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Ørstedのアジア洋上風力発電戦略「日本はアジアを代表する市場になる」:Ørstedアジア太平洋地域責任者Yichun Xu氏インタビュー

Ørstedのアジア洋上風力発電戦略「日本はアジアを代表する市場になる」:Ørstedアジア太平洋地域責任者Yichun Xu氏インタビュー

EnergyShift編集部
2020年08月20日

洋上風力発電の分野では世界最大となる、デンマークのØrstedは、アジア太平洋地域でも積極的な事業展開を進めている。すでに台湾で着実に実績を重ねてきており、日本では東京電力グループとの合弁事業により、銚子沖での洋上風力発電を計画している。Ørstedは今後、日本の洋上風力発電の開発にどのような貢献をしていくのか、アジア太平洋地域の責任者であるYichun Xu氏におうかがいした。

世界でもっともサスティナブルな企業

―最初に、Ørstedがどのような会社なのか、その点からお願いします。御社のビジョンには「グリーンエネルギーだけで稼働する世界を作り出す」とあります。そうした世界を作り出すにあたって、どのような技術を活用し、あるいはどのような事業を展開していくのでしょうか。

Yichun Xu氏:おっしゃるように、Ørstedのビジョンは、すべてがグリーンエネルギーで稼働する世界です。また、それを実現するために、洋上および陸上風力発電所、太陽光発電所、エネルギー貯蔵設備、バイオマス発電所、これらの開発、建設、運用を行い、顧客にエネルギーソリューションを提供するというものです。

Corporate Knights社による「世界で最もサスティナブルな企業100(Global 100 most sustainable in the world)」で1位を獲得しています。CDPの「気候変動Aリスト」という評価を受けたことで、気候変動へのアクションにおける世界的リーダーとして認識されています。

私たちの存在がアジア太平洋地域に広がり、およそ30年にわたって培ってきた洋上風力の知識が、千葉県銚子エリアにおける協業を通じて活せることを期待しています。目指すところは、日本を、アジア太平洋地域を代表する洋上風力市場の一つにすることです。

―将来、世界市場では何GWの洋上風力発電が開発されていくと予測されているのでしょうか? また、アジア・太平洋地域に限ると何GWになるのでしょうか? 特に日本と台湾についての予測もお願いします。

Xu氏:2020年3月のBloomberg New Energy Financeによると、2030年までに世界の洋上風力発電の設備容量は189.5GWになるといいます。このうち78.8GWがアジア・太平洋地域のものであり、日本と台湾はそれぞれ10GWずつを目標に据えています。

―とりわけ御社の日本と台湾における洋上風力事業は注目されています。

Xu氏:台湾におけるØrstedのことからお話しします。

Ørstedは2019年に設備容量が8MWから128MWに拡大した、台湾初の商用規模の洋上風力発電プロジェクト「Formosa1(フォルモサ1)」の共同所有者となっています。

また、続く案件として、大彰化(Greater Changhua)洋上風力サイトには、2.4GWのポテンシャルがあります。このうちおよそ1.8GW分については2021年から2025年に完成予定であり、残りの0.6GW分については今後の入札によって追加されます。

このサイトでは、まず「大彰化1&2a」が、彰化県の35~60km沖に建設され、およそ900MWの発電容量になります。これは台湾のおよそ100万世帯に再生可能エネルギーを供給できる規模です。完工は2021年~2022年になる見込みです。

引き続き、Ørstedは「大彰化2b&4」発電容量920MWの建設に関する権利を取得しています。最終投資決定を2023年に行えば、2025年に建設されます。

また、「大彰化2b&4」については、2020年7月8日に、台湾の半導体企業であるTSMCとコーポレートPPAに関して署名しました。TSMCが「大彰化2b&4」920MWの電力を引き受けるというもので、世界最大の再生可能エネルギーの契約となります。送電線の利用ができれば、2026年の運転開始を待って、契約期間がスタートします。

台湾・Formosa1(フォルモサ1)

国立彰化師範大学(NCUE)のMWサイズ蓄電システム運開式

銚子の洋上風力発電は環境アセス中

―台湾の事業は順調に進んでいると思います。一方、日本の事業はこれからですね。

Xu氏:現在、我々Ørstedは東京電力ホールディングス(HD)との共同出資会社「銚子洋上ウインドファーム」による銚子プロジェクトに焦点を当てています。そして、予定されているオークションに向けた、数ヶ月間の入札準備を通じて、この協力関係をさらに強固なものにしたいというねらいもあります。

