九州電力 次の30年、原発から再エネへ転換できるのか? -シリーズ・脱炭素企業を分析する(24) | EnergyShift

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九州電力 次の30年、原発から再エネへ転換できるのか? -シリーズ・脱炭素企業を分析する(24)

九州電力 次の30年、原発から再エネへ転換できるのか? -シリーズ・脱炭素企業を分析する(24)

「脱炭素企業分析」シリーズ、第24回は九州電力を紹介する。すでに膨大な量の太陽光が供給区域内にあり、その運用は差し迫った課題だが、その上でさらに再エネを増加させていかなければならない。九州地域は風力発電、地熱発電のポテンシャルも高い。株価と今後の成長はどうなるか。

エナシフTV「脱炭素企業分析」シリーズ

下落傾向が続く、九州電力の株価と業績

九州電力の株価は2019年から下落傾向が継続しており、現在の株価は2019年の約3分の2となっている。2019年まで高値を維持できたのは川内原子力発電所再稼働の影響が大きく、再稼働前年には株価が上昇している。

現在の株価下落の原因は販売電力量減少の影響が大きく、2021年3月に一瞬株価が上昇したが、すぐに下落している。九州電力も含む旧一般電気事業者は新電力増加により、売上減少などの影響を受けている。

実際の業績だが、2020年度の売上は2兆1,484億円、経常利益は556億円、とりあえず増収増益となっている。

2021年度予想は売上高が1兆5,100億円、経常利益は700億円(FIT交付金5,000億円の売上計上が制度変更により不要となったため)を見込んでいる。

一方、販売電力量について示したのが、次のグラフである。

九州電力自体の販売電力量は減少しているが、2016年から卸売が増加していることが注目される。地域全体の使用電力量は大きく変化していないが、新電力の参入したことによって、九州電力の電気を新電力が卸供給を通じて販売しているということになる。この他、販売電力量こそ小さいものの、グループ会社で、太陽光パネルの増設なども行っている九電みらいエナジーによる販売電力量が増加していることにも注目したい。電気ではなくソリューションの販売が認知されているということだろう。

九州電力の電源構成と再エネ

九州電力の電源構成は、主力となっているのは、川内1号、2号と玄海3号、4号の4基の原子力だ。これに火力が加わる他、地熱も供給力として活躍している。意外に思うかもしれないが、地熱と水力以外の再エネ発電設備容量は少ない。

しかし、下の図で示すように、九州電力管内には、他の事業者が所有する固定価格買取制度(FIT)の発電所が増加している。とりわけ太陽光発電が爆発的に増加、拡大しており、九州電力が保有する発電設備に対して6割程度の規模となっている。これらが発電した電気をすべて九州電力が買い取り、需要家に供給しているのだが、春や秋は発電量が過剰となり、再エネ発電所に対する出力制御の要請も行っている。

供給区域内における電源比率では、九州電力は他の電力会社に比べて、再エネの設備容量が多く、ある意味ではトップランナーとなっている。こうしたことが、再エネを推進しながらも、再エネによって苦しむ九州電力の現状を表しているといえるだろう。

将来ビジョン、成長は海外事業と新規事業で

九州電力は「2030年ビジョン」を策定しているが、そこでは、経常利益を730億円から1,500億円に倍増させるとしている。そして、利益増加を見込んでいるのは新規事業や海外事業だ。

総販売電力量も2030年には現在よりも300億kWh多い、1,200億kWhを目標としているが、増加分は海外事業だと考えていいだろう。

一方、中期経営計画だが、そこでは「ずっと先まで、明るくしたい」という、実に電力会社らしいスローガンを掲げている。九州電力管内の経済成長があってこそ、自社の利益が増加すると考える九州電力。まずは九州電力管内の経済発展に関する取り組みを着実に行っていき、その上で新規事業と海外事業も行なっていくということになる。

海外事業については、下の図にあるように、すでに全世界で多くの案件に着手しており、これをさらに拡大させていくことになる。

海外事業

一方、国内事業ではさまざまな新規事業への取組みがなされているようだが、その中でも興味深いものを、下の図にあるように、3つ紹介しておく。

1.電力インフラツーリズム

電力インフラツーリズムとは、例えばダム見学などだ。ダムではダムカードを配布しており、コレクターも多い。こうした、ダムをはじめとするインフラ設備見学のツアーが、新規事業となっている。こうしたツアーを通じて、ツアー客と地元との交流が新しいビジネスのきっかけになれば面白いかもしれない。

