業と海外事業

販売電力量が減少する一方、ガスの販売量は拡大している。ガス、その他の売上は2019年度で4,970億円、2020年度は5,466億円と、全体の6分の1を占める売上があり、ガス事業は成長分野になっているといえるだろう。また、関西電力のガスの販売の原動力の1つはKDDIが販売していることだ。KDDIは旧一般電気事業者の取次店として、関西電力や東京電力エナジーパートナー、中部電力ミライズのガスを販売している。au電気の契約者などは関西電力のガスを買うと少しお得になる。

ガス事業

一方、海外事業については、水力、風力、火力をまんべんなく展開しており、地域別に見ても欧州、アジア、北米と偏りなく手掛けている。海外における発電プロジェクトへの参加なども多く、動向には注目したい。関西圏における経済成長が比較的鈍いことや、再エネに利用できる土地などもそこまで多くないことから、関西電力は海外で多岐にわたる事業を展開、海外事業に成長の活路を見出しているということだ。

脱炭素と原子力

関西電力では、ゼロカーボン2050というビジョンを作成しており、デマンドサイドとサプライサイド、言い方を変えれば利用者側と発電・供給側、この2つの視点から、脱炭素に向けた取り組みを紹介している。

関西電力の脱炭素における注目点は2つある。1つは、利用されるエネルギーは電気と水素に集約する、ということだ。再エネのほとんどは電気として利用されている。したがって、需要側はエコキュートや電気自動車などで電化を進めていくことになる。そして電気が使えない熱分野などでは水素を活用していくということだ。

2つ目が、水素製造においても原子力を利用することだ。

関西電力は旧一電のなかでも、原子力に対しては積極的な姿勢を示しており、原子力の再稼働だけではなく、新増設やリプレイスも明確に視野に入れている。以前から150万kW級のAPWRを視野に入れているだけではなく、SMRのような小型炉についても検討するとしている。さらに、原子力で発電するだけではなく、その熱を利用して水素を製造することについても検討しているということだ。

しかし、関西電力が原子力を推進するにあたって、もっとも重要な問題は、ガバナンスだ。

金品受領問題とガバナンス

現行の中期経営計画では、最初にガバナンス確立とコンプライアンス推進が記載されている。これは、前述の金品受領事件をふまえてのことだ。また、この計画では具体的な行動は明示されていないが、2020年3月に森本孝社長名で、ガバナンス向上のための改革についての文書を発表している。それは、以下の4点について、関西電力のトップとして最優先で取り組んでいくという内容だ。

  1. 利益が確実視される事業でもコンプライアンス違反はしない。
  2. コンプライアンス遵守の為に必要であれば社内慣行やルールも改変する。
  3. グループ会社全体でコンプライアンス遵守を徹底する。
  4. ステークホルダーや顧客、取引先を含め、信頼を失うことは行わない。万が一、そうした事態が発生した際には原因究明と再発防止に努める。

しかしながら、文書を発表しただけで、原子力発電事業に対する懸念が払拭できるわけではない。

一方、原子力そのものにもいくつものリスクが存在する。無事故であったとしても、経営面のリスクがあるといえるだろう。

1つはコンプライアンスのリスクである。

今後も不祥事が繰り返されないとは断言できず、もし再び不祥事が起きた時は原子力の運転が差し止められることもありうる。そうなると、原子力での脱炭素は成り立たない。これまで多くの旧一般電気事業者において、金品受領に限らず、データ改ざんなどが繰り返されており、そのたびに原子力は運転を止めてきた。

次に裁判に関するリスクがある。

周辺の住民などが原発に不安を感じて裁判を起こすことは少なくない。これまで、原発運転差し止めを求める裁判で、地方裁判所が原発停止を命じる判決を下すことがあったが、こうした判決が出される可能性は今後もある。停止命令が下れば、原発は稼働できなくなる。原発稼働には裁判もリスクとなるということだ。

そして最大の問題となるのが、使用済み核燃料だ。

関西電力では、使用済み核燃料を、青森県むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設に一時貯蔵することを打診した。しかし、むつ市側は、施設はあくまで東京電力ホールディングス向けのものであり、関西電力の使用済み核燃料は引き取れないということだ。そのため、関西電力の原発敷地内に保管する状態が続いているのだが、使用済み核燃料の保管可能容量を超過すると原発は停止せざるをえなくなる。

こうしたリスクを抱えた状態で、本当に原子力で脱炭素が可能かは非常に問われるところだ。コンプライアンス面でも2004年、美浜原発3号機で6名が死亡する事故が発生している。事故原因は点検すべき箇所が点検リストから欠落しており、放置された結果、死者を出す事故につながった。2006年にはデータ改ざんも発覚している。このように見ていくと、原子力による脱炭素の道は険しいといえるだろう。脱炭素の道筋に、課題は山積みだ。

まとめ

関西電力は、電力需要自体の減少に加えて電力自由化による需要離脱、省エネの進化などで電力そのものは減収減益の傾向が当面は続いていくだろう。

一方、脱炭素に向けた取り組みとして電化の推進がある。自動車がEVに替わり、ガスコンロがIHクッキングヒーターに替わり、給湯器もガス給湯器からエコキュートに替わっていく。電化による脱炭素の進行は長期展望で関西電力にプラスとなるだろう。

脱炭素にあたって、原子力については未知数と言わざるをえない。また、近畿地方には再エネに活用できる土地もあまりない。したがって、大規模な再エネ開発は海外展開、ないしは洋上風力ということになってくる。

原子力発電は運転可能な期間が決められている。高浜原発の1号機、2号機の稼働期間は20年延長されたが、20年の稼働期間終了後の再延長はおそらくないだろうと思われる。そうなると、新増設を検討することになる。小型原子炉なども視野に入れているが、現状では新増設を打ち出すことは難しい。また、事故以外の事業リスクも評価する必要がある。

しかし、何よりも優先して取り組むべきことは、金品受領問題を受けたイメージの失墜から回復するための、ガバナンスの再構築だ。しかし、信用を取り戻すにはまだまだ多くの時間が必要となる。

日本の電力会社のトップである東京電力が、3.11の原発事故後に国有化されている。東京電力を追走し、国内二番手の電力会社である関西電力は、本来なら現在の電力業界をリードする立場にいないといけない。だが、社内で抱える問題は大きく、業界をリードする存在に至っていない。この会社の将来は、その問題をいかに解決していくかにかかっている。

(Text=MASA)

ヘッダー写真:Hirorinmasa, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798059020.html

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