今回、Ørstedと東京電力が注力している、およそ370MWの着床式洋上風力プロジェクトは、経済産業省による入札ガイドラインが発表された場合、変更となる可能性があります。その上で、このプロジェクトに関しては環境アセスメントが順調に進んでおり、日本の洋上風力発電市場の最初のオークションが近づくにしたがって、主要な関係者と密にやり取りを続けているという状況にあります。

―世界的に、洋上風力発電プロジェクトが大規模化していると考えています。日本のプロジェクトについては、どのくらいの規模になっていくとお考えでしょうか。

Xu氏:日本風力発電協会によれば、日本の“風どころ”は着床式洋上風力発電に限れば、90GWのポテンシャルを持っています。また、これに対し、年間約1~1.5GWのオークションが計画されています。

プロジェクトの大規模化は、洋上風力発電のコストを下げるという点で重要です。理想としては、洋上風力発電プロジェクトは800MW以上の規模であるべきだと考えています。日本の最初のプロジェクトはこの規模に達しないようですが、日本の洋上風力発電のコストを下げるためには、我々としては次のプロジェクトにおいて、より大規模化が可能になることを期待しています。

Ørstedの銚子プロジェクト プレスリリースより

―東京電力とともに会社を設立したとのことですが、この事業におけるØrstedの役割はどのようなものでしょうか。また、この件とは別に、商船三井とも提携していますが、この提携におけるØrstedの役割についてもお願いします。

Xu氏:東京電力との共同事業からお話しします。

東京電力は日本の電力業界における最大規模のプレーヤーとして、この地域の電力市場と規制要件に深い知見を持っています。
東京電力との共同研究開発契約書(JDA)は、国内で大規模な再生可能エネルギー発電を開発するという日本の野心を現実のものとし、日本をアジア太平洋地域を代表する発電容量を持つ風力発電市場に押し上げる、このØrstedと東京電力の願望を実現に向けていくことが、我々の第二ステップということになります。

とはいえ、現在は銚子に焦点を当てており、この先数ヶ月を通じて、協業をさらに強固なものにしていくことに注力していきます。

商船三井との協業には、別の側面があります。
2020年4月16日に、Ørstedは、台湾の船舶管理会社である大統海運グループ(Ta Tong Marine Groupe : TTM)と日本で創業130年となる商船三井(MOL)との合弁会社大三商航運股份有限公司(Ta San Shang Marine Co. Ltd.)との15年契約への署名を発表しました。これは、Ørstedの大彰化洋上風力発電所のO&M用に、世界初の台湾籍SOV(整備専用船)を建造する船会社を登用するためです。

この登用契約は、台湾およびアジア太平洋地域で初のSOVの発注を意味します。このことは、Ørstedが財務的な意味でも、あるいは世界をリードするO&M技術の伝播についても、アジア太平洋地域へ積極的に投資し続けることを物語っています。

商船三井と洋上風力分野で協業

日本でも大規模プロジェクトでコスト削減を可能に

―日本で洋上風力発電所を建設するにあたり、解決すべき課題は何でしょうか。例えば、規制や財政、送電および配電、要求される技術などにおいて、何か障害になるものはありますか。

Xu氏:すべての資本集約的なインフラ産業では、安定した規制が大規模な地域の新産業を発達させる主要な成功要因です。洋上風力への投資を引き付け、初のプロジェクトへの道を整備する規制の準備において、日本は目覚ましく進歩しており、日本初の洋上風力オークションが、2020年度の第2四半期に行われることを、我々は望んでいます。

とはいえ、1~1.5GWの発電容量を4つの海域に広げると、大規模なプロジェクトを通じてコストを下げるという開発者の能力を損ない、日本における電力の価格が必要以上に高止まりしてしまう恐れがあります。

また、建設、運用するための港湾は、洋上風力の成功に不可欠です。最適となっていない港湾では、建設により長い期間を要し、最適ではない運用を行うことになってしまいます。いずれも洋上風力のコストを劇的に引き上げます。

