エネルギーから見る フランクフルトモーターショー2019概観 | EnergyShift

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エネルギーから見る フランクフルトモーターショー2019概観

エネルギーから見る フランクフルトモーターショー2019概観

2019/10/02

2019年9月12日から23日まで行われたドイツ・フランクフルトモーターショー。世界最大のモーターショーのひとつで、2年に一度開催される。まさに世界の自動車産業の今を映し出す一大イベントだ。ジャーナリストの佐藤耕一氏が、特にエネルギー視点でモビリティの今をどのように感じたのかをレポート。今年の傾向はまさにEV/PHEVシフトだった。

EVとPHEVに注目

2年に1度開催される自動車ショー「フランクフルトモーターショー」。世界で最も重要な自動車ショーのひとつであり、地元ドイツの自動車メーカーが威信をかけてゴージャスなプレゼンテーションを繰り広げることでも知られている。

フランクフルトモーターショー会場風景

そんな華やかなショーではあるが、今回のフランクフルトは、出展するメーカーがかなり減ってしまったことで話題になった。実際のところ、ドイツ以外の自動車メーカーで出展していたのは、ホンダ、ジャガーランドローバー、そして欧州進出を狙う中国の三つのメーカー(BYTON・長城汽車WEY・第一汽車紅旗)のみであり、フランスやイタリアの自動車メーカーも出展回避という寂しい現状であった。

こうした状況でひときわ目立ったのが、各社から発表されたEVだ。

特に地元ドイツのフォルクスワーゲン「ID.3」と、メルセデスベンツ「EQS」は、世界中から注目を集めた今回のショーの主役である。

それからもうひとつ。PHEVモデルの急増も見逃してはならない大きな潮流だ。EVとともに、電動化に向けて重要な役割を担うことになる。

このように、今回のショーで顕在化したトレンドを端的に言い表すなら、EVとPHEV(プラグインハイブリッドEV)の本格普及の号砲が鳴った、ということであろう。

フォルクスワーゲンの本命EVが登場

最初に取り上げるべきは、今回のショーの意義を象徴する存在であるフォルクスワーゲンの本気のEV「ID.3」である。

フォルクスワーゲン ID.3

ディーゼルゲート*においては主犯格とも言えるフォルクスワーゲンは、その大きく傷ついたブランドイメージを是が非でも取り戻す必要があり、本気で EV の開発に取り組んできたその成果としての「ID.3」という意味合いもある。プレゼンテーションでもそのような意図が強調されていた。

クルマとしても説得力のある仕上がりとなっている。最近のフォルクスワーゲンのデザイン言語をトレースしながらも、チャーミングで活力があるデザインは、ミレニアル世代にもアピールする新たなクルマの魅力が与えられている。

ハードウェアもぬかりない。EVに最適化されたRR(リアモーター・リア駆動)レイアウトを採用し、高い衝突安全性能やスペース効率を実現した。ベースグレードで45kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は WLTPモード(燃費測定方法)で330キロ、価格は3万ユーロ以下となり、ライバルに差をつけた。

メルセデスベンツとBMWも新機軸のEVを打ち出す

そしてもう一台の主役は、メルセデスベンツ「EQS」。メルセデスベンツはこれまでSUVの「EQC」、ミニバンの「EQV」を発表してきたが、今回はセダンの「EQS」がワールドプレミアされた。

メルセデスベンツ EQV

EQSは将来の電動大型サルーンコンセプトとされる。ご存知の通り大型高級サルーンはメルセデスベンツの保守本流であり、ブランドの将来をうらなう重要なモデルだ。

BMWグループからはMINI「Cooper SE」が登場した。内外装デザインはエンジン車「Cooper S」とほぼ同じなので、MINIファンに向けて、EVかエンジンか、というシンプルな選択肢を提示したことになる。

日本勢として存在感をアピールした、ホンダ「e」の生産モデルも現地のジャーナリストの人気を集めていた。RRのEV向け新型プラットフォームと、組み合わされた内外装のデザインがとてもチャーミングで、デジタルガジェットのような魅力にあふれた一台だ。

ホンダ「e」内装

CO2削減へのアプローチ

このようにショーの主役となったEVだが、かといっていきなりEVがバカ売れするということではない。

参考事例として、強力なEV販売推進政策が実施されている中国の自動車販売台数を見てみると、EVは2018年の実績で約100万台。これだけをみると大きな数字だが、中国全体の自動車販売台数約2,800万台からみると、EVは全体の3%ほどの水準だ。これでは目に見えるCO2削減効果は現れない。

では、中国を含む世界の自動車メーカーは世界一厳しい欧州のCO2排出量の総量規制に向けてどうアプローチするのか。

ひとつの回答がPHEVだ。市街地近郊の短距離走行をEVモードでこなしつつ、いざという時はガソリン車として遠出もできるPHEVは、消費者にとってもハードルが低い。メーカーとしても、既存のエンジンカーのノウハウを活かしつつ、電動機能をアドオンしやすい。

日本ではあまり存在感のないPHEVだが、フランクフルトショーにおいては大量のPHEVが展示されていた。

例えばメルセデスベンツは「EQ POWER」というブランドでPHEVを展開しており、下からAクラス・Bクラス・Cクラス・Eクラス・Sクラスと、ほぼフルラインナップでPHEVモデルを取り揃えた。

メルセデスベンツ EQ POWER Sクラス

同様に、BMWとフォルクスワーゲンも、PHEVのラインナップ強化を表明している。

ディーゼルゲートから4年、お膝元のドイツでは、その反動のせいか、日本以上に電動化に強く進もうとする自動車メーカーの意思が現れた今回のショーであった。

*ディーゼルゲート:フォルクスワーゲン社のディーゼルエンジン制御に関する一連の違法行為。2015年に発覚した

プロフィール

佐藤耕一(さとうこういち)

自動車ニュース媒体で取材・編集業務に従事したあと、IT企業に転職し、自動車メーカー・部品メーカーに対するビジネス開発を担当。その後独立し、自動車とITをつなぐ領域を取材・レポートする活動に従事する。

佐藤耕一
佐藤耕一

自動車ニュース媒体で取材・編集業務に従事したあと、IT企業に転職し、自動車メーカー・部品メーカーに対するビジネス開発を担当。その後独立し、自動車とITをつなぐ領域を取材・レポートする活動に従事する。

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