2.九電ドローンサービス

ドローンについて、送電鉄塔やダムなどのインフラの点検などを目的に、早期から先進的に取り組んでいた九州電力は、九電ドローンサービスという会社を設立している。自社においてダムや送電線点検の際に、人による高所作業の回避ができるだけではなく、農薬散布など、ドローンを活用したサービスを九州全域で提供している。

3.習い事マッチングサービス

地域にいるいろいろな技術や知識を持った人や教えたい人と、いろいろな情報や知識を学びたい人や習いたい人をマッチングさせるプラットフォームによるサービスも手掛けている。人と人とのつながりは地域の活性化にとても重要なことであり、人的ネットワークが広がっていくこともまた九州の活性化につながってくだろう。もともと九州電力は電力のネットワークの会社なので、人のネットワークの構築も事業としてフォーカスできるのではないか、という視点から始まった試みなのかもしれない。

九州電力が目指すカーボンニュートラルは

九州電力では、カーボンニュートラルを達成していくにあたって、2030年までにはCO2排出量を70%削減するとしているが、ここでは再エネと原子力がその柱だ。

しかし、2050年までにはカーボンニュートラルを達成することを目標とした場合はどうか。現在、4基の原子炉が再稼働中の九州電力だが、下の図を見ると、カーボンニュートラルの主役は原子力ではなく、再エネが主役となって推進していくように思える。実際に、既に膨大な数の太陽光発電を運用しており、さらに洋上風力発電や地熱発電を含め、再エネをさらに増加させていくことになってくる。

ロードマップでは、2050年までは原子力による供給は再稼働のみで、新型原子炉を含めた新増設については、あくまで検討することにとどまっている。

再エネの拡大にあたっては、自社による開発も視野に入れている。九州電力は現在自社の再エネ発電所は230万kWだが、2030年にはこれを500万kWにするという。九州地域は元来再エネの資源に非常に恵まれた土地であり、太陽光の開発こそないだろうが、洋上風力も地熱も拡大できるだろう。

もっとも、足元の直近でのCO2排出削減は順調とはいいがたい。原子力発電の定期点検などが重なれば、どうしても火力依存が高まる。特に2021年秋からは、運転期間の延長の認可を得るために、川内1号の点検が長期にわたることが予想される。ただしこれは一時的なことだと考えたい。その後は順次、再エネ拡大と石炭火力の廃止が行われることだろう。

九州電力では、自社のカーボンニュートラルだけではなく、地域全体のカーボンニュートラルについても考えている。下の図は、地域のゼロカーボン社会について描いたものだ。九州地域をどのようにゼロカーボンしていくかと考えた際に、太陽光や風力などの再エネがエネルギーの中心となっている。さらに蓄電池導入や、電気自動車のバスの導入など、再エネで地域を発展、活性化させていくというものになっている。

2050年に向けてどのような手法でカーボンニュートラルを目指すのか

九州電力は、電力需要が伸びないなか、海外事業と新規事業による成長を目指している。現存する原子力は最大限に活用していくが、今後は再エネを主力にすえていくように思われる。

すでに膨大な量の太陽光が供給区域内にあり、その運用は差し迫った課題であるが、その上でさらに再エネを増加させていかなければならないということになる。とはいえ、九州地域は風力発電、地熱発電のポテンシャルも高い。大分県にある日本最大の地熱発電所である八丁原地熱も九州電力の設備だ。

また、バイオマス発電も手掛けている。原子力に関しては40年を過ぎたら運転期間の延長を目指すことになるが、必ずしも延長できるとは限らない。そうなると、2050年には原子力不在ということも十分にありうる。

2030年までの脱炭素や経営の目標に関しては明確に定めているが、その先の2050年に向けてどのような手法でカーボンニュートラルを目指すのか、といった計画は明確ではないようだ。したがって、九州電力における将来に向けた詳細なシナリオ作成は、これからが正念場となってくるだろう。これは九州電力の今後を左右する課題となってくるので、しっかり取り組んで欲しい。

(Text=MASA)

ヘッダー写真:IAEA Imagebank, CC BY-SA 2.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798059020.html

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