11月13日、兵庫県立大学大学院工学研究科の伊藤省吾教授らの研究グループは、炭素電極を備えた新型太陽電池「ペロブスカイト」の耐久性を、屋外環境で世界最長の20年相当まで改善できることを実証した。研究は、紀州技研工業、スイス・ソラロニクス、独フラウンホーファーと共同で行われた。
ペロブスカイトは独特の結晶構造を持った物質で、インクのように塗ったりフィルム状にしたりすることで、太陽電池としての使用が可能となる。軽量なうえに、コスト安が期待できるが、一方で耐久性の低さが課題とされてきた。
今回の研究では、その課題を克服するために、炭素電極を備えたペロブスカイトを用いて、特定の条件下における光照射によって性能が回復する(光改善)新メカニズムを提唱。
これまで、炭素電極を備えたペロブスカイトに光改善が起こることは、作成方法に関する検討を行う中で確認されていたが、その詳細なメカニズムまでは解明されていなかった。今回の研究によって、そのメカニズムを解明するとともに、加速劣化試験によって耐久性が大幅に改善できることを実証した。
研究では、光改善が起こる材料の比率を突き止めるとともに、水蒸気侵入による劣化を防ぐ封止フィルムの活用が鍵となった。また、耐久性の確認に当たっては、加速劣化試験を行い、温度85℃、湿度85%の相対湿度環境下での試験で、20年間に相当する耐久性を確認した。これは、現在、太陽電池の95%を占めるシリコン系の太陽電池に匹敵する長寿命だ。
また、炭素電極を備えたペロブスカイトの主要材料である炭素電極とヨウ素は、日本が世界シェア20~30%を占めており、高い国際競争力を持てるという期待もされている。また、太陽光から電気への変換効率は現在12%前後だが、今後、シリコン太陽電池に匹敵する16%以上の変換効率を達成することができれば、本格的な実用化が視野に入るだろう。
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