日本勢が太陽光発電のフィールドでイノベーションを起こしている。日本人が発明した塗る太陽電池とも言われる次世代太陽電池ペロブスカイトで、東芝がフィルム型で世界最高効率をたたき出した。日本のみならず、世界の脱炭素を進展させる「夢の電池」について、ゆーだいこと前田雄大が解説する。
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ペロブスカイト太陽電池とは、色々な問題を解決してくれる可能性がある、夢のある電池だ。
つまり、イノベーションが続けば、日本がリアルに世界に対して脱炭素で処方箋を提供できる、日本の脱炭素化が進む、そうしたことが期待される技術である。
そこで今回は、そもそもペロブスカイト太陽電池とは何か。何が凄いのかを紹介した上で、次の3つの論点について解説していきたい。
まずは、そもそもペロブスカイト太陽電池とは何か。何が凄いのか説明していこう。
いま、太陽電池と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、シリコンの入ったソーラーパネルだろう。太陽の光エネルギーを直接電気に変換する太陽電池、その種類は、原料として使われる半導体によって実は様々あるのだが、現在量産されている太陽電池の多くは、「シリコン系太陽電池」と「化合物系太陽電池」と呼ばれるタイプである。
これらの特徴は、25%を達成するなどの高変換効率が挙げられる一方で、材料や製造コストが比較的高いというデメリットがある。しかも、シリコン系太陽電池は、中国が世界シェアの大部分を持っており、中国リスク、さらに原料生産に関しては新疆ウイグル問題との関連もある。以前、解説したとおり、アメリカが制裁を課すなど、不安定要因もある。
さらに、シリコン系太陽電池はシリコンが厚く、曲げることができない、という点から、設置場所が限られるという制約がある。
そこで注目をされているのが、ペロブスカイト太陽電池だ。太陽光を電気に変換するという意味では一緒だが、構造がまったく異なる。
使うのはペロブスカイトと呼ばれる結晶で、このような構造をしている。
出典:国立研究開発法人 科学技術振興機構
この結晶を用いてペロブスカイト膜というものを作り、太陽電池に加工するのだが、このペロブスカイト膜、塗布技術で容易に作製できるという驚きの特性がある。この特性ゆえに、塗る電池と呼ばれているのだ。
これにより、既存の太陽電池よりも低価格を実現できるとされている。国際エネルギー機関(IEA)が「これからのエネルギーの王様は太陽光である」と述べたが、その背景には、世界的な太陽光発電のコスト低下がある。太陽光パネルの価格は劇的に下がってきており、シリコンは今後さらに下がるのではないかとされている。そうした状況であっても、コスト安が実現できるというペロブスカイトの特性は、中国が席巻する太陽電池市場に対抗する上でも、そして実際に消費者が使うにあたっても非常に魅力的だ。
さらに、このペロブスカイト太陽電池が凄いのは、製造するときの温度を、シリコン系に比べて低くできる点にある。この特性によって、プラスチックを痛めない範囲に収めることができるので、プラスチックフィルムタイプの太陽電池の製造が可能になる。
しかも、シリコン系太陽電池は薄くすると太陽光のエネルギーが吸収できなくなるので、変換効率が大きく低下するのに対し、ペロブスカイト太陽電池は、太陽光の吸収係数が大きいため、高い変換効率を維持したフィルムタイプ太陽電池の実現が可能とされている。
今回の解説のポイントはまさに、このフィルム状だ。フィルム状になれば、当然軽く、曲げられる、つまり、フレキシブルで軽量な太陽電池が実現でき、シリコン系太陽電池では困難なところにも設置することが可能になるというわけだ。
脱炭素時代にぴったりな、この太陽電池を生み出したのは誰か・・・次ページへ
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