2030年までは太陽光発電が大幅に増えるということは、すなわち
①昼間の再エネ発電量が激増(夕方の再エネ発電量の減少幅が激しくなる)
②天候により発電量が激変(曇、雨だと発電量が減少)
の2点を強く意識したビジネスが必要になる。
①で言えば、昼間の再エネ発電量が余剰になる確率が高く、調達価格も低下する可能性が高い。となると、「昼間に需要をシフト」できれば、小売電気事業者の調達コストが落とせる。しかも再エネを調達することになるため脱炭素にも寄与することになる。
実は、昼間の太陽光発電が激増することは、裏では「夕方の発電量が急減」することも意味する。既にJEPX(日本卸電力取引所)などの価格にも現れており(高騰の要因は他にもあるが)、夕方の電力のひっ迫・価格高騰はより激しくなることが想定される。つまり、「夕方の需要を他の時間帯にシフト」できれば、調達価格の高騰を回避するとともに、安定供給に寄与することにもなる。
②でいえば、2021年に需給調整市場が開設されたことからも、電力供給の柔軟性の役割がより重要になる。柔軟性をもったリソースをもつことが小売電気事業者にとっては、インバランス低減につながるだけでなく、「新たな収入源」になる可能性も秘めている。
これまで書いてきたことを考慮すると、地域脱炭素時代は、小売電気事業者は「電力小売だけ」では変化についていけないのが想像できると思う。
個人的には、「昼間に需要をシフト」「夕方の需要を他の時間帯にシフト」「柔軟性の確保」のようなキーワードを考えると、電力サービスに加え、①ヒートポンプ(エコキュートなど)、②蓄電池、③EV(電気自動車)を制御することが、大きな差別化につながる時代になると考えている。例えば、これまで夜間に稼働させていたエコキュートを、太陽光発電の電気が余る昼間に安く沸きあげたり、夕方の逼迫時間に蓄電池やEVの充電を回避(あるいは放電して需要を減らす)したりと、「需要をコントロールするものが小売ビジネスを制する」とも言える時代が来るのではないだろうか。
是非、読者のみなさんも「地域脱炭素の電力ビジネス」について妄想してみてはいかがでしょうか。
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