企業活動全体の温室効果ガス排出量をどう測ればいい? 大企業200社が加盟のWBCSDが、スコープ3算出のための新しいプログラムを提供 | EnergyShift

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企業活動全体の温室効果ガス排出量をどう測ればいい? 大企業200社が加盟のWBCSDが、スコープ3算出のための新しいプログラムを提供

企業活動全体の温室効果ガス排出量をどう測ればいい? 大企業200社が加盟のWBCSDが、スコープ3算出のための新しいプログラムを提供

2050年までの温室効果ガスゼロを目指すには、まず、すべての企業が温室効果ガスをどれだけ排出しているのかを知らなければならない。そのための考え方(プロトコル)が、スコープだ。

スコープ1が、企業の直接排出。自社ビルの自家発電や自社工場での排出。スコープ2は間接排出。他社から電力購入している場合、スコープ2として計算される。

企業をいちばん悩ませているのがスコープ3だ。スコープ3とは、定義的には「スコープ1、スコープ2以外のすべて」である。

スコープ3にはカテゴリ分類がある。

Scope3カテゴリ該当する活動(例)
1購入した製品・サービス原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達
2資本財生産設備の増設(複数年にわたり建設・製造されている場合には、建設・製造が終了した最終年に計上)
3Scope1,2に含まれない
燃料及びエネルギー活動
調達している燃料の上流工程(採掘、精製等)
調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等)
4輸送、配送(上流)調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)
5事業から出る廃棄物廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送(※1)、処理
6出張従業員の出張
7雇用者の通勤従業員の通勤
8リース資産(上流)自社が賃借しているリース資産の稼働
(算定・報告・公表制度では、Scope1,2 に計上するため、該当なしのケースが大半)
9輸送、配送(下流)出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売
10販売した製品の加工事業者による中間製品の加工
11販売した製品の使用使用者による製品の使用
12販売した製品の廃棄使用者による製品の廃棄時の輸送(※2)、処理
13リース資産(下流)自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働
14フランチャイズ自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope1,2 に該当する活動
15投資株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用
その他(任意)従業員や消費者の日常生活

出所:サプライチェーン排出量算定の考え方パンフレット 環境省 ※1 Scope3基準及び基本ガイドラインでは、輸送を任意算定対象としている。 ※2 Scope3基準及び基本ガイドラインでは、輸送を算定対象外としているが、算定することもできる。

WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)*は、このスコープという考え方を提案した団体のひとつだ。そのWBCSDでさえも、このスコープ3の算出には大きく3つの問題があるとしている。

  • 製品レベルで温室効果ガス排出量を計算し、配分するための一貫した方法論がない
  • 温室効果ガス排出量に関する正確で詳細な製品別データがない
  • 複雑なバリューチェーンで、組織間の排出量データ交換が限られている

つまり、1社にフォーカスしてスコープ3を算出するのは非常に困難なため、より広範なコラボレーションが求められる。なぜならたとえば、A企業のスコープ3はB企業のスコープ1であるように、バリューチェーンとは本質的につながりがあるものだからだ。

この問題を解決するために、WBCSDは今年の3月、「バリューチェーン・カーボン・トランスペアレンシー・ファインダー」というプロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトに参加しているのはAptar、BASF、Chevron、CircularTree、Dow、EcoVadis、Engie、IBM、iPoint Systems、Microsoft、Nestlé、SAP、Shell、Solvay、Unileverの15のグローバル企業だ。

このプロジェクトの目的はバリューチェーンのスコープ3排出量の透明性を図ることになる。アプローチとしては方法論を定め、オープンテクノロジーに基づく相互な炭素ネットワークを構築し、だれもが自社のスコープ3を算定できるようにする。バリューチェーン自体が複雑なネットワークを形成しているので、そこに算定ネットワークを組み込むことで、複雑な計算を可能にしようというのだ。

6月16日には、この「バリューチェーン・カーボン・トランスペアレンシー・ファインダー」を強化・拡大する形で「カーボン・トランスペアレンシー・パートナーシップ」が立ち上げられた。

業界ごとに異なる具体的なスコープ3の算出方法論や技術的なアプローチを検討し、実際に必要な前提条件に重点をおき活動する。また、業界ごとの整合性、一貫性、相互運用の要となる「イニシアチブ・ハブ」の役目も果たす。

金属・鉱物産業でのスコープ3の透明性ある算出にフォーカスする「素材排出透明性連合(COMET)」とその中核イニシアチブ「RMI・責任ある鉱物イニシアチブ」も参画。自動車、建物、電話など消費財生産に組み込まれた炭素量の排出量測定のベースになる。

RMIの代表であるJules Kortenhorst氏は「測定できないものは管理できません。サプライチェーンのあらゆる地点で、製品に組み込まれた温室効果ガスの排出量を企業が理解できるようにすることで、サプライチェーンの脱炭素化が加速します。RMIは、カーボン・トランスペアレンシー・パートナーシップに参加することで、すべてのセクターと素材に共通する言語を構築し、財務を説明するのと同じように、温室効果ガスの排出量を簡単に説明できるようにします」とコメントした。

*WBCSDは、持続可能な世界への移行を加速するために協力している200以上の大手企業からなる、CEO主導のグローバル組織。メンバー企業の総売上高は8.5兆米ドル以上、従業員数は1,900万人にのぼる。約70ヶ国のビジネスカウンシルからなるグローバルネットワークにより、活動を展開。1995年設立。

(Text:小森岳史)

EnergyShift編集部
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