エネルギーの情報データベースとコンサルティングを提供しているEnerdataのエグゼクティブブリーフから、注目の記事を翻訳してお届けする。今回は世界におけるエネルギー消費における「電化」と、再エネ発電などの増加による脱炭素化の見通しについて、詳細な調査・検討結果を紹介する。
電化は、エネルギーを脱炭素化していくための重要なオプションとして、しばしば示されている。とはいえ、発電の大部分は石炭火力発電によって行われており(2018年は38%)、電力から排出されるCO2は現状ではゼロではない。こうした状況の中で、電化はどの程度まで進むのか。また、発電を脱炭素化していくためにはどうすればいいのか。
以下、電化と脱炭素化について、述べていく。
結論から先に言えば、電化はエネルギー効率の改善と脱炭素の両面において有効である。
エネルギー効率(1)について考えると、一般的に熱利用においては、ボイラーなどよりもヒートポンプのような電気設備の方がはるかに優位性がある。
CO2排出原単位(排出係数)(2)についても、発電は大幅に脱炭素化される可能性があるため、温室効果ガス(GHG)排出を削減する重要なオプションである。
一般的に、電気は経済活動や社会の開発を促進し、大気など地域の環境汚染を減らすことに役立つ。そのため電化は、「すべての人に適切な価格で信頼性ある、持続可能な現代のエネルギーへのアクセスを可能とする」点で、SDGsの目標の1つに貢献することができる。
電化のための多様な原動力
エネルギーにおける電気の割合は、燃料転換や自家用発電設備の普及によって、過去数十年にわたって増加している。世界レベルでは2000年から2018年の間に、年率3%の増加となっており、電力需要は総エネルギー需要の約2倍のペースで増加している。世界の最終エネルギー需要に占める電気の割合は、2000年の17%から2018年には約21%と着実に増加している。
しかし、国や地域によって、見られる傾向には違いがある。OECD諸国、特に米国とEUでは、最終エネルギー需要に占める電力の割合は、エネルギー効率の向上と好適な気候条件のために、2000年以降1~2ポイント上昇し、過去5年間は安定したものとなっている。
一方、中国では、電気のシェアが11%から22%以上へと倍増しており、米国やEUを上回っている上、この傾向は強くなっている。これは主に、燃料転換(エネルギーシフト)、建物内の自家用発電設備の開発、第三次産業の拡大、電気自動車の普及率が他国に比べて高いことによるものである。さらには、大気汚染の削減、中国の産業の発展、新しい産業分野での雇用創出を目的とした公共政策と投資による。
(出典:Enerdata「Global and CO2 Energy data」)
気候変動対策の目標達成のため、電化を加速すべき
世界レベルでは、2050年までに電気の需要は80~90%増加する。パリ協定の現在の削減目標(NDC)を達成するEnerBlueシナリオと、気温上昇を2℃未満に抑制するEnerGreenシナリオのいずれもが、こうした結果に達すると予想される。
また、エネルギー効率化に向けた取り組みよって、電気の割合はEnerBlueシナリオでは29%、EnerGreenシナリオでは36%となる。
米国、EU、ブラジルなど一部の国では、電化が大幅に加速する一方で、中国、インド、日本は既存のダイナミックなトレンドに追いつく必要がある。
(出典:Enerdata「Global and CO2 Energy data」)
次のようないくつかの要素において、電力の増加に影響を与える可能性がある。
GHG排出削減目標に対する電化の可能性を最大限に活用するためには、電源構成を脱炭素化することが不可欠だ。2012年以降、電気の脱炭素にはある程度の進捗が見られたが、十分とはいえない。全体的な電源構成においては、化石燃料、特に石炭火力発電が依然として支配的である。
(出典:Enerdata「Global and CO2 Energy data」)
地球全体の気候変動対策の目標を達成するためには、発電の脱炭素化を強力に加速する必要がある。
(出典:Enerdata「Global and CO2 Energy data」)
電源構成を脱炭素化する主なオプションは、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電、原子力発電、化石燃料の切り替え、および二酸化炭素回収貯留(CCS)である。
(出典:Enerdata「Global and CO2 Energy data」)
オリジナル記事について
Enerdata "Electrification and Decarbonisation"(2020/02/20)(pdf)
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