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日本企業338社による再エネ転換の実態 経産省アンケート

日本企業338社による再エネ転換の実態 経産省アンケート

2021年08月06日

脱炭素に向けた取り組みが加速するなか、日本企業の8割が再生可能エネルギーへ切り替え中ないし、検討していることが経済産業省の調査で明らかになった。一方、再エネ調達を容易にしようと、企業による再エネ価値の直接購入を目指し、今年11月にも創設する新市場に関しては、「参加したい」と答えた企業は9%にとどまり、不安を残す結果となった。

経産省は、8月5日に開催した電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会(第55回)で再エネ転換に関するアンケート結果を公表した。

調査対象は産業界約2,000社で、回答数は338社、回答企業の購入電力量は1,145億kWhで、2020年度の販売電力量8,215億kWhの約14%にあたる。また回答企業の74%が製造業で、7%は卸売業・小売業だった。

アンケート結果によると、「再エネやCO2フリー電力に切り替えることに関心はあるか」という質問について、「すでにそうした電気を使っている」と答えた企業は25%にのぼり、338社中85社が実際に再エネ転換していることが明らかになった。また「関心あり」と回答した企業は55%となり、全体の8割が再エネに切り替え中ないし、検討していることがわかった。

では、85社は再エネなどに何パーセント切り替えているのだろうか。

全体の使用電力量に占める再エネ比率で最多だったのが、0〜1割で64%だった。また、1〜2割が16%で、再エネに切り替え中だといっても、8割の企業が2割未満にとどまっている。5割以上切り替えたと回答した企業は13%で、再エネ比率はまだまだ低い。

次に再エネに切り替える理由として、最多だったのが「CDPやRE100を自社で自主的に目指しているため」で、36%だった。一方、「サプライチェーンの要請により再エネに切り替えざるをえないため」をあげたのは18%となり、予想よりも高い割合となった。

ただし、希望購入電力に対する質問では、購入するなら「再エネに限る」と答えたのは28%にとどまり、残りの72%が「再エネに限らずCO2フリーの非化石電源であればよい」と回答した。

再エネへの切り替え理由について、CDPやRE100の達成、サプライチェーンからの要請と回答した54%の企業は再エネを念頭に置いているものと考えられる。だが、7割以上が再エネには特に限らないと回答しており、乖離する結果となった。

再エネ転換は従来電気代と同じ価格が最多、新市場は関心薄

次に、再エネに「関心がある」と回答した企業による再エネ電力の購入希望量は約163.3億kWhだった。それなりに大きな電力量だが、2021年度のFITの「再エネ証書」の取引量は約1,000億kWhが想定されているだけに、供給が需要を大きく上回っている。

では、企業はいくらであれば再エネに切り替えるのだろうか?

「既存の契約から再エネメニューに切り替えるとすると、kWhあたりいくらまで(電気料金の上昇を)許容できるか」という質問に対しては、0円(まったく許容できない)が36%、0.1〜0.3円が34%と、全体の70%が電気料金の上昇を受け入れらないとの姿勢を鮮明にした。

ちなみに「1円以上」と答えたのは8%だった。

一方、「すでに再エネなどの電気を使っている」と回答した85社は、それなりコストアップを受け入れているはずだが、「0.1〜0.3円」が27社と最多で、23社は0円、まったく許容できないと回答した。

今年11月に企業が直接、再エネ価値を購入できる市場が創設されるが、どれだけの企業ニーズがあるのだろうか。「市場参入に関心があるか」という質問に対し、「参加したい」が9%、「参加したいがコスト次第」が46%、「あまり参加したいと思わない」が45%という結果となった。

経産省は「コスト次第」の46%も含めると「半数以上が参加を希望している」との見解を示したが、果たしてそうなのか。再エネに切り替え中の85社のうち23社が、電気料金の値上げは許容できないと回答している。価格水準いかんでは、企業参加者は限定的となり、市場が機能しない可能性もある。

8月5日の検討会では、「回答率が低い」「製造業に偏りすぎている」といった意見のほか、価格水準に関して、「アンケート結果から0.3〜0.4円という数字が見えてくる」といった意見が出た。

経産省では今回のアンケート結果なども踏まえ、今後、再エネ価値の価格水準などを決定していく方針だ。

(Text:藤村朋弘)

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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