ENEOSの必死の脱炭素転換 再エネ企業買収は吉と出るのか? | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

ENEOSの必死の脱炭素転換 再エネ企業買収は吉と出るのか?

2021年10月11日

ENEOSがJREを買収する狙いとは

脱炭素の流れは世界的に強まっており、車のセクターも電動車へシフトしていっている。車メーカーはEV競争にひた走り、あのトヨタですら、カーボンニュートラルと言い出した。これは非常に大きな変化であり、潮流なわけだ。

この潮流に飲まれているわけだが、そうなると石油需要は今後縮小する見通しになる。

実際、ENEOSは2020年5月の第二次中期経営計画で次のような発表をしている。


出典:ENEOSホールディングス


出典:ENEOSホールディングス

まず、キャッシュを創出する。そして、そのキャッシュを成長産業への戦略投資に使う。その使い先はというと、再エネ・水素となっているわけだ。

キャッシュの創出には資産売却が入っており、そして、金の注入先には再エネ・水素が入っている。こうして転換を図りたい。

だが、もうすでに世の中は脱炭素が進んでしまっており、出遅れ感が正直ある。

となれば、そう、どこかを買収するしかない。

買収するとしたら、狙い目はなんだろう。水素につながる論点はなんだろう。政府が力をこれから入れるドル箱はどれだろう。そこで気付くわけだ。

「洋上風力じゃないか?」

政府は洋上風力を「再エネの主力電源化の切り札」と位置づけていることは、これまでも解説してきたが、2040年に発電出力を4,500万kWまで増やすという大きな目標を掲げている。

国は促進区域などを設定し、これから公募で事業者を決めていくわけだが、JREは、長崎県や秋田県、北海道などで洋上風力の開発を進めている。

完成後のJREの洋上風力の出力は100万kWを超える計画を立てている。

もちろん、あくまで計画であり、公募であるため全部が全部取れるわけじゃない。ただ、バックにはゴールドマン・サックスがついているので、その資金力を背景に開発に取り組んできた。

そうした中、JREに対しては国内外から買収の打診があり、複数の企業が買収交渉にあたったものの、ゴールドマン・サックスが金額や買収後の相乗効果などをみてENEOSへの売却を決めたもようである、という報道が出ている。

ゴールドマン・サックスとしては、うまく捌いたわけだ。エネルギー転換を狙っている、ENEOSのような弱みを持つところに、高値で売りたかったはずだからだ。結果として、ゴールドマン・サックスはぼろ儲けをした格好であり、そこだけ切り取ると、ENEOSは足元を見られた商売に屈したと評価もされるだろう。

ENEOSの狙い・・・次ページへ

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

エネルギーの最新記事