日本では、国または県が洋上風力用港湾の設計と建設の責任を持ちます。しかし、日本における大規模洋上風力の経験の浅さを考慮すると、その港湾が目的に合致しているかどうかを確認するため、あるいは利用できない港湾への無駄な投資をしないため、政府や県政が業界に関わっていくことが非常に重要です。また、デベロッパーが最適な業者を選択する柔軟性を持つこと、つまり彼らがプロジェクトのあらゆる技術的範囲に競争的圧力をかけられるということも重要です。

関連する直接的なルールはまだ明らかではありませんが、現在の認可に基づいて技術的な選択を制限するという案が出ています(例えば、風力タービンの規格をクラスT=10分平均風速57m/秒に対応した、国際基準より厳しい規格とする)。デベロッパーが1種類のタービンしか利用できないかどうかという点は重要で、このことは我々のコストダウン能力に大きな影響を与える恐れがあります。大規模で重要な技術的分野において、競争的圧力がなくなるからです。

他のリスクは、日本が過度の保守的、あるいは複雑な許認可規制を用いる可能性があることです。これは日本の電力の需要家に何の利益ももたらさず、洋上風力のコストを引き上げるものです(例えば、地震や台風の多い台湾よりも基礎構造を強くする必要はなく、このことは利益がないままコストを引き上げるだけです)。

洋上風力は日本にとって貴重な国産エネルギー

―Ørstedにとって、日本は魅力的な市場だと考えますか。また、その根拠はありますでしょうか。

Xu氏:洋上風力の必要性という点からお話しします。

日本では、発電が海外から輸入した化石燃料に依存していくことに加えて、地形的な問題に直面する陸上の再生可能エネルギー、沿岸部における大規模需要地に対し、洋上風力発電は、魅力的で信頼でき、国内自給となる発電技術であると考えています。

日本の国土の70%以上は山林で、人口1.27億人のおよそ4分の3が沿岸部の都市エリアに住んでいることから、洋上風力発電が日本にとって大規模で理想的な国産再生可能エネルギーだということです。

―では、政策の面ではどうでしょうか。

Xu氏:2018年11月、日本は大規模洋上風力における海域使用権の配分のための基本法案を可決しました。それに先立つ2018年7月に公表した第5次エネルギー基本計画では、2030年までに電力の再生可能エネルギーの割合は22~24%の達成を目指し、その一環として2030年までに10GWの(陸上と洋上を合わせた)風力発電を目標としました。

さらに洋上風力について年間1~1.5GWのオークションを開催したいという表明は、業界に向けて明らかなパイプラインを提供しています。風況に関するポテンシャルは、繰り返しになりますが、90GWの着床式洋上風力発電が可能です。

―御社は日本の再生可能エネルギーの拡大において、どのような役割を果たしたいと考えていますか。

Xu氏:我々が市場に参入するときは、いつもその場限りのものではありません。主要な目標は日本で長期的な産業とパイプラインを築きあげることです。我々は風力発電所の初期開発フェーズから建設、運用、所有を通して関わるため、ビジネスモデルは長期的なアプローチが可能となっています。現代の洋上風力発電所の寿命が30年以内だとすると、我々がプロジェクトにいつ参画しても、その後の数十年間にわたって地域コミュニティの活発なメンバーになれます。これはすべての関係者に対し、彼らの懸念する点を理解し、調和し共存するためのソリューションを共に発見し、足並みを合わせるという我々の深い献身をも示しています。

ただし、日本には沿岸線沿いの数ヶ所に洋上風力発電を建設するチャンスがあり、我々にとっても銚子以外の場所で事業展開する機会があれば取り組みますが、そのことに言及するのは早計です。

我々は東京電力との合弁事業を成功させることをお約束します。もちろん、銚子以外にも、我々は日本の洋上風力発電の成功に貢献したいし、さらなる取り組みに前向きです。

我々の30年におよぶ洋上風力発電の開発の経験と東京電力の思慮深いこの地域における知見・専門性の組み合わせが、非常に強力な機能の基礎を提供するだろうと確信しています。

参照

プロフィール

Yichun Xu

Head of Asia Pacific Markets アジア太平洋地域における市場活動を担当しており、オフショア風力発電産業の発展のために関係当局や現地パートナーとのコミュニケーションを図っている。2013年にØrsted(オーステッド)社に入社し、M&Aプロジェクトの評価、O&M分析、新規市場の開拓を担当。Ørsted入社前は、プライベート・エクイティ部門に勤務。経営学士、金融及び戦略マネジメントの修士号を取得。
Ørsted (オーステッド・ ジャパン株式会社)

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