中国で未知のエネルギーに出会う! | EnergyShift

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中国で未知のエネルギーに出会う!

中国で未知のエネルギーに出会う!

2021/09/15

再生可能エネルギーの先進国といえば、欧米というイメージかもしれないが、近年は中国がもっとも伸びている。その中国の再エネ、20年近く前は、今とは別の形での再エネ利用が行われていた。あらためてその再エネ利用を振り返ると、そこには、脱炭素や持続可能であるということがどういうことなのか、そうした問題提起もあるようだ。足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ(足温ネット)事務局長の山﨑求博氏が、2003年の中国再エネ事情を通じて、現代に問いかける。

レジェンド?はたまた惰性?~足温ネット20年の軌跡 9

沼気=バイオガスとの出会い

私は足温ネットでの活動のかたわら、「自然エネルギー推進市民フォーラム」というNGOでも活動しており(第5回参照)、2003年に中国の再生可能エネルギー事情を調べることになりました。ドイツばかりでなく、日本の隣国アジアの状況も知ろうとの理由からです(*)。

当時、NGOには早稲田大学留学中の中国農業部官僚が参加しており、彼のアレンジで北京を中心に様々な団体をめぐりました。

2003年3月、最初に訪れたのが、北京市内から南へ車で1時間ほどの「留民営」という農村でした。人口860人の小さな村ですが、鶏12万羽と5,000頭の豚を飼育し、有機無農薬栽培の野菜は日本にも輸出されています。

そして、農村には不釣り合いな大きなタンクを見せられました。何が入っているか聞くと「沼気」との答え。有機物がメタン発酵して生まれるバイオガス(メタンガス)を中国語では沼気というのです。


バイオガスタンク

このタンクは1992年に国連開発計画UNDPの支援で整備され、畜舎や家庭のトイレから集めた糞尿を嫌気性菌による発酵を経て生まれたバイオガスを貯蔵しています。ガスは各家庭に送って燃料として利用し、残った液体やカスを有機肥料として畑にまき、有機無農薬栽培のブランド野菜として出荷することで高い農業収入を上げています。

このバイオガス利用について、中国が利用の先進国であると聞かされたのが「中国資源総合利用協会」です。農家での利用は全国700万戸におよび、経済発展が遅れている南部で盛んです。1980年代初め農村のエネルギー不足は深刻で、「鍋の下の悩み」を抱えていました。お米があっても炊くための燃料が無いという訳です。

そこで、農家の庭先に8m2のタンクを埋設し、豚などの家畜を数頭飼育させ、人間と家畜の排泄物をタンクに流し込み、嫌気性菌によるメタン発酵でバイオガスを取り出し燃料として活用し、残りを肥料とするしくみが作られました。私は、畜産と農業を組み合わせ、ゴミとなる糞尿からエネルギーを取り出し、残りを有機肥料として活用するしくみに驚かされます。


バイオガスコンロ

農村エネルギー開発に熱心な中国

中国では、開発が進んでいない農村地帯のエネルギーをまかなうためバイオガスや太陽熱といった再生可能エネルギーを活用しています。訪問した「中国農村エネルギー協会」では、そうした再生可能エネルギーをひっくるめて「農村エネルギー」と呼び、そのための技術開発や研究を行っていました。

バイオガスに限らず、太陽熱だけで暖房をまかなう温室や微発電(小水力・小型風力)、燃焼時の熱効率を高めたかまどやストーブ、茎や枝などの農業廃棄物を使ったガス発電など様々です。協会の担当者は次のような話してくれました。

「これらの技術はエネルギーのためではなく農民が満足に生活できるためにあり、欧米のようなエネルギー多消費を目指しているのではありません」

なるほどと思いました。エネルギーは手段であって目的ではないという訳です。


壁が蓄熱体になる日光温室

「いやー、農村エネルギー恐るべし」、などと感じ入っていたら、「環境与発展研究所」では別の話を伺いました。

広西壮族自治区で、1990年代にバイオガスを導入し、それまでのトウモロコシ栽培から果樹の有機栽培に切り替え農業収入が8倍となり、成功事例として称えられた地域が、2001年にはバイオガス利用をやめてしまったというのです。

バイオガスの発生源は家畜の糞尿ですが、家畜を買うためには飼料となる作物も作らねばなりません。果樹栽培が収入アップにつながることを知った農民たちは、果樹畑を増やすために飼料作物の畑までも果樹畑にしてしまい、家畜が飼えなくなったので、有機肥料から化学肥料に切り替え、エネルギーもバイオガスからLPガスに切り替えてしまったのです。この事例について、研究所の方はこう話をしてくれました。

「有機栽培にしたから値段が高く売れる訳ではありません。市場に出すとなると消費者が好む色や大きさにすることが求められ、化学肥料であっても高く売れたら良いと考えてしまいます。循環型農業に転換するプランニングとブランド化が必要と提言しています」

これまた、その通りだと思いました。

すっかりバイオガスに魅せられた私は、ぜひ現場を見たいと思い、今回の調査をアレンジしてくれた彼にお願いしました。そして、そのことが意外な方向に展開していくのですが、それはまた次回で。

*:実のところ、私は中国と縁がありました。元々歴史や地理に興味があった私は、NHKの人形劇三国志に魅せられ、大学では東洋史を専攻、中国への短期留学を志した年に天安門事件が発生し、人民解放軍が民衆に銃口を向けた事にショックを受け留学はあきらめたものの、卒業旅行で1ヶ月ほど中国をぶらぶらしました。以来、毎年のように中国旅行に出かけていました。ちなみに、大学の卒業論文は古代中国の農業水利史で、私はこれをきっかけに農業に興味を持ち、有機農業との出会いから環境問題と向き合うことになります。

山﨑求博
山﨑求博

1969年東京江東区生まれ。東海大学文学部史学科卒。現在、NPO法人足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ事務局長。自分をイルカの生まれ変わりと信じて疑わないパートナーとマンション暮らし。お酒と旅が大好物で、地方公務員と環境NPO事務局長、二足の草鞋を突っかけながら、あちこちに出かける。現在、気候ネットワーク理事、市民電力連絡会理事なども務める。