2021年3月、電力広域的運営推進機関は「2021年度年次報告書 供給計画のとりまとめ」を公表した。この中で、2021年度から2030年度の需給バランスなどについての分析が示されているが、今冬の電力価格高騰が来冬にも再び起こりかねないような見通しとなっている他、2030年までの電源については、脱炭素が進まないような分析となっている。早急な電源の計画見直しなどが必要な内容だ。
今回公表された「供給計画とりまとめ」は、電気事業者が電力広域的運営推進機関(OCCTO)に提出した各社の供給計画をとりまとめたものとなる。
内容は、「電力需要想定」「需給バランス」「電源構成の変化に関する分析」などの項目で構成されている。
まず、2021年度および2022年度の「最大3日平均電力」はどのような見通しとなっているか。
8月については、2021年度は1億5,903万kW、2022年度は1億5,953万kWになるとしている。
一方1月については、2021年度は1億4,085万kW、2022年度は1億4,883万kWだ。
問題は、この電力需要に対して、十分な電力供給力があるのかどうか、ということだ。
一般的に、最大電力に対して8%の予備力があれば安定供給できるとされている。しかし、2021年度、2022年度ともに、多くの電力会社が8%以下の予備率となる月が生じている。
最も問題なのは、2022年2月で、このときは北海道電力、東北電力、沖縄電力を除く7社が、予備率5.8%となっている。
これについて、報告書では「このまま対策せずに冬季の高需要期を迎えると、大規模な電源トラブルの発生等によって、需給ひっ迫となる可能性も否定できないと考える」と指摘されている。しかしOCCTOとしては発電事業者に対し、発電所の補修停止時期や長期計画停止時期についての計画を確認し、調整を行うとしており、直ちに電源入札等は実施しない考えだ。
2022年1月および2月は、需給ひっ迫の可能性が高いが、これはそのまま日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格が高騰する可能性が高いということでもある。
図1は、小売電気事業者の供給力の未確保分と発電余力の関係を示したグラフだが、1月と2月には発電余力よりも未確保分の方が大きくなっている。こうした需給に問題が生じた理由の1つは、2021年度に495万kW分の火力発電所が休廃止されるからだ。
図1 小売事業者の未確保分と発電事業者の発電余力
電力広域的運営推進機関 2021年度年次報告書 供給計画の取りまとめ
2023年度以降になると、新たな火力発電所が運開し、供給力には余力が生じてくる。
しかし今度は、脱炭素が進まないという問題が生じてくる。
2020年度から2030年度の間に、石炭火力発電所は4,593万kWから5,281万kWに増加する。一方、LNG火力発電所は8,430万kWから8,364万kWへと微減だ。
新エネルギー(再生可能エネルギー)については、風力発電が444万kWから1,505万kW、太陽光発電が6,123万kWから8,051万kWへと増加することになっている。太陽光発電については、過去10年間の増加に比べると大幅にトーンダウンした感じだが、火力発電所よりもリードタイムが短く、政策によって上振れさせることは可能だろう。
問題は石炭火力発電所だ。増えるだけではなく、設備利用率が高い。図2は、それぞれの発電種別の設備利用率を示したものだが、石炭火力は安定して運転しており、LNG火力が30%台まで下がってしまうことと対照的だ。
図2 設備利用率の推移(全国合計)
電力広域的運営推進機関 2021年度年次報告書 供給計画の取りまとめ
確かに石炭火力の方が調整しにくく、日本では価格原単位が低いために、このような運用となりがちだ。しかし、石炭火力をある程度調整しなければ、再エネの出力抑制は減らないし、結果として脱炭素が進まないことになる。
こうした点についても、改善が必要だろう。
供給計画では、この他にも電源開発計画や送電線の増強計画、電気事業者の特性分析などが示されている。小売電気事業者は660社、発電事業者は935社が、今回の供給計画取りまとめの対象となっている。
このうち小売電気事業者の多くは、次の冬の需給ひっ迫の可能性が示されたことで、頭をかかえているのではないだろうか。
(Text:本橋恵一)
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