新型コロナ後の地域を想像してみた(前編) | EnergyShift編集部

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新型コロナ後の地域を想像してみた(前編)

新型コロナ後の地域を想像してみた(前編)

EnergyShift編集部
2020/04/15
ブックマーク
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2020/04/15
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新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、4月8日には日本政府は「緊急事態宣言」を出した。ウイルスによる社会、経済への影響は計り知れない。同時に日本が抱えていた潜在的な課題が顕在化されたのではないだろうか。では、感染拡大が終息した先に、課題に対してあらためてどのような対応が求められるのか。日本再生可能エネルギー総合研究所の北村和也氏があらためて提言する。

感染拡大終息後に考えるべき2つのキーワード

新型コロナウイルスの影響は留まるところを知らない。
これを書いているのは4月7日で、まさに東京などの首都圏と関西、福岡で「緊急事態宣言」が出される日である。

かくいう筆者も、3月以降予定されていたセミナーや勉強会がすべてキャンセルになったり、自ら延期したりした。4月の地方への出張も同様に取りやめて、完全にテレワーク形式にシフトを終えている。
前日(4月6日)の午前中には、地域新電力のコロナ対応に関する原稿を別のWEBにもアップしたばかりである。電気料金の猶予などを含む生活困窮者へのサポートと時間の余裕ができれば再生エネの利活用ビジネスに関する検討などに使うよう呼び掛けている。

地域のエネルギー会社にとって、何ができるか、何をすべきかについては、前回書いたので繰り返すつもりはない。今回のコラムでは、もう少し長いタームでのコロナ後の世界を含めて考えてみたい。 どういうことを示したいかというと、大きく分けて二つある。

ひとつは、『変化』である。

新型コロナウイルスが、全世界という広範囲でここ何十年と区切っても圧倒的に大きな影響を与えている。これは、世界の人々の価値観や人生観までも全く違うものにしてしまうであろう。つまり、コロナ前とコロナ後では、生活すべてがゼロからリセットされるような『変化』が起きる可能性があるということである。

私たちは、9年前に東日本大震災を受け、未曽有の原発事故も経験している。しかし、正直言って西日本ではそのインパクトはやや弱かったと言わざるを得ない。また、日本以外の世界は、当時、日本に同情を送る側であり、ある意味で余裕があった。しかし、今回はほぼすべての国が被災側なので、言葉を選ばずに言えば、すべからく平等に影響を受けているのである。

このコラムはエネルギー、およびそれを巡るビジネスに関するものなので、その観点から話をする。強調したいのは、エネルギーに対する考え方やビジネス自体の在り方が違うものになる可能性が高いということである。ここを抜きにして、コロナ後までいったん休憩で、終息すれば前にやっていたことを再び粛々とただ続ければいいとはとても思えない。
特に、感染症は根絶できないものである。いったん収まってもひょっとすると毎年繰り返す可能性も十分ある。もう、コロナ前には戻れないのかもしれない。

もうひとつ示したいのは、簡単に言うと『理想の地域』である。

最近私がセミナーでよく話すのは、「SDGsの17のゴールすべてが実現した場所」とは、「みんなが住みたくなる理想の地域」であるということである。このコラムでは、エネルギーをキーワードにして、コロナ後の地域を、少し先の近未来の設定で、できれば理想の姿として描いてみたい。

理由は、一番目に示したいことと連動する。世界の考え方が大きく変わるときにこそ、私たちは私たちの求める姿を設定するべきだと思うからである。現状のあれもダメ、これもダメは仕方がないであろう。しかし、未来は厳しいという後ろ向きではなく、こんな将来を作り出すとの提案を示すことが必要だと考えるからである。

エネルギー需給への影響と再エネのゆくえ

ひとつ目の、『変化』から入ろう。

コロナのエネルギーに関する影響は、すでにいくつも現れている。企業活動が大きく停滞していることから、石油の需要が大きく減って価格が暴落している。関連して、アメリカのシェールオイルの生産コストが合わなくなって、つい先日主要なシェール生産企業が破綻した。

電気のことを考えると、同様に企業活動の停滞や学校の一斉休校などで、会社や学校などの電力需要が減少し、一方で家庭内の使用量が増えることになるであろう。

これまでの需要の中で設定していた料金体系が、一時的にせよ適合しなくなることも起こり得る。もちろん、料金の支払い猶予が増えてくれば、新電力の収入の予定が変わってくる。支払いできない需要家が出ることもこれからはリスクとなる。現状でもJEPXに対する支払い猶予を求める声が出始めていると聞く。

