環境省は、宇宙から温室効果ガス(GHG)の排出量を測定する取り組みについて、2023年から本格的に始動する意向だ。同省はこれまで、二酸化炭素(CO2)やメタンといったGHGを観測する専用衛星「いぶき」(GOSAT)とその後継機「GOSAT-2」をJAXAとの協働で打ち上げ、大気中のGHG濃度を測定。パリ協定の目標達成に向けた各国のGHG排出量削減目標の達成状況の把握などを行ってきた。
2023年は、その後継機となる「GOSAT-GW」(以下、3号機)を打ち上げる年で、同機はGHGの排出源を特定する能力と排出量を推計する精度が、過去機体よりも向上している。
取り組みはまず、モンゴルなどアジア太平洋地域の数ヶ国を対象にする。環境省はこれまで、GOSATシリーズの衛星データの正確さを、日本とモンゴルで確認してきた。モンゴルで実証したことにより、エネルギー消費量などからの算定値と、GOSATシリーズからの推計値がおおむね一致すると判明し、今回、実用化に踏み切ることになったと報道されている。
いずれは、地上での測定技術が乏しい途上国でも、衛星データを活用することで排出量を正確に把握できるようにし、世界の気候変動対策を後押しする。将来的には、各国が公表する排出量が正しいかの検証に利用し、透明性の高い排出量報告に貢献することを目指している。加えて、衛星データから排出量を算定する国際的なルールづくりも視野に入れている。
国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)は、各国が排出量を測定して事務局に提出することを求めている。そのため、経済成長が見込まれるアジア太平洋地域でも、排出量を正確に把握する重要性が高まっている。
そして排出量は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の国際ガイドラインに従って算定するのが原則とされており、そこでは「全大気」の平均濃度の算出が求められている。CO2は高度によって濃度差があるために正確な計測が難しく、ノウハウや人材が乏しい途上国で、CO2濃度のデータの取得や整理が難しいケースがあるのはこのためだ。太陽光が陸や海の表面で反射するのをセンサーで捉えるGOSATならば、地表面から大気上端までの大気中の二酸化炭素の総量を観測することが可能となる。
環境省はモンゴル以外でも、宇宙からの観測ができないか検証する。精度を確認できれば順次、実際の運用に切り替えるとしており、すでに複数の国と交渉に入っていることも報道されている。途上国での運用例を増やし、脱炭素につながるインフラ輸出の柱にしたい考えだ。
EnergyShift関連記事
・JAXAベンチャー、衛星データで大気中CO2濃度を可視化する環境モニタリング『DATAFLUCT co2-monitoring.』登録不要、無料でサービス開始
・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)とは
ニュースの最新記事