自治体で広がる再エネ導入義務化 東京都、群馬県が2月に条例案提出 大企業も中小企業も迫られる脱炭素 | EnergyShift

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自治体で広がる再エネ導入義務化 東京都、群馬県が2月に条例案提出 大企業も中小企業も迫られる脱炭素

自治体で広がる再エネ導入義務化 東京都、群馬県が2月に条例案提出 大企業も中小企業も迫られる脱炭素

2022年02月16日

脱炭素社会の実現に向け、一定規模以上の建物を新築・増改築する際に太陽光発電などの再生可能エネルギーの設置を義務化する自治体が広がりつつある。東京都と群馬県は2月に設置義務化に向けた条例案を議会に提出する。可決されれば、京都府、京都市に次ぐ事例となり、大企業はもちろん中小企業も対応を迫られることになる。

東京都、90坪未満の住宅まで対象にした設置義務化は全国初

東京都は、2050年に都内の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。

実現に向けては、2030年までの10年間の行動がカギを握るとし、2021年1月、2030年までに温室効果ガスを2000年比で50%削減する「カーボンハーフ」を表明。カーボンハーフ達成に向け、2022年2月4日には、2,000平方メートル未満の住宅やビルなどの新築建物へ太陽光発電の設置を義務づける新たな取り組み、「2030年カーボンハーフに向けた取組の加速 -Fast forward to “Carbon Half”-」を公表した。

東京都の新条例は、1棟の延べ床面積が300平方メートル(約90坪)未満の住宅まで対象にする。太陽光発電の設置義務化で、90坪未満の住宅まで対象にした制度は全国初だ。大手企業のみならず、中小企業、そして一般家庭も今後、対応を迫られることになる。ただし、脱炭素の機運が高まるとはいえ、太陽光発電の設置はコスト負担が増す。ハードルは決して低くない。なぜ都は規制を強化するのか。

東京都の温室効果ガス排出量は2000年度から減少傾向を辿るが、2019年度で6,211万トンと2000年度比8.0%減少にどどまる。とりわけ都内CO2排出量のうち、7割を占める建物への対策強化は急務だ。

CO2排出量の部門別構成比(2019年度速報値)


出典:東京都

そのひとつである家庭部門は、1世帯あたりのエネルギー原単位は減少しているものの、世帯数の数が2000年比で約30%増加しており、エネルギー消費量は増加傾向にある。さらに東京の世帯数は2035年まで増える見込みだ。これまでも2,000平方メートル以上の大規模建物について再エネ設置の義務を条例化していたが、毎年約4.3万棟の新築住宅が建設される中、2,000平方メートル以上はわずか1%。99%が2,000平方メートル以下だ。

一方、都内における太陽光発電の導入状況は、総ストック数約225万棟のうち、4%の約9.5棟にしか設置されていない。築6年未満の新しい建物での導入率は12%を超えるが、それでも2割未満だ。住宅やビルなどの建物は一度、建てられると数十年にわたって使用される。今後新たに建てられる建築物を脱炭素化できなければ、2050年目標の達成は危うい。目標実現に向けては、やはり太陽光発電の導入義務化の強化が欠かせない。

東京における太陽光発電の設置状況


出典:東京都

都は条例を強化させるとともに、再エネの導入・調達の加速化に向けた支援策も拡充する方針だ。

まず産業部門では、2022年度の当初予算案に前年度の3倍となる12億円を計上し、電力の地産地消に向け、自家消費型の再エネを導入する民間企業や区市町村を支援する。さらに民間企業が再エネ電源を確保しやすくするため、都外に設置する自家消費型再エネ施設の導入支援も拡充する。予算額は前年度比5倍となる10億円を計上した。ただし、支援規模は6件(1件あたりの補助上限2億円)とその効果は限定的だ。

家庭部門に対しては、住宅の脱炭素化を加速させるべく、2022年度から太陽光発電の設置補助金を上乗せ強化する。補助額を1kWあたり10万円から12万円に増額し、規模は1,412件から1万1,650件に大幅拡充する。さらに太陽光発電を導入した新築住宅に対して、不動産取得税を最大で全額減免する税制措置なども実施する方針だ。

規制強化、支援拡充によって、2030年までに再エネ電力比率を17.3%(2019年度)から50%に、太陽光発電の導入量を61万kW(2019年度)から130万kWに拡大させる目標を掲げる。

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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