ビジネスである限り、リスクを無視することはできない。短期的な変化は、地域へのサポートとバランスを見ながら対応していくしかないであろう。

長期的な変化は、正直言って予測がつかないことが多い。
しかし、必ず変化は起きると言い切れる。

自粛が長引いた後、一時的には緊張から解放されて街に人が戻ることはあるであろう。しかし、生活スタイルは戻り切らないに違いない。それは良い悪いの評価ではない。家の中で暮らすことが基本になること、仕事ではテレワークの通常化、レジャーでは海外への旅行が減ることなどは、誰が見ても明らかである。例えば、オフィスなどでは「なんだ、無理に一ヶ所に集合しなくても意見交換や決定ができるんだ」と、この間の経験から不要な長い会議も減るであろう。

経済的に困窮している人が少なくないのでそこは別であるが、今、多くの人の頭にあるのは、健康と不安から切り離された落ち着いた生活であろう。

緊急事態宣言が出た7つの都府県は、これまではある意味、あこがれの都会だったかもしれない。今は、そこから逃げ出している人たちがたくさんいる。「都会脱出」である。
現状の安全な地域は、これまでは見捨てられがちで、経済の落ち込みの心配の対象となる場所であった。これからは、暮らしやすさ、便利さ、住みやすさの価値観の基準は、これまでとは別のものになるのではないだろうか。

地方と都会に対する価値のバランスは、微妙に変化していくであろう。実は、地方はすでに、緑を中心とした環境、食べ物、そして、分散型エネルギーの宝庫として多くの利点を保有している。地方の価値はさらに上昇していくのは間違いない。

価格よりも安心、分散型再エネへのシフトが加速

そこで、最後に再生エネの価値に絞って話しておきたい。

繰り返すが、再生エネは集中型とは対極にある分散型のエネルギーである。その資源は地方に集中している。人口の多い都会の再生エネ資源は人口比で圧倒的に不足している。よって、例えば横浜市は、東北のような再生エネ資源の豊富な地域と連携を図って再生エネの融通を目指している。

もちろん、再生エネの持つ利便性は、CO2削減効果という地球規模の課題解決にも大きく貢献するものである。これまでよく言われてきたデメリット、価格の高さは欧米では解決の方向に進み、すでに陸上風力や太陽光発電などで化石燃料を下回るまでになっている。

私は、再生エネへのシフトは、コロナ後にさらに加速すると考える。

先日、石油価格の下落が続いていることから、価格で対抗しにくい再生エネ電力普及への影響について聞かれた。確かに石油価格の下落は、連動する天然ガスのコスト安につながり、ガス発電による電力価格に影響を及ぼすであろう。
しかし、人々の関心は、すでに価格から安全へと移りつつあり、その基本的な安心を生み出すものに価値を置くように変わっていく、そんな『変化』を起こしていくと考える。

再構築される都市と地方の関係

地域を守る。

私は、都会を捨てて、地方だけ生き残ればいいと言っているのではない。都会も含めたそれぞれの地域をそれぞれのやり方で守ることが求められるようになると結論付けたい。
コロナ後にやってくる価値観の変化は、エネルギー、およびそのビジネスにも大きな影響を与えることをお話したつもりである。

後半となる次月のコラムでは、エネルギーの観点から見る『理想の地域』の姿を筆者なりに示してみたいと考える。

プロフィール

北村和也(きたむらかずや)

日本再生可能エネルギー総合研究所 代表、株式会社日本再生エネリンク 代表取締役。 1979年、民間放送テレビキー局勤務。ニュース、報道でエネルギー、環境関連番組など多数制作。番組「環境パノラマ図鑑」で科学技術映像祭科学技術長官賞など受賞。1999年にドイツへ留学。環境工学を学ぶ。2001年建設会社入社。環境・再生可能エネルギー事業、海外事業、PFI事業などを行う。2009年、 再生エネ技術保有ベンチャー会社にて木質バイオマスエネルギー事業に携わる。 2011年より日本再生可能エネルギー総合研究所代表。2013年より株式会社日本再生エネリンク代表取締役。2019年4月より地域活性エネルギーリンク協議会、代表理事。 現在の主な活動は、再生エネの普及のための情報の収集と発信(特にドイツを中心とした欧州情報)。再生エネ、地域の活性化の講演、執筆、エネルギー関係のテレビ番組の構成、制作。再生エネ関係の民間企業へのコンサルティング、自治体のアドバイザー。地域エネルギー会社(地域新電力、自治体新電力含む)の立ち上げ、事業支援。


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