2020年、ソニーがEV(電気自動車)の開発に取り組んでいるというニュースに、多くの人が驚いた。ソニーがなぜEVなのか。そこには、ソニーだからこそ提供できる、モビリティの新たな価値がある。開発担当の川西泉執行役員に、開発の背景や今後の展開について、お話しをおうかがいした。
― センシング技術や自動運転技術の役割も非常に大きなものとなってくるということでしょうか。
川西氏:究極を言えば、自分で運転しなくても、自動運転で目的地に到着するような時代がくるでしょう。眠っていても目的地に着くような自動車であれば、むしろ乗っている間の時間の過ごし方を考えていく、そういったニーズが出てくるでしょう。
かつてソニーはリビングにテレビを置き、あるいはウォークマンによってオーディオを屋外に持ち出すなど、身近な商品で世の中を変えてきました。自動車についても、移動する機能にはとどまらない、新しい価値を提供していくことになります。
ソニーのVISION-S
― ところで、センサー類ですが、どのようなものが取り付けられているのでしょうか。
川西氏:イメージセンサー(カメラ)だけでも18個ついています。また、LiDAR(距離を測定するセンサー)や、その他レーダー、超音波センサー、ToFセンサー(ToF方式3次元画像センサー)など計40個のセンサーが取り付けてあります。試作車のため検証目的で多くを取り付けています。車内のモニタリングのためのカメラも搭載しています。
Vision-S 内装 出典:Sony
― 通信規格としては、5Gを採用しているのでしょうか。
川西氏:自動車向けの5Gの環境は、まだインフラ整備に時間がかかるかもしれませんが、機能的には5Gと4Gの両方に対応しています。
― ソニーはこれまで、気候変動対策に積極的に取り組んできた企業の1つです。ソニーが目指す環境計画「Road To Zero」において、EVはどのように位置づけられるのでしょうか。
川西氏:EVで走ることそのものはもちろん、CO2排出削減となりますが、それだけではありません。例えば、インテリアの素材についても、環境にやさしいものを使っていきます。
これまで、ソニーの製品では、梱包材などでも環境負荷を低減してきました。このように、EVについても、CO2排出削減にとどまらない、環境全体について考えていきます。
ソニー 環境計画「Road to Zero」
― ところで、実際に乗ってみて、試作車の乗り心地などはいかがでしょう。
川西氏:やはり、乗心地やドライブフィーリング、運転そのものの楽しさといった点については、まだ調整に時間が必要と感じています。
― では、最後の質問になります。今後、ソニーとしてEVを発売する予定なのでしょうか。それとも、自動車メーカーと提携して、EVにセンサーやアプリケーションなどを提供していく方向なのでしょうか。
川西氏:それらの点は、まだ公表できるものはありません。ただ、確実に言えることは、自動車業界は変革期にあり、今後ソニーとしてモビリティの進化に貢献できればと考えています。
(Interview & Text:本橋恵一、Photo:関野竜吉)
エナシフTVではこのEVに実際に試乗した模様を紹介しています。
エネルギーの最新記事