脱炭素を適切なスケールとスピードで推進する Envision Digital Japan 栗原聖之代表取締役社長 | EnergyShift

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脱炭素を適切なスケールとスピードで推進する Envision Digital Japan 栗原聖之代表取締役社長

脱炭素を適切なスケールとスピードで推進する Envision Digital Japan 栗原聖之代表取締役社長

2021年04月27日

前編では、Envision Digitalがどのような企業なのか、そのミッションや技術を中心に語っていただいた。後編では、日本において、どのような貢献をしていくのか、こうした点についてフォーカスする。前編に引き続き、代表取締役社長の栗原聖之氏に、日本市場への想いを語っていただいた。

前編はこちら

AI+IoTによるハイレベルなVPPソリューション

-どのような場面で利用されているのでしょうか。具体的なケースを教えてください。

栗原聖之氏:例えば、EV(電気自動車)が少しずつ普及していますが、その利用法としてV2G(EVから送電網への放電)が注目されています。EVのデータを分析し、充放電のやり方を変えることで、EVが搭載している蓄電池の寿命を伸ばすことができます。

実際に、日産リーフをはじめとするEV50万台、8,400万のセルに関するデータを10年間にわたって取得し、充放電と寿命に関する知見を蓄積しており、これを適用することができます。

もちろん、定置用の蓄電池にもこうした技術が応用されています。

また、限られた電力網の容量を有効に活用し、EVへの効率的な充電を行うこともできます。

実際に、中国の上海にあるMicrosoft ZizhuというR&D施設と共同で、EVの充電器を7台から27台に増設するにあたって、電力網の容量という課題を解決してきました。そこでは、EVの日々の走行距離を計算し、通勤に必要なだけ充電するようにAIoTが管理する充電器を導入しました。これらの充電器は夜間に稼働し、施設のエネルギー需要の削減に役立っています。

また、太陽光発電の発電量予測のための気象予測のAIoTのソフトウェアを活用し、蓄電のタイミングを最適にするシステムを実現しました。こうした取り組みにより、施設の持つ電力網の容量を実質的に10倍に拡大させています。また、年間で9万6,000ドルのコスト削減や5%のエネルギー効率向上なども実現しています。


Envision Digital Japan 栗原聖之代表取締役社長

― デジタル化という点では、VPPソリューションが注目されています。

栗原氏:当社の代表的なソリューションが、「Connected Energy  Management Suite(CEMS)」です。さまざまな事業所において、導入されている発電設備や再エネ、蓄電池、EVなどをとりまとめ、AIで最適な運用をするだけではなく、市場参加もAIが行うというものです。

また、先程EVについてお話ししましたが、スマートEV充電は「EnCHARGE」というサービス名で提供しています。V2Xを通じてEVを電源に変えることができますし、施設内の太陽光発電や建物のエネルギー需要管理を組み合わせて、需要抑制することができます。AIによって、需要と供給をマッチングさせていくことがポイントです。

AIがEVの運用と天候を分析し、アルゴリズム化することで、再エネの動きがわかります。

また、AIとIoTのOSとして、EnOSを提供しており、これによってさまざまなソリューションが動きます。

日本は脱炭素化をもっと迅速に

― 日本法人を設立し、本格的に日本市場に参入されるわけですが、どのようなアプローチを考えているのでしょうか。

栗原氏:日本は2030年代半ばにガソリン車を廃止する計画です。2030年までにエコカーの普及率を50%から70%に引き上げることが目標で、ハイブリッド車(HV)以外にEVの普及にも積極的に取り組むということです。しかしこの目標は、海外と比べると意欲的とはいえないのではないでしょうか。

世界を見渡すと、エネルギーはすでに、1MWhあたり5ドル以下と、かつてないほど安価になりつつありますし、持続可能性を追求する技術の可能性も広がっています。

エネルギーの円滑な移行を行っていくためには、国と民間で連携しなければいけない4つの主要分野があります。

1つは、地政学に関するもので、エネルギーの独立性です。政府は必要なエネルギーを安定供給していくために、再生可能エネルギーという天然資源と、それを活用していくための技術としての知的財産に基づいて、エネルギー戦略を策定する必要があります。

2つ目として、金融があります。日本経済は2020年におよそ4.8%縮小しました。しかし、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、パリ協定を達成するためには、世界全体で、年間7,000億ドルの投資が必要であり、これは現在の投資を倍増させることになります。投資を促進させるためには、公的な補助金が必要ですし、持続可能性を追求するためには、長期的視点に立ったビジネスモデルを確立することが必要です。日本政府もまたこうした支援を行っていくことが、投資家や企業に対して必要となっています。

3つ目は社会のあり方です。従来のガソリン車よりもEV、化石燃料よりも再エネや蓄電池に対応した人材の育成が重要です。

4つ目が技術です。再エネの割合が30%を超え、消費者や企業の分散化が進み、EVが当たり前になってくると、送配電網が弱点になってきます。再エネのインテリジェントな発電、消費効率、そしてAIoTによって供給が制御されるスマートで柔軟な蓄電システムがなければ、送配電網がボトルネックとなり、再エネの開発の遅延やコストの増加、そして持続不可能な送電線の利用へとつながっていきます

我々は、資金調達やソリューションを提供していくためには、大きな推進力が必要だと考えています。エネルギー、都市開発、輸送などの重要なセクターにおいて、炭素回収技術や低炭素代替エネルギーの商業化を加速させ、さらに脱炭素化への道筋にそって進めていくことが、我々にとっての「推進力」となります。

日本においても、官民一致でこうしたことに取り組んでいくことができれば、脱炭素を適切なスケールとスピードで実現することができると考えています。

こうした形で、日本のインフラをサポートしていきたいと考えています。

(Interview&Text:本橋恵一、Photo:山田亜紀子)

栗原聖之
栗原聖之

Envision Digital Japan株式会社 代表取締役社長 丸紅株式会社にて、主に海外の電力・水・交通インフラ案件の開発・履行及び、営業企画業務に30年超従事。東南アジア、中東アフリカに約12年間の駐在。 電力本部業務室長、IoT・新エネルギーソリューション事業推進部長、電力IoTソリューション事業部長、米Renewable Energy Test Center取締役他を歴任。洋上風力事業分では、英Gunfleet Sand案件参画を実現。デジタル分野にて米GE・仏Engje等の提携を推進。(日系企業初) 株式会社afterFITにて、シニア・エグゼクティブ・ヴァイスプレジデント(SEVP)として、太陽光発電事業の経営補佐全般に従事。 Envision Digital日本法人立ち上げに伴い、2020年11月に参画。2021年4月より現